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将門編・4

「ぁっ、ああっ、あ! やぁ、あ、イク……っ、そんなに……したらっ、イクぅ‼︎」 「俺も出すぞ」 「嫌だ、あっあ、ん、あ、や、だから、中は……ッ嫌だってぇえ!」 「そう遠慮するな」 「してなっ、い……、んぁあ、あーー!」 「往生際が悪い。諦めて俺の子を孕め」  聴覚を揺るがすような甘さを含んだ声音は朝陽の快感を煽った。  全身に甘い疼きが広がりまた絶頂が来る。  視界が明滅し、何も考えられなくなった。  将門が与える快感が思考を溶かして、本当に頭が馬鹿になりそうだった。 「んあ、ァあ、あ! も……っちいい。将門ぉ、そこ……っ、ん、あ……ああ、気持ちいい」  気がつけば口走っていた。 「ああ、ここか」  内部の感じる所を集中的に突かれまくる。  その後で、パンッと奥深くまで差し込まれ、あまりの快楽の衝撃に朝陽はまたイった。 「ぁッあああ!」  肉襞が震え将門の陰茎をキツく締め上げる。  直後内部で欲が弾けた。  最後の一滴まで擦り込むように緩やかに腰を動かされる。  最悪だと思いながらも目を閉じかける。  しかし緩やかな動きがいつまでたっても終わらない。  訝しげに思い、重たい瞼を開いて振り返ると、ニンマリと笑みを浮かべる将門と目があった。 「まだまだ物足りん。枯れるまで付き合え」  再度後ろから突かれれば、止まらない絶頂感に襲われる。  うなじに口付けられてしまい、噛まれないように首だけ動かす。  そんな抵抗を嘲笑うように思いっきりうなじに噛みつかれ朝陽は小さく悲鳴を上げた。  血の匂いが鼻腔をくすぐる。  下っ腹が番であるアルファの精液を欲するように、蠕動し始めた。 「クク、中が俺に吸い付いているぞ。これで番契約成立だな」 「最悪だ……っ、ァア! も、はげ……っし、ぃ……ッあ、ああ、あーーっ‼︎」  本格的に頭が回らなくなり、また激しさを纏った動きに翻弄される。  朝陽は何度も何度も泣かされて鳴された。    目を覚ますと深夜の三時だった。  視線だけを動かして部屋を見渡すと、ベッドを背もたれにして将門が座っていた。 「起きたのか」 「てっめ……好き勝手に……っ、散々中に出しやがって」 「お前も随分と良さそうにしていただろう?」  頭の中でプチリと何かが切れる音がした。  朝陽は上半身を起こすと肩を回して拳を握り込んだ。  体はもう動くようになっていて、力も込められる。  それだけ確認出来れば良かった。  全霊力を右手に集中させる。 「俺は……確かに物理的な肉体も能力もΩだけどな、残念ながら、覚醒遺伝とやらで霊力だけはチートなんだよっ!」  将門の両目が見開かれた。 「成仏しろ、この色狂いのクソ悪霊!」  集束した光が朝陽の掌から弾け飛び、部屋中が昼間より明るくなった。 「ククク、最高だな朝陽。ハハハハ!」  将門の笑い声と共に、目を覆いたくなる程の光が炸裂して全てを呑み込む。  暗闇に戻る頃には、将門の姿は部屋の中から消えていた。 「はは、ざまー」  よろけながらも立ち上がり、朝陽は風呂場へと向かう。  腹の中に溜まりまくった霊の残滓を洗い流した所で、意味があるのかは分からないが、全身汗をかいていて気持ちが悪い。  ザッとシャワーを浴びた。  風呂から出るなりベッドに倒れ込む。  酷使され続けた体は、すぐに睡魔に呑み込まれた。  髪の毛の水分を吸い取って枕が湿っていく。  それも気にならない程、朝陽は深い眠りについた。  ——何で居るんだ、コイツ。  朝起きると、何故か部屋の中に将門がいた。  お互い無言のまま見つめ合い、これは夢かと思い直して、朝陽はまた目を閉じる。  今日から週末なので、仕事がないのは幸いだ。 「お前会社とやらには行かなくていいのか?」  ベッドの上に乗り上げてくる気配が、これは幻覚でも幻聴でも夢でもないと訴えていた。  動きたくもない程に腰は鈍痛に見舞われているし、股関節も悲鳴を上げている。 「何で成仏していない……? 俺、手加減してねえぞ」 「流石の俺も今回は初めて終わりを感じたぞ? 気がついたらまた此処に戻っていただけだ」 「ちっ」  またしくった。  心の奥底から舌打ちが出る。  幾年かぶりに本気で霊力を放った。  それなのに、祓えなかった。  ——番関係の何かか?  何も考えたくはないが、起き上がるなりスマホで己のうなじの写真を撮った。  一ひらも色の着いていなかった陰山桜の紋様は、一ひらだけが黒く色付いている。  何故一ひらだけなのかは分からない。  将門と番契約がきちんと結ばれたのであれば、全ての花びらが染まってもおかしくなかったからだ。 「何なんだよ、クソが……」  朝陽は、地の果てまで届きそうなくらいに大きなため息を吐き出す。 「それが素面か。俺はお前が心底気に入った。俺が召される時はお前も道連れにしてやる。覚悟しておけ朝陽」 「は? 迷惑だ。一人で逝けよ」  喉を鳴らして愉快そうに笑われる。  後ろから抱きすくめられたが、即行で体を突き放した。 「減るもんでもないし良いだろう?」 「嫌だ」 「なら、断るのを却下する」  ——どこの王様だよ!  その日から朝陽は将門に懐かれ、毎晩のように夜這いを掛けられるようになった。

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