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第六話、引越し先はいわく憑き物件。浄霊したら神聖な間になり過ぎて、ついに出来ちゃいました

 何もない休日というのも退屈なもので、朝陽は最近していなかった部屋の掃除をしていた。 「朝陽、オレは何をしたらいい?」  自ら手伝いを買って出た晴明に礼を言い、埃取りと床掃除をお願いする。 「ボクはご飯担当がいい。この前キュウに教えて貰った動画で見たよ。朝陽が美味しいの食べて美味しくなったとこをボクが食べるの」  ——注文の多い料理店かな。  某文豪が書いた有名な本を思い出した。 「オロ……俺は食用じゃないからな?」 「でも朝陽美味しいよ?」  ガックリと肩を落とす。純粋無垢な様に見えるが邪心まみれである。  しかし今のオロの見た目のせいで強くは出れないのが困りものだ。 「じゃあ私は日頃から疲れてる朝陽の為にマッサージしてあげる。少し前に私も動画見たんだよね。ねえ、実践させてよ」  朝陽は少し考えたものの、マッサージ自体は有り難かったので、掃除が終わったらやって貰う約束をした。そしてそのまま水回りの掃除に回る事にしたが、その前にベッドとテレビの前を陣取っているニギハヤヒと将門に視線を向ける。 「そこの二人。何も手伝わないならベランダ出てろ」  朝陽は二人をベランダに蹴り出す。そのタイミングを見計らって、晴明が床掃除を始めた。 「晴明、アイツら邪魔だったら退かしても良かったのに」 「ふふ。心の中で念は送ってたよ。朝陽に」 「俺にかよっ」  見事に受信してしまったようだ。  オロは本来の姿に戻って料理をしている。意外と手際が良い。家庭的な良い香りに食欲を誘われた。  晴明が手伝ったのもあり朝陽の掃除も早く終わった。これなら丁度いい時間で昼食に出来そうだ。 「朝陽そろそろ食べる?」 「食べる。ありがとうオロ。めちゃくちゃ美味そう」 「へへへーっ」  オロが得意気に笑いながら朝陽が食事をしている様子を眺めている。 「美味しい?」 「うん。感動レベルだ。凄いなオロ」 「朝陽褒めてくれるし、ボクもっと料理覚える」  朝陽は手を伸ばしてオロの頭を撫でた。  腹も満たされて、食器を洗い出したオロを見つめた後で、朝陽は外に出したままだった二人を思い出す。あまりにも静か過ぎて存在を忘れていた。  ——妙に静かだな、アイツら。  ベランダ側の大窓を開ける。二人は真剣な表情で視線を下に向けて、何かをしていた。 「お前ら何してんだ?」  ニギハヤヒと将門が視線を向けている方向を朝陽も覗き込む。 「誰が一番多く呪いをかけられるか競っている所だ。今ので七だな」  ニギハヤヒの言葉に将門が得意げな顔をした。 「俺は八だ」 「迷っ惑‼︎」  不用意に人を呪わないで欲しい。  この二人をベランダに出すのはやめよう、と心の中で誓いを立てて室内に戻す。とりあえず見える範囲の人たちに向けて結界を飛ばして、呪いを相殺した後に保護する。  ——保護が間に合わなかった人たち本当にごめんなさい!   心の中で謝罪した。 「朝陽~ここにうつ伏せで寝転がって?」  言われた通りに朝陽がラグの上に転がると、キュウは朝陽の太ももあたりに座り、腰に指圧をかけていく。丁度いい指圧加減が気持ちよかった。  だが、そのまま続けられるものとばかり思っていた朝陽の思いは裏切られる。手で揉み込まれていくのは尻を中心としたもので、キュウの指先が朝陽の下肢の際どい部分を掠めていく。 「キュウ……っ、あっ、んっ、ああ、ちょっと……待て」  変な声が出てしまい、首を捻ってキュウへと視線を向ける。 「え、なーに?」 「何って、ふ、あっ、やッ、お前、これ……何か違ッ! あ、あ、ん」 「違わないよー? 性感マッサージてちゃんと書いてたもの」 「初めっから間違えてんじゃねーかよっ‼︎」  全員から痛いくらいの熱視線を送られているのに気が付き朝陽は固まった。 「え…………」  飢えた肉食獣の群れの中に小鹿が投じられたようなものだ。皆にジッと見つめられている。この雰囲気はマズイ。そう判断した朝陽が逃げる前に先手は打たれた。 「朝陽、皆で異界へ行こうか?」  爽やかな笑顔で晴明が朝陽の顔を覗き込む。 「え……」 「大丈夫だよ。〝ちょっと〟気持ち良くなりに行くだけだから」 「え……?」 「六人揃って〝遊ぶ〟のは初めてだね」  キュウの言葉に、憤慨する。  ——誰、で遊ぶんだよ、こんちくしょう! 「いや、ちょっと待っ……「行くぞ朝陽」……聞けーーー‼︎」  将門に腕を引かれて、キュウの下から引き抜かれる。空間には既に切れ目が入っていた。 「キュウ……晴明……将門、覚えとけよお前ら」  涼しい顔で地獄への招待状を送りつけた三人を交互に睨む。朝陽の何もない休日は、激しい全身運動の日へと変わった。

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