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6-5
「順番はどうするつもりだ?」
ニギハヤヒが言うと全員口を閉ざして考える。
「分かりやすく、番になった順番にするのはどうかな?」
晴明の言葉に皆んな頷いた。
「なら俺からだな」
「今日はもう夜だし明日からにするか?」
問いかけた朝陽に将門が首を振る。
「今からで構わん。この時から二十四時間だ」
話が決まると、皆んな部屋を出て行った。
「将門と二人でベッドに居るのって久しぶりだな」
「そうだな」
キュウが現れるまで少し間が空いていたのもあり、朝陽は将門に独占されっぱなしだった。
それからは番が増える度に、将門はおろか他の番たちとも二人っきりになることがあまりない。異界にいる時くらいだ。そう考えると今日から始まる二人っきりという時間は貴重な気がした。
「ちっ、こんな時に……」
「将門?」
「朝陽……お前今すぐ一階に避難しろ」
焦りが見え隠れする声音で将門が言った。
「は? 何言って……」
意味が分からず聞き返す。将門の目を見た瞬間、朝陽の体が硬直した。
——こいつ、ラットに入ってる?
誘発に抗えきれずに、体に異変が訪れる。
ラットに触発されてしまい、強制発情させられた。欲を孕んだ互いの瞳に発情しきった互いの姿が映りこむ。今までのヒートとは段違いだった。
何もされてなくても神経が過敏になって荒い吐息が漏れる。もう抱かれる事しか頭になくて、朝陽は自分から将門に口付けた。
「将門……欲しい。将門が、欲しい」
「くそ……っ、どうなっても知らんぞ」
貪り合うようにキスして、どちらかともなく舌を絡ませ合った。寝着代わりにしているスウェットをたくし上げられて舌と手を全身に這わせられる。今は何をされても気持ち良かった。ビクビクと震える朝陽の体に鬱血痕が散っていく。
「気持ち……っいい。もう、中……欲しい」
「あまり煽るな。手加減してやれなくなるだろうが」
後孔に伸びて来た指に内部を侵される。グチュリと音を立てて、将門の指を難なく飲み込んでいく。どんどん追加されて行き、何本目か分からないくらいにかき回されてから指を抜かれた。
「朝陽、このまま俺の子を孕め」
指とは比べ物にならないモノを押し当てられる。朝陽の中を慣らすように奥まで暴いていき、最奥の手前で止まった。
「ん……っ、将門の……、孕みたい。将門……っ、俺を、孕ませて」
「ここ、開くぞ」
合図のように結腸の入り口を陰茎の先でトントンと刺激される。首を縦に振った朝陽を見るなり、将門は強く腰を打ちつけた。
「ひ、ぁ、ああ、あっああー!」
朝陽の背が反り返る。抽挿される度に淫靡な水音が響き、ベッドが軋んだ音を立てた。目の前が白く霞み光が明滅する。朝陽の直腸内が引き攣り将門の陰茎を締め付けた。形を覚えるように絡みつき絶頂を促す。
「あ、ああ、ん、あ、あああッ、ん! 気持ちいい、将門っ、あ、ああっ、何これ……、気持ち……ッいいー!」
「中も凄い……っ事になってるぞ。本当に名器だな、朝陽」
腰を両手で持ち直されて、快楽を貪る動きへと変わった。何度も何度も腰を打ちつけられ朝陽の視界が白く霞む。
「出すぞ」
「ん、ああっ、ああ、ん……ッ、ちょうだい、中、欲しいッ将門の、欲しい」
「ちゃんと孕めよ、朝陽」
最奥まで突かれ中で欲が爆ぜる。そして直後にまた律動が始まる。行為は将門のラットが収まるまで続けられた。
下履きだけ身に付けたままベッドの上に転がって、情事後の余韻に浸っている時だった。朝陽は下腹部に違和感を覚えて、手で腹を押さえた。
「どうした?」
「いや、何か……腹の中が変だ、て、痛っ‼︎」
朝陽が痛みを訴えた時だった。腹部から大きな光の玉の様なものが出て来て、ベッドの上に落ちた。
「何だこれ」
光が収まり塊の姿が露わになる。そこには将門にそっくりな赤子の姿があった。生まれたばかりにしては大きい。一歳児くらいの大きさはある。
「よし、生まれたな?」
急に勢いよく扉が開いたかと思いきや、そこにはニギハヤヒがいた。無造作に赤子を掴み上げると朝陽が食ってかかった。
「ちょっ、ニギハヤヒ! もっと優しく扱えよ!」
「何なに? 何してんの?」
話し声が聞こえてきたのを感じて他の番達も寝室に大集合した。
「朝陽が産んだの? 将門の子? 朝陽に似たら良かったのにね~」
キュウがニギハヤヒの抱いている赤子を覗き込む。ニギハヤヒは寝室の窓を開け放つなり、窓の外に赤子をぶん投げながら言った。
「お前は首塚の新しい守護神となって来い」
「ひっ」
朝陽は慌てて窓に駆け寄って、一階部分を見渡したが痕跡すらない。
「ニギ、ハヤヒ……」
今までかつて無い程に低い朝陽の声音がニギハヤヒの名を紡いだ。バチバチと静電気のような物が朝陽の周りで弾け飛びながら増量し、やがて掌に集中していく。
「あ、朝陽……いくら儂でもその霊力の放出量はちぃーとやばいぞ?」
「……うるせぇ」
「ちょちょちょ、朝陽、どうしたの? 落ち着いて!」
「キュウもコイツの味方なのか……?」
振り返った朝陽の目は完全に据わっていた。これは確実にとばっちりを食うパターンだ。
「ううん、全っ然。私、朝陽の味方だもの」
キュウはアッサリと掌を返した。
「おい九尾、もっと儂の事を庇護せんかい」
「朝陽がこんなにキレてるの初めて見た」
「オレ達はこのまま見守っておこうか?」
「そうだね」
オロと晴明は興味深そうに見つめ、傍観者に徹する。
「やめろ、朝陽」
将門の言葉を聞いて朝陽の顔が泣き出しそうな程に歪んだ。
「将門っ、何で止めるんだよ! ニギハヤヒは俺たちの子どもを殺したっ!」
「違う。首塚へ行かせただけだ。殺していない」
「じゃあ生きて……る?」
「生きてる。大丈夫だ。だから落ち着け」
「将門、将門~」
将門の首に両腕を巻きつけ、朝陽が甘えるように首筋に額を擦り付けた。
「は?」
幾度も将門の首に口付けて、適度な力加減で吸い付く。朝陽からこうして甘えられた事がない為に、将門が目一杯瞼を押し開いて固まっていた。
「いいな、将門。朝陽どうしちゃったの?」
キュウからの問いかけに将門が口を開く。
「俺のラットに当てられたのと、神産みとが重なって俺以外には攻撃的になっているだけだ。後はちゃんと先に説明しなかったニギハヤヒが悪い」
「そのおかげで美味しい思いしてるんだから、いいでしょ」
「クク、そうだな」
自分から引っ付いたまま離れようとしない朝陽を横抱きにして、将門はベッドに腰掛ける。朝陽はそのまま寝てしまったようで、目を閉じていた。
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