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第16話

**** 「……由妃は本当に後悔しない?」 優しくそう問う由磨の声に、自分の考えが見透かされた気がした。 本当は迷っている事に…… それでも……… 「後悔……しないよ。 由磨になら………由磨なら。 ………何されても…構わないよ………」 涙で濡れた瞳でそう告げる僕の言葉に、どれだけ説得力があるのだろうか。 まだ震え続ける身体も、全部、全部…… もう、僕だけじゃどうにも出来ないんだ……… だから、由磨………お願いだよ…… 「由磨にしか……頼めないんだ……… お願い……」 僕の不甲斐なさに由磨を巻き込んでしまうのが申し訳なくて、もう由磨の顔を見る事もできなかった。 ただひたすらに、由磨のシャツを掴んで、ぽつりぽつりと、言葉を繋いだ。 由磨は今どんな顔をしているんだろう。 困った顔をしているんだろうな……… ごめんね、由磨。こんな僕で。 僕がもっとしっかりしていれば…… もっと抵抗できていれば……… 僕なんか生まれなければ……… もう涙を止める術もわからないよ…… 「ごめんね、由磨………ごめん………」 ふいに、由磨が僕を強く抱きしめた。 「何で謝るんだよっ……由妃は何も悪くない。 由妃は僕が護るよ、絶対に。」 由磨は僕の体を少し離して、顔を覗き込んできた。 「………由妃、してもいい?」 今まで見てきた由磨の表情と全く違う、 優しくて陽だまりのような、包み込まれるような表情に、僕の全てを赦された気がした。 「うん…………お願い、由磨……」 頬にそっと触れた由磨の手が、微かに震えていた事に、僕は気付かないフリをした……

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