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第15話 #由磨side
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昨日、泣きながら僕の手を握る由妃を見て、僕は自分の不甲斐なさに苛立ちを覚えた。
もっと早く助けに行けていれば………
そんなありもしない可能性を考えて、何度も自問自答した。
あの後、ベッドで由妃を寝かせると、余程疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
僕の手を握りながら……
まだ目に涙を溜めて…………
それから由妃が目を覚ますまで、ずっと手を握って様子を見守っていた。
ある時から由妃がうなされ始めた。
何か怖い夢を見ているのだろう、眉間に皺を寄せて、うわ言を言っている。
「ゆき…………たすけて…………」
その言葉を聞くと、胸が締め付けられた。
また、あの時の後悔が波のように押し寄せてきた。
僕は一生あの時の僕を許せないだろう……
眠りながら涙を流す由妃に耐えられず、思わず由妃を起こした。
「由妃っ、由妃!大丈夫か?」
その後も由妃は苦しそうに言葉を紡ぎ、そしてこう言った………
「抱いてよ、由磨…………」
一瞬、思考が停止した。
由妃の口からその言葉が出るとは思いもしなかった。それほどまでに由妃は追い詰められていた。
………由妃の事は、好きだ。大好きだ。
僕の全てを賭けてでも護りたい存在だ。
でも、こういう形で由妃を抱くのは本意ではない。大切にしたい。しなけれはいけない存在だ。
だから今までだって、陰で由妃を見守ってきた。
変な輩がちょっかいを出さないよう、大切に、大切に、壊さないように。しまい込んできたんだ、自分の感情を。
でも、自分の感情を抑えるのにも限界だった。
だから家を出て一人暮らしを始めた。
それなのに………
由妃は残酷だな。
由妃に求められて僕が拒否できるはずがない。
いつだって僕は由妃を中心に生きている。
由妃が僕の全てなんだ…………
由妃を救う為なら、僕は…‥僕は………
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