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第13話 バカ息子 近江ヒロキside

「ヒロキ君、うちのバカ息子が本当に君には、申し訳ないコトをした! 済まなかった!」  ベッド脇に座ったアルファの男性がイキナリ頭を下げ、ヒロキに向かって謝罪した。 「・・・・!?」  ギョッ… とヒロキは眼を見開き、口を開けて固まった。  ヒロキの目の前に座るアルファ男性は、センリの父親だったからだ。  センリの父親と一緒に病室に入って来た、見知らぬ2人のアルファも、顔をよく見ると父親と同様、センリに似ていた。  そしてヒロキは、もう一つの事実に気付いた。  センリの父親の膝に置かれた拳が、赤く腫れていて、センリの顔をジャガイモのようにデコボコに腫らした原因を知る。 「ゴメン、ヒロキ! オレが突っ走ったせいで、ヒロキが何日も目覚めなくて… オレは、ヒロキを失ったらどうしようって…!!」 「センリ…」  目覚めてスグにこの状況は、ヒロキにとってはストレス以外の何ものでも無かった。  めまいを感じてヒロキは額を押さえた。 「実は、ヒロキ君にとても残念な報告があるのだよ」  センリ父が、言いにくそうにヒロキを見つめた。 「…報告… ですか?」 「君のご両親と話し合ったのだが、予定していた君の見合いは、私からも先方へ事情を話し、お断りしてもらってだね…」  センリ父は、部屋のスミに立つ気マズそうなヒロキの両親をチラリと見ると、再びヒロキに視線を戻す。 「ああ… はい、そうなって当然ですね」  ガックリと肩を落として、ヒロキは顔をふせた。 「ソレで重ね重ね、悪いのだが… うちの愚息を君に頼めないかと思ってね」 「センリを僕に? 何をですか? 仕事の方はもう1人でも十分出来ますし… 僕に出来るコトは、何もありませんが?」  疑問を口にするヒロキを見て、センリの父は心底困った、という顔をする。 「だから、ヒロキがオレと結婚してくれないかって、親父は言っているんだよ!」  キラキラと瞳を輝かせて、センリがヒロキの手を取り撫で回した。 「何で?! お前、立派な婚約者がいたダロウ?」 「ソレはさぁ… オレが自分で断ったから心配ないよ?」 「断ったって?! そんなコトして大丈夫なのか?!」 「・・・・・・」  フゥ―――ッ… とセンリの父が、大きなため息をついたところを見ると、どうやら全然大丈夫では無さそうだった。 「だから… 名家のオメガをオレが妊娠させてしまったから、結婚できないって婚約解消してもらったんだよ」 「何だって?!」 <コイツは何を言っているんだ? んんん?>  ヒロキは自分の耳を疑った。 「単に、他に好きな人が出来たからでは婚約者に魅力が無いから他の人間を選んだって言うのと同じダロウ?」 「ああ… うん、なるほど」 「ソレで、遊んでてウッカリ大失敗して、妊娠させたから…って理由 なら、オレが不誠実でマヌケなだけで、相手は実害無いじゃないか」 「ええ? そうか?!」 <んんんん~?>  ヒロキは首を(ひね)った。 「要は相手の親も本音では、遊びまわってるオレと、娘を結婚させたくなかったワケ」 「ああ! それで絶好の言い訳を相手に提供したのか!!」 「そう、ソレ!!」 「うわっ… お前やっぱり鬼畜!! やるコト汚ねぇっ…!」  ヒロキが引き気味で言うと 「へへへ…」  照れたように笑うセンリ。 「ばかっ! 全然褒めて無いぞ、センリ! 少しは反省しろ!!」 「ふふふっ…」 「困った奴だな… 本当に」  結局惚れた弱みで折れるヒロキ。  

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