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第7話 セクハラ上等?
「セクハラってのはな……こういう事だっ!」
叫ぶなり真島は全身の力を一気に抜き、鯨がローリングするようにカラダごとドスンと灰谷の上に倒れこんだ。
「イタっ!」
「からの~っ」
真島は素早く起き上がると灰谷の両手首をつかみ、胸の前でバッテンにさせると器用にクルリとカラダを返し、うつ伏せにさせ、その背にドカッと腰を下ろした。
あまりの早ワザに灰谷は身動きが取れなかった。
「ヘイヘイ~セクハラ上等~。いいケツしてんな灰谷く~ん」真島は灰谷の尻をペチペチと調子に乗って叩く。
「オマっ……何……ウワッ」
真島の指が灰谷の脇をくすぐりにかかった。
「ヘイヘーイ」
「やめっオマ、やめっ……やっ……やっ……」
真島の執拗なくすぐりに灰谷はカラダをこわばらせてビクビクさせた。
「そらそらセクハラセクハラ」
「やめっ……」
灰谷はカラダを起こそうとしたが、腰が浮くたびに真島は体重をかけ、そうさせまいとした。そうしながらも真島は嬉々とした表情で灰谷をくすぐり続けた。
「オラオラ~」
「……やめろっ……」
「オラオラ~」
カラダを固くしてギュッとこらえていた灰谷だったが……我慢も限界点を超えた。
「やめろって……言ってんだろっ」の声とともにカラダに力を入れ上半身をガバリと起こすと背中を揺すり、驚いてカラダを浮かせた真島をふり落とした。
「うわぁ~」
灰谷は仰向けにひっくり返った真島の腹の上にドカッと腰を下ろすと両手首をつかみ、顔の横で固定した。
「形勢逆転だな。あやまれ」
「やだね」真島は口を尖らせる。
「あやまれ」灰谷はつかんだ腕に力を入れる。
「イタイって…」真島の顔が少しゆがむ。
「あやまれ」
真島は足をバタバタとさせるが真島より体重のある灰谷はびくともしない。
「重いって~」
「あやまるか」
「離せって~~」
なおも足をバタつかせる真島。
灰谷はつかんでいた腕にさらに力を入れた。
「イタイって~馬鹿力」
「あやまるか?」
「はあ~?オレのせいじゃねえし」と真島がまた口をとがらせる。
「オマエ、ペット振ったな?」
「振ってねえし」
「振ったな?」
「重いって~」
イヤイヤをするように首を振る真島の顔を見下ろしていた灰谷だったが、良いことを思いついたとばかりに小さく微笑むと手の力を少しゆるめた。
ギュッと捕まれていた力が弱くなり、狙い通り真島は動きを止めてこちらを見た。
「?」
「オマエな、いい加減に……」
キッチリ謝らせようと思ったその時、お互いの顔の距離がほとんど離れていないことに二人同時に気がついた。
真正面からしっかりとみつめ、瞳をのぞき合う。
やっぱこいつ……女顔。
色白いし、肌キレイだし。
灰谷はあらためて気がつく。
瞳は明るい薄茶でガキみたいに透き通ってる。
まゆげはしっかりしてんのに、まつげバサバサ。
鼻筋が通っててヒゲは薄くてほとんど無くて。
で、唇。プニプニしてて赤ん坊みたいだ。
首は白く細く長く。
間近で見るあらわな首元はなんだか、すごく無防備に見える。
でも、のど仏なんかはちゃんとあって、そこは男で。
――不思議だな。
近すぎて。あまりにも近すぎて。
ちゃんと見ていなかったんだろう。
はじめてマトモに真島の顔を見たような気が……する。
なおも見つめていると真島の視線が右左と彷徨ったと思ったら、プイッと顔が横を向いてしまった。
その耳が頬が次第に赤く色づいていく。
「オマエ……」
つかんだ手首も熱をもったように感じられ、ドキドキと真島の心臓が立てる大きな音が聞こえてくるように思えた。
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