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第8話 なに意識してんだよ。

なに意識してんだよ……。 なんだか胸がむずがゆいような気持ちがこみ上げた。 灰谷は真島の手首をつかんだまま顔の横から頭の上に上げ、バンザイの格好をさせた。 そして両手でつかんでいた手首を片手だけでつかみ直した。 男にしては細めの真島の手首は灰谷の大きな手のひらに収まった。 急に頭の上で両腕をバッテンに拘束され、上半身がガラ空きになった真島の目に戸惑いの色が浮かんだ。 次の瞬間……。 「オラッ!」灰谷は空いた方の手ですばやく真島の脇をくすぐった。 「ひゃっひゃっひゃっ」 「オラオラッ」 「やめろっ。やめろっ…ひゃひゃひゃひゃひゃ…」 真島はカラダを折って足をバタつかせる。 「……モレる…モレる…」 「モラせモラせ」 灰谷の指は真島の脇から腹を器用に動き回った。 「ひゃひゃひゃひゃひゃ…マジヤバイ…マジヤバイ」 「ゴメンって言え」 「~~~」 枕に顔をうずめ必死で耐えようとしていたけれど限界が来たようで真島は「~~ゴメンゴメンゴメン」と早口で唱えた。 灰谷はニッと微笑むとダメ押しに「もう一回」と言った。 「ゴメ~ン!」真島の大きな声が部屋に響いた。 「おっしゃあ」と灰谷は手を離し真島の上からカラダをどかせた。 「はあ~もう~モラすって~ホントに~~」 息も絶え絶えの真島はベッドの上で足を派手にジタバタさせる。 「あれ? オレのスマホどこ行った?」 「知るかっ。オマエの方がセクハラだ。このエロ男爵」 「男爵ってなんだよ。なんで男爵だ。あ、あった」 ベッドの下に落ちていたスマホを灰谷は拾い上げた。 「いやぁ~お二人って……」 感に堪えないといった感じの友樹の声が聞こえ、灰谷と真島はハッとして友樹を見た。 「ホントに仲、いいっすねえ~」友樹はしみじみとつぶやいた。 瞬間、友樹の存在をすっかり忘れていた事に灰谷と真島は気がつき、目を合わせた。 「!!いやいや、良くねえし!」 真島はすばやく起き上がると足早に友樹のとなりに腰をおろし、ゲームのコントローラーを手にした。 「友樹、ほらもう一回やんぞ」 「そんなにテレなくても」 「テレて!ねえわ!」 真島が友樹の肩をグーでパンチした。 「イタッ!……カワイイなあ」 「カワイく!ねえわ!」ともう一度グーパンをかます。 「イタッ!」 「つうか、いつできんだオムライス」 真島はそうつぶやくと、落ちつかなげに立ち上がり、「母ちゃーん、メシまだかよ~」と、ドアを開け、出て行った。

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