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第9話 ドキドキ オレはいま確かに生きている
ドカドカドカドカ。
オレは足音を立てて階段をかけ降りた。
降りきったところで立ち止まる。
心臓に手を当てるとバクバクいっている。
なんなのなんなのあれ。今の一連のあれなんだったの?
そりゃ確かにペプシのペット振ったのも、先にくすぐったのもオレだけどさ。
いつものノリっちゃノリだし。
それが……。
気がついたら両手首ぎゅっと握られて上から見下ろされてて顔があんなに近くにあって。
真剣な顔で、なんか見つめられてて。
あいつ……なんであんな男前なんだよ。
ありゃあ女子はキャーキャー言うわ。
男のオレだってこうなんだから。
つうかなんで見つめてたのオレのこと。
え?オレがドキドキするのを見る復讐?
いや、そういうんでもなかったし、そういう事するヤツじゃねえし。
はあ~。
オレは胸を押さえて壁により掛かる。
心臓持たねえ。
腰砕け~。
まだバクバクしている……。
ああ、生きている。
オレはいま確かに生きている!
生きているって素晴らしい!…ってバカ!
ズルズルと壁に背をつけたまましゃがみこむ。
はあ~。やってらんねえ~。
もう~オレ告白してるんだから、ちっとは組取って欲しい。
好きなヤツにあんな風に見つめられたら、たまんねえってこと。
いや、でもそれはオレのワガママか。
勝手に好きになって勝手に告って勝手に返事待ってんだから。
はあ~片思いってツレぇ~。
灰谷のちょっとした行動に、言葉に、しぐさに、視線に、なんかあるんじゃないかって思ってしまう。
グー~~。
って腹へったわ!
「母ちゃんメシー」キッチンに入って行くと母ちゃんは絶賛電話中だった。
「ホント、男の子って何考えてるかわからなくてやんなっちゃうわあ」
なんだよその会話。
テーブルの上にはホカホカの唐揚げとオムライスとポテサラとこれでもかと盛り上げた生野菜の皿がのっていた。
母ちゃんはオレに気がつくと、上に持って行きなさいと目とジェスチャーで訴えた。
そして「そうなのよう。うちのマコもなのよう」とデカ声を出した。
『誰と話してんだ。電話でマコやめろ!』と心の中でツッコむ。
ったく母親のデリカシーのなさと来たら、山のごとし。
お盆を出して皿をのせる。一人じゃ持ちきれねえ量だった。
オレはキッチンから顔を出し、二階に向かって声をかけた。
「灰谷~灰谷~ちょっと手伝ってくれよ灰谷~」
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