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第17話 初めて見る表情

「ホンっトにオマエは……」 え?え? オマエは……何? オレは灰谷を見つめて言葉の続きを待った。 ――――この顔って。 ええと…。 これって……もしかして呆れてる? オレ、なんかヘンな事言った? が、灰谷はそのまま何も言わずにくるりと背を向けるとドアを開け、部屋の中に入ってしまった。 な、何? なんなの。 なんで「ホンっトにオマエは……」でやめちゃうんだよ。 ってか何あの顔。 なんかもうこいつ……みたいな表情。 あんな顔、はじめて見た。 何なにその思わせぶりなやつ……。 オレなんかした? ええ~? なんだか胸ん中をワチャワチャさせながら部屋に入る。 「マコ先輩、コーヒーおいしいです」 友樹がカップ片手に微笑んだ。 「おう」 友樹のとなりに腰をおろし、灰谷の顔をそっとうかがって見たけれど。 灰谷はもういつもの灰谷で。 いやほんのちょっとだけ、どちらかと言えば憮然とした表情で。 またスマホでジョジョを読みながら、生野菜をバリバリ食っている。 オレは戸惑ってしまう。 「あれ~なんかありましたぁ?」 無邪気な友樹の言葉が耳に刺さる。   「え?いやなんもねえよ。なんでだよ」 「ボクがマコって言ってもスルーだったんで」 「え?」 「さっき言ったでしょ?マコとカワイイ禁止って」 そ、そうだった。 「マコ言うな!」 「そんな、取ってつけた風に」 そうなんだ。 あのオレの夏の告白以来、灰谷といるとたまになんか妙な雰囲気になっちゃって。 ほぼオレのせいなんだけど。 なんかこう~片思い爆発みたいな時があってドキドキが止まんなくなったりとか。 「つうか食ってるか友樹」 「はい。美味しく頂いています」 「そりゃあよかった。食え食え。残り全部食え」 オレはポテトサラダの皿を友樹に押しつけた。 「こんなに食べれませんよ~」 「食える食える。食ったらゲームの続きやるぞ」 「は~い」 友樹と三人でいる時、灰谷はあんまり喋らない。 これってそう。明日美ちゃんと三人でいた時と似た感じだ。 オレは友樹の事、弟みたいで好きなんだけど、もしかしたら灰谷は違うのかもしれない。 ……でもさ。 本音を言えば、灰谷と二人きりより、三人でいるほうがラクなんだ。 実はオレ、友樹がいて助かるなって思ってるとこ、あるんだ。

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