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第16話 ホントに……オマエは……。
食事会のメニューもギョウザメインの中華に決まった。
こりゃあ楽しみだぜっとオレは思ったけど、灰谷的にはどうなんだろうな。
「そうだ、おかず足りた?」母ちゃんが聞く。
「あ~灰谷が唐揚げバクバク食うからさ~」とオレがボヤけば、「ウマいからな節子の唐揚げ。世界で一番ウマイ」灰谷がさらりとつぶやいた。
「もう~灰谷くんったら~」母ちゃんの顔がパッと耀く。
もう~そういうとこ。
そういうのを、たらしてるって言うんだぜ。
「早くお婿に来て来て~」
「じゃあ高校卒業したら」小さく笑いながら灰谷が返す。
おっ、灰谷がノッた。
「来て来て~。マコ、あんたからもお願いして」
「だからマコやめろって。なあんでオレがお願いすんだよ」
「あら、出来の悪い嫁でごめんなさい」
「こういうとこがカワイイっす」
!!
灰谷がさらにノッた!
カワイイに力こめて言い、あおるようにオレの方をちらりと見やがった。
なあんだよその目。赤くなんねえぞ。
「キャー!」かわりに母ちゃんが女子みたいな悲鳴を上げる。
しかし婿だの嫁だの……。
今度はオレが地蔵になりそうだ。
「母ちゃん、うっせ。オレたちメシまだ途中だから戻るぜ」
「ああ、コーヒー淹れたから、ついでに二階に持っていきなさい」
「はいはい」
オレはコーヒーカップに3人分コーヒーを注ぎ、お盆にのせた。
それを灰谷が横から取り上げる。
「なんだよ」
「オマエ、落としそうだから」
「落とさねえよ」
どこまで不器用だよオレ。
「さすが~マコのお婿さん男前。ピューピュー」後ろから母ちゃんがはやし立てる。
「何度も言うけどマコと婿やめろ。ピューピューもなんか古い」
「あらあらテレちゃって」
母ちゃんはまったくホントに天然でイジって来るな。
怖い怖い。
「灰谷、友樹となんかあった?」居間を出てすぐにオレは気になったことを聞いてみた。
「あ~?なんもないよ」
「ホントに?」
「なんでウソつかなきゃなんねえの?」
そう淡々と言う灰谷の顔はいつものポーカーフェイスだった。
「そうだけど」
「だろ。だよな」
「おう」
気のせいだったのかな。
ちょっとだけ険悪な感じに見えたんだけど。
コーヒーののったお盆をまるでウエイターみたいに、大きな手のひらの上にひょいっとのせて灰谷が先に階段を上がる。
手、デカイ。
オレなんかよりずっと。
指もスーッと長くて骨ばっててキレイなんだよな。
って出た!オレの乙女モード。
やめやめ。
「ギョウザ、よくね?」
「いいかもな。さすが節子」
「つうか久子母ちゃん、今いないんだ」
「ああ」
そういうのは言わないんだよな。
その辺り微妙なんだなきっと。
「メシどうしてんの?」
「ん~テキトーに作ってる」
「そっか。うち来ればいいじゃん」
「ああ。うん」
「あ~つうかオレ灰谷のあのパスタ、また食べてえな。トマトとナスの。あれめっちゃウマいよな」
「んなのいつでも。来れば?作るよ」
「ホントに?」
灰谷の言葉にオレは一気にテンションが上ってしまう。
「ホントにホントに?」
「おう」
「ホントにホントにホントだな?」
「……」
なぜか部屋の前で灰谷がピタリと立ち止まった。
ん?何?
灰谷が静かにふり返った。
「ホンっトにオマエは……」
え?え?
オマエは……何?
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