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第21話 登校時のルーティーン②
夏の終わりに、買ったばかりのチャリを盗まれてからこっち、灰谷はいまだにオレを迎えに来てくれている。
新しいチャリ買うよりバイク代の支払いにあてたほうがいいだろって。
灰谷は優しい。
なので、オレの特等席は健在なのだった。
「真島、感謝しろよ~。灰谷の献身に」
「オマエが言うな佐藤」とオレが返せば「慣れたんだよ。ただのルーティーン」
ぶっきらぼうにそう言う灰谷にほんの少しさびしくなったオレは「ルーティーン大好きA型でーす」とかぶせる。
灰谷がピタリと立ち止まった。
?となるオレたち(マジサト)。
「真島、オマエ、明日から歩いて行け」と言うなり、灰谷はチャリのカゴからオレのカバンをポンと放り投げた。
オレは思わず、うわ~っと声をあげ、地面に着くギリギリでキャッチ。
「ウソウソ。A型の几帳面で潔癖なところ大好き♡」と言いつつカゴに戻す。
「ウソつけ」
「いやいやウソじゃねえよ」
うん。ホントだし。
だーい好き♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡。
マジママジマジ、♡三昧!
「オマエらホント、仲いいな」と佐藤が目を細めてオレたちを見つめる。
う~ん。
友樹に続いて佐藤にも言われちまったな、”仲良し”ワード。
仲良しにもいろいろあるんだぜ佐藤くん。
ところで、その佐藤がわかりやすくソワソワしている事にオレは気がついていた。
そろそろ聞いてやった方がいいんだろうな。
「佐藤、ご機嫌じゃん。なんかあった?」
「聞きたい?聞きたい?」
「いいわ、やっぱ聞きたくない」
「聞いて聞いて」
佐藤はウザイくらいにカラダをぐいぐい寄せてきた。
そして、コホンとわざとらしくセキをすると、大きく手をあげた。
「今週末、佐藤……大人になります」
???
大人?
え?何が?
「デート!デート!今週末、桜子 ちゃんと鎌倉デートが決まりましたぁ!」
オレと灰谷の反応が鈍いのでしびれを切らした佐藤が一気にまくし立てた。
「え?大人って。オマエまさか。お泊まり?」一応聞いてみる。
「いやん。ただの日帰りデートよん。ちょっと遠出するっていうかなんていうか?」
だよな。それだけで朝からこのハイテンション。
童貞力、恐るべし!
「よっ、男佐藤! 良かったな」と、とりあえず言っておこう。
「おうよ!」
「健闘を祈る」
「灰谷パイセン、チョリーッス」
「なんでパイセンだよ」
「いやいや、男女交際のパイセンつうか?」
って、ここまで話してても中田が入ってこない。
佐藤の彼女は中田の彼女杏子ちゃんの妹、桜子ちゃん。
ちっちゃい頃から知ってるから、いつもならまるで思春期の娘を持った父親みたいな反応なのに。めずらしいなあ。
中田こそなんかあったんじゃねえの?なんて思ってると。
「なあなあ真島、あのな、オレってアリ?ナシ?」
声を少しだけひそめて佐藤がこんな事を訊いてきた。
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