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第26話 アリ? ナシ? ③

「いやぁ!灰谷がオナってんの想像しただけで萎えるわ!」 ギャー~~~。 ってどの口が言ってんのオレ? 告白した口で言ってんの。 灰谷聞いてんのに~~。 でも必死に顔は平静をキープ!!! 目を開けろ!目を開けるんだ真島信よ! 「ああ、そりゃあムリだな。生理的にムリってやつだな」と納得顔の佐藤。 爆発回避!でも生理的にムリって言葉、なんかヒドすぎ……。 その直後、「悪かったな」って灰谷の声がふってきた。 ギャー~~。 心は爆死!!! 灰谷の顔見れねえぇぇぇぇ。 からってわけじゃないけど目に入った中田の頬がこころなしかゆるんでいる気がする。 「ド定番なんだよな、ひそかに親友に恋するやつ」 「へえ~」 もういいって佐藤。 ドキドキ。 つうか心の前髪がチリチリ。 「アリもアリ。大アリだろ」 佐藤がとまらない。 このあたりで勘弁してくれ~。 「『ずっと好きだったんだ灰谷。オレ……オマエのこと……』」 佐藤の一人芝居が始まった~! ガタン! 急に灰谷が立ち上がった。 背後から灰谷に抱きつこうとしていた佐藤が肩すかしをくらって、ずっこけた。 「何!どしたの灰谷?トイレ?」と佐藤が訊けば「購買行くわ。メシ足りねえ」とたんたんと答える灰谷。 気にしてないんだろうか。 いや、気にして欲しいんだろうか、オレ。 「じゃあ、ついでにメロンパンとコーヒー牛乳買ってきて」 「やだね。オマエ踏み倒すから」 「え~灰谷きゅーん、オゴッてよ。なあなあ」 盛大に佐藤に絡まれながら灰谷が教室を出て行った。 助かった……。 胸を撫で下ろしていると「ふふん…」と中田がオレを見てニヤニヤしている。 「なんだよ中田」 「別に。ド定番ってやっぱ一番面白いよな」 すました顔で中田が、のたまった。 中田……やっぱ気がついてんな。 「まあ、ああいう話ができるって事は佐藤なりにふっきれたし、あいつなりにわかろうとしてるって事だろ」 「だな」 中田の言うとおりだった。方向性はいかがなものかと思うけど。 なんか、モヤるな。 ヤケ食い(?)だ!!ムシャムシャ。 オレはまたミルクフランスに取りかかった。 しかしホント、ウマイ。 このクリームって作れねえのかなあ、なんて事をまた考えていると。 ♪ピロ~ん。 中田のズボンのポケットからスマホの着信音が鳴り響いた。 ♪ピローん♪ピローん 続けて鳴った。 ♪ピローん♪ピローん♪ピローん またまた鳴った。 でも、中田はジャンプから目を離さず、まるで聞こえていないかのような感じ。 が、組んだ足が小刻みに揺れはじめた。 ♪ピローん♪ピローん♪ピローん♪ピローん スゲー鬼着信。 怖っ。 借金の取り立てか? さすがの中田も「うっせえな」とつぶやき、ポケットから取り出した。 でも画面を見ようともせずに消音モードにすると机の上に放り投げた。 思わず目に入ってしまったスマホの画面はLINEのメッセージで埋まっている。 中田はまたジャンプを手に取って読みはじめたが、足の揺れは大きくなっている。 眉間のシワも深くなった。 オレは気がつかないフリをして残りのミルクフランスをせめた。 まあこんだけ鳴ってりゃ気づかないフリも何もないんだけど。 やっぱ杏子ちゃんかな? うまくいってないのかな。 これ、オレがそばにいて気づいちゃってるってのが、また中田はイヤだろうな。 やっとこさ食べ終え、イチゴ牛乳を飲み干すと「トイレ行こ」とつぶやき、オレは立ち上がった。

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