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第27話 屋上で聞いたこと①

「ふ~~スッキリ」 例によって例のごとくハンカチ忘れちまったんで、ぬれた手をフリフリ、トイレを出る。 まだ教室に帰るのは早いかもなあと向かったのはオレの憩いの場所だった。 校舎の屋上は本当は立ち入り禁止でカギが閉まってるんだけど、古い建物なんでドアノブを握って右にひねり、ガンガンガンと3回引っ張ると簡単に開いてしまう。 これ、オレが発見したスクールライフハックなのだ。 学校生活を乗り切るにはこういう息の抜ける場所が必要なのだ。 のだのだ。 鉄のドアを開けると背の高い緑色のフェンスに囲まれた、だだっ広いグレーのコンクリートが広がっている。 カギが閉まってたってことは、もちろん誰もいない。 灰谷の事で色々あった時は一人でよくここに来て休み時間をすごしたもんだ。 まあ灰谷にはバレちゃってたけども。 最近じゃあご無沙汰だったな。 あ~。 大きく伸びをしたオレの目に映るのは秋の空。 遠く高く雲一つない秋晴れだった。 いい天気だなー。 腰に手を当て、さらにグイッと後ろにカラダを伸ばす。 う~~。 伸びる伸びる。 と……目に入ってきたのは逆さまに見える丸い貯水タンク。 おっ。そうだっ。 良いことを思いついてしまった。 オレがさっき出てきたドアは屋上に突き出た箱形の建物みたいになっていて、その上には貯水塔が建っていた。 点検なんかでそこに上がるためだろう、壁にはホッチキスの芯みたいなコの字型の手すりみたいなのがついている。 うん。行けそうだ。 オレはえっちらおっちら苦労してそこを上り、建物の上、貯水塔の下に出た。 丸い貯水タンクを下から見上げ、視線を外に向けると眼下には細々とした家々がビッシリと並んでいる。 チマチマチマチマ。まるで陣取り合戦。 こういうのがチマチマチマチマと地球を埋めつくしているわけだ。 って、陸より海のほうが多いんだっけ。 汚いジオラマみたいだな。 あの一個一個には人間が住んでいて、そのどれもが違う人間で、それぞれ違うことを考えているわけだ。 オレは建物の縁に腰かけて足をブラブラさせてみる。 オレんちは……あっち、あの辺かな。 ヒューヒューと風も吹き抜けて、なんだかのんびりと気持ちがいい。 ふわあ~。 眠くなって来た。 腹いっぱいだと眠くなるよねって事でキョロキョロ。 寝転がれるくらいのスペースは十分にある。 上着を脱いでくるりと丸めて枕にするとゴロンと寝転んだ。 しばしおやすみの介~。 zzzzzzzz~。 ガチャーン。 ウトウトしかけたところで乱暴に鉄のドアが開く音がした。 ドカドカ足音がして何人かが入ってくる気配がある。 「マコちゃ~ん。どこですかぁ~?」 「マコちゃ~ん」 ん?誰かがオレを呼んでいる? 「ヤリマンちゃ~ん」 「おい、女じゃねえんだからヤリマンじゃねえだろ」 「え?ヤリチン?それも違うか」 「ガバマン?殴りてえ~」 ゴイーンと鉄のドアを蹴ったような音がして、ゲラゲラゲラっと三人ぐらいの男子が弾けて笑う声。 なんだなんだ? なんだかテンション高くて声大きいんですけど。眠れねえじゃん。 「あれ? 誰もいないじゃん。カギ開いてんのに」 「なんだよ。やっぱウソじゃん」 「だからダマされてんだってオマエ」 「おっかしいな~。高橋が言ってたんだよ。やらしいことできるって」 やらしいこと?なんだそれ。

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