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第34話 『血まみれでも きみは うつくしい』

「マジナカ~、オマエらどこ行ってたんだよ~」 「おう佐藤、勉学に励んでたか?」 寄ってきた佐藤の額を指ではじく。 「イタッ。なに上機嫌だよ真島は」 「いや、んな事ねえよ」 って、ああ。 こっち見てる灰谷の顔……。 あれはちょい心配してんな。 席にすとんと腰を下ろしてチラリと後ろをふり返れば、灰谷と目が合った。 なんかあったんじゃねえだろうな……みたいな顔。 あ~この顔好きだ。ってそれはいいからオレ。 「今日いい天気だよな。中田とぼや~っとして来たわ~」 すっとぼけて言ってみたけれど、ふ~んみたいなイマイチ納得していない様子。 まあオレ、授業サボったことないもんな。でも、中田の色々は言えねえし……。 「真島独り占めして悪かったな」って言いながら、中田はからかうように灰谷の頬をペチペチと軽く叩いた。 「は?なんだそれ」中田のちょっかいに灰谷が無表情で返し、スマホを取り出し、またなんかシュッシュやり始めた。 やっぱ中田なんか気がついちゃってるんじゃね? 「ホントだよ、オレのダーリンだぞ中田」佐藤がオレを後ろからハグする。 なんだよこれ。仲良しクラブか!佐藤の手の甲をつねってやった。 イタタタタっ、大げさに痛がる佐藤。 「つうかオマエら、サボるんなら佐藤くんも誘えよ~」 「オマエは誘わねえ。何?革?」と中田が灰谷のスマホをのぞきこむ。 かわ?なんの川? 「なんだよ~。中田のいじめっ子」 「すねるなチェリー」 「チェリー言うな」 「あ、桜子(ようこ)と二人でお泊まりなんて・・・百万年早いからな!」 「なんでだよぅ~」 佐藤をからかう中田はもういつもの中田だった。 屋上でスマホを叩きつけてたなんて、とても思えない。 男だ。いや、漢と書いてオトコだ。 つうか、みんな色々あんだよな。 順調で中学生みたいなお付き合いしてる佐藤以外は。 「あ~~そういえば真島、これ」と仏頂面した佐藤が指さした方をみれば足元に紙袋。 中をのぞけばワンピース。マンガのほうね。 「あ、友樹、返しに来たんだ」 「おう。っていうかなんなんだよ~真島。ワンピの最新刊はオレがいつも一番だろ」 「え?ああ。ワリぃ。持ってけ佐藤」 「つうかアイツさあ~」プリプリしながら佐藤がオレの股の間に座ってくる。 「ちょ、オマエせまいって」オレが後ろから抱っこして座ってるみたいになってしまう。 「なんであんなに寄せにいってんの?」 「寄せ?何が?何を?」とワンピの新刊をさりげなく取り上げながら中田が訊けば、「友樹だよ!友樹。髪色髪型、真島に寄せにいってんじゃん」と佐藤が声を上げた。 ああ。そこね。 「リスペクトだってさ。オレのカリスマにみんな気がついてきたって感じかな」 サトナカマジの動きが止まる。 ・・・。 ・・・。 ・・・。 ・・・・・・・・・。 え?オレ、スタンド使って時を止めちゃった? 『時よ止まれ!世界(ザ・ワールド)!』 ♪キーンコーンカーンコーン 本鈴が鳴った。 時は再び動き出した!?  「中田、それ次オレな」 「ああ、今読んじゃうわ」って、席に戻っちゃうサトナカ。 え~。オール無視、ひどくねえ~。トリオ芸やめろ~って灰谷を見ればすました顔でまだスマホをシュッシュッてやってる。 昨日からなんなのスマホ命の現代っ子。 「シレーヌ、血まみれでもきみはうつくしい」とオレはつぶやいて黒板の方を向いた。 デビルマンの名シーンだよ。

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