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第33話 屋上で聞いたこと⑤
屋上のドアにカギを掛けて、ガーンと蹴るとカチリと閉まる音がした。
「へえ~そうやるんだ」
「そう。ちなみに開けるときはドアノブ握ってガンガンガンとひっぱる」
オレはやってみせた。
「おう。裏技」
「コレ、誰も知らねえから」
「お~う」
中田も一人になりたい時があるだろう。
さりげなく教えておく。
もう一回ドアを閉め直してから、オレは言った。
「中田、オレにできることがあったら、なんでも言ってくれよな」
中田はちょっと照れくさそうな顔をして、「おう~。ま、なんかあったらそん時は頼むわ」とオレの肩を叩いた。
まあ、できることなんてなんもないけどね。
たぶん中田は言わないだろうし。
でも一応。一応言っておく。
それぐらいしかできないし。
並んで教室に向かっているとブルブルッと中田のポケットの中でスマホの震える音が聞こえてきた。
あ~たぶん、杏子ちゃんの攻撃がまた、始まった!いかん!!
「あ~そうだ、さっき屋上にヘンなヤツらが来てさ~」
オレは見た事、じゃねえや、聞こえてきた事、例のマコちゃ~んのことなんかを中田に細かく話す。
「なんだそりゃ。うちの学校のやつで、マコって名前の配信者。女装コスプレイヤーがいるってことか」
「まあ、要約するとそうみたいだな」
「んで、なんかウリみたいなことやってると?」
「ん~……やらしいことって言ってたけどな。」
「やらしいこと。いいねえ~。やらしいって響きがいいねえ~」
中田がニヤニヤした。
「よっ、エロオヤジ!」
「ちげえわ。んで、気になるんだな」
「あ、いやあ~つうかマコってのがさー。まあ、自意識過剰だけど、まちがえられたらめんどくせえな、みたいな」
「……」
中田がだまった。なんで?
ハッ!
もしかして、オレが女装コスやるほど自分のことカワイイって思ってるんだなこいつって思われてるパターン?
「いやいや、まあ、ないよ。ないとは思うけどさ~オレ、カワイイじゃ~ん」
「……」
冗談めかして言ってみたけど中田はコチラをチラッと見たけど何も言わない。
え~マジか~。マジそう思われちゃってる~?
いやいやオレ、子供の時、女の子に間違えられてヤローどもに声かけられまくったトラウマがあんだよな。
だからなわけで。カワイイとかは微塵も……みじんこ……。
「いや、それ、ありえなくもねえな」
え? なにそれ。意外にも肯定から入ったよ? 入っちゃったよ中田きゅーん。
「なんかオマエ、最近モテてんじゃん」
ズバリ!みたいか顔で中田は言った。
! ! !
え?マジ?……よく見てんな。
そう。実はオレ、モテてんの。
教室の黒板に城島さんとホテルに入る後ろ姿撮られた写真を貼られて、
『女も男もイケるから』なんて言っちゃった日から……。
うん。言ったのはオレだけど。ただのアオリ文句だったわけで。
でも言った言葉が独り歩きしちゃてるみたいで。
誰でもOKって誘ったみたいになっちゃってるところがあるみたいなんだよね。
あからさまにキモって感じでさけられたりはないけど、なんか見られてるな、みたいなことは……ある。
連絡先書いてあるメモやら、告白めいた手紙やらが机の中とかカバンの中とか、知らぬ間に入っていたり、とかもある。
どこで調べたんだかSNSにDMとかも、ある。
オレ、一応アカウント作ってるけどロム専でほとんどつぶやいてねえのに。
まあ男子校だし、この中の何%かはそうなんだろうから、全然おかしくはないんだけどさ。
「いやまあ……実は……そうなんだけど」
「ちょっと調べてみるか」と中田は心配そうな顔をする。
「いやいや大丈夫だって」
杏子ちゃんのことでアレなのにオレの事でもアレしたら大変だ。
「まあ、なんかあったらすぐ言えよ」
「おう。つうか、オレのカレシか!」
そう返すと中田がオレの首に腕を巻きつけてきた。
「マコ、オレのこと本気にさせんじゃねえ。今夜は寝かせねえぞコラ」とチョークスリーパーをかけてきた。
「ノーノー」とオレは中田の腕をタップする。
プロレスコントしながら教室に戻ると、佐藤が飛んできた。
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