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第37話 雨のコンビニ③

ブチブチッ。 天井のスピーカーから、コンセントにささったケーブルを無理やり強く引き抜いた、みたいな音がした。 「あっ有線」と友樹がつぶやく。 店の中に流れていたBGMが止まってしまった。 「店長に言わないと」と立ち上がろうとした友樹に「雨風強いと止まる時あるんだ。たぶんアンテナの関係。しばらくしたら戻るよ」と教えてやる。 店長も慣れたものでバックルームから出てくる気配はない。 無音になった空っぽの店内で友樹と二人、アメリカンドッグをパクつくがすぐに食べ終わってしまった。 友樹と二人、窓の外をぼんやりと眺めた。 天気予報があたったせいか街には人っ子一人いない。 向かいの美容院は相変わらず無人だし。モスバの店員もカウンターの奥に引っこんでるみたいで姿が見えない。 オレはなんとなく店内を見渡す。 ギュウギュウに商品は並んでいるのにやっぱり無人の店内。 SFみたいだな。 なんか天変地異かなんかあってさ、友樹と二人だけ取り残される。 なぜだか繋がったままだった有線もとうとう切れて。 店の中のものを食いつぶせば当分暮らしていけそうだけれど、その先はどうなるかわからない。 雨風にすっぽりつつまれて、ここは静かで。 ただ窓の外を眺めるだけなんだよな。 「なぁんか……」 友樹が小さな声でぽつりとつぶやいた。 「深い深い森の中の木のうろで、雨宿りしてるリスにでもなったような気分ですね」 オレは思わず友樹の顔をみつめた。 友樹も静かな澄んだ目でオレをみつめかえした。 真逆のようでどこかつながっているような気がした。 静けさと閉塞感。 淋しさとやすらぎ。 そうなんだ。 友樹とはふとした瞬間、同じようなものをイメージしているなって思う時があって。 なんか同じような感覚を共有している感じっていうか……。 不思議だな。 あんまりオレが見つめるからだろう友樹が首をかしげ、頭の上に?マークが浮かんでいるのがわかった。 「や、ごめん。なんでもない」 こういうのなんていうんだろうな。 出会ってはじめましてから、友樹とはお互いだまってても全然平気なんだ。 灰谷といる時ももちろんそうなんだけど。それとはちょっと違う。 お互い違うものを見ながら、それでも同じ空間にいるのと、似たようなものを見ながら同じ空間にいる事の違いとでもいうか。 なんだろうな、これ……。 友樹は気がついているのかいないのか。 いや、オレだけなのかな? この感覚。

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