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俺たち登場!(01)
皆様、この残暑如何お過ごしでしょうか。
窓から流れ込む乾いた風に少し伸ばした前髪が揺れ、目を細める。
校庭を動く雲の影を何気無くを見ているうちにホームルームは終わったらしい。
「ナチー!帰り暇だったらハルんち寄ろーよ」
帰ろうとカバンを持ち席を立つと、ちっこい奴が教室の入り口から大声で俺を呼んだ。
扉の向こうにも数人居るようだが、それが誰かなんて見なくても見当はついている。
「おー」
返事をして扉へ向かうと、ちっこいミヤは驚いた顔をした。
「……ナチ、暇なの?サヤちゃんは?」
「かっこいいバンドマンとデートだって」
「お前ら、相変わらずだな」
ミヤの後ろからハルが口を挟む。大きなお世話だ眼鏡野郎。
中学の頃から付き合っているはずのサヤとは、高校に入ってからずっとこんな感じだ。
進学とともにメキメキと男好きな性格を発揮しだしたサヤは、その可憐な見た目も相まって遊び放題。
かと言って俺がそれを咎めることもなく、むしろ俺も遊び放題。
はっきり言って気楽だ。好きとか嫌いとかそんな感覚もとうになく、遊び疲れたら帰ってくる場所。
そんなサヤは今はバンドマンに夢中な様だ。
前にプリクラを見せてもらったが、なかなかのイケメンだった。
「お前ら皆揃って暇なわけ?」
廊下に揃った顔ぶれに苦笑がこぼれる。
ちびで元気っこなミヤ、眼鏡野郎ハル、女顔のくせに性格は男前なウミ……こいつまた頭の赤メッシュ増えてやがんな。
そして携帯を打ちながらだるそうに立つシュウ。
「テスト前で部活ねえんだよ!」
馬鹿にするなとでも言うように噛み付くウミを宥める。
大丈夫、忘れてるかもしらねえけど俺も暇だから。
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