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第4話

じゃあ一緒に寝るか」 そういうと弟はニコニコしてぴょんぴょんと飛び跳ねる。 なんて可愛い生き物なんだろう。その姿を見ていると、口角が自然に上がる。 ベッドに入り、向かい合うような体勢になり、弟を腕の中に抱き込む。 弟は俺の胸板に顔をくっつけて、幸せそうに笑っている。 母親と幼い頃に死に別れてしまったから、愛情や人の温もりに飢えているのかもしれない。これからは俺が弟を大事にしよう。そんな思いでふわふわの髪の毛を撫でていると、胸の辺りに違和感を感じた。 「は、えっ……?」 間の抜けたような声が出てしまう。すでに眠っているようだが、母親と間違えているのか弟がチュパチュパと服の上から右の乳首に吸い付いていたのだ。 ちょっとむずむずするが、愛情が不足している子どもは乳離れが遅いと聞いたことがある。 夢の中で母親に甘えているのかもしれない。 正直くすぐったい。でも寝入ったばかりの幼子を起こすのは気が引ける。ここは我慢するしかない。 けれど。 「んぁ……っ」 初めはくすぐったいだけだったはずなのに、しばらくすると身体が快感を拾い始めてしまう。 寝巻き用の薄い生地のTシャツは、小さな舌で何度も吸われているうちに唾液で濡れそぼり、生地がぴったりと張りついてしまった。 濡れた生地の上から与えられる刺激は、直接肌に与えられるそれとはまた違った気持ちよさがある。 小さな舌が巧みに動いて乳首を刺激する。きっと女性ならこの刺激で乳が出るのかもしれない。 やはり無意識に赤ちゃん返りしているのだろう。そう思うと無理に顔を離すことも躊躇われる。 「あっ……やっ……ん……」 思わず声が出てしまって、口を手で覆う。ぴちゃぴちゃ、チュパチュパ、じゅうっとさまざまな音を立てて乳首を吸われ続けるうちに、いつの間にか先端がぷっくりと勃ってしまい、さらに舌の動きに敏感になる。 気づけば、触れられていない左側までも同じようになっている。どうにも我慢できなくなり、自ら左側をくりくりと指で弄ったり、手のひらでころころと転がしたりしてしまう。 「あふっ…ふぅんっ…あっあっきもちぃ…」 気持ちよすぎて、身体が反る。快感を逃がそうともじもじと太ももや足先を擦り合わせているうちに、中心が熱を持ってどんどん硬度を増していく。 最悪だ。 母親を求めて弟に乳首を吸われただけなのに、身体中が興奮してしまっている。 ヒートが明けたばかりだから、まだ敏感なのだろうか。 休みなく与えられる右胸への刺激に合わせて、左側へ自分で与える責めもどんどん激しさを増していく。 「あぁっ、あっあっあっあっやっ、いくっ!」 弟が寝ているというのに、胸への刺激だけで果ててしまった。荒い息を整え、ゆっくりと息を吐く。  気づくと弟の口の動きも止まっていた。 そっと弟の身体を離すと、汚してしまった下着やボトムスを取り替えるために静かに起き上がる。 身体ももう一度洗った方が良さそうだ。 それにしても、なんて淫乱なんだよ#単語__ルビ__#あすか飛鳥は。前世の俺はわりと淡泊な性質だったはずなのに。 複雑な気持ちで洗面所へ向かう。この家は高級ホテルのような作りになっていて、バスタブのある浴室とは別に、洗面所にはガラス張りのシャワールームが設置されている。 できるだけ音を立てないように洗面所のドアを開けると、シャワールームの扉を開いた。 温かなお湯を浴びていると、浅ましい自分の欲も一緒に流れていくような気がして心地よい。 桃の香りのする高そうなボディーソープを流し終えた瞬間、洗面所とシャワールームのライトが突然消え、真っ暗になった。 「えっ、停電した?!」 シャワーヘッドから流れ出るお湯は温かいままなので停電ではなさそうだ。しかし真っ暗闇の中、全裸でいるのはやはり心許ない。 手探りでシャワーを止めようとした瞬間、強い力で背後から抱きすくめられた。 突然の出来事に、全身が恐怖で凍り付く。 俺も小さい方ではないが、相手の胸板に俺の後頭部が触れている。相手は俺よりかなりデカい人物だ。抵抗しても勝てない可能性が高い。 強盗? それともストーカーの類だろうか。さまざまな可能性が頭を駆け巡る。 すると、胸と腹に回っていた男の手が不埒な動きを見せた。 「やめろッ!」 抵抗しようともがくが、男はびくともしない。色白の引き締まった腕が、暗闇の中ぼんやり光っている。 それでも、こんなところで見知らぬ男に身体を許すわけにはいかない。 抵抗を諦めずにジタバタしていると、さらに強く抱き込まれた。 「飛鳥。逃げないで。僕だよ…」 「え……」 耳慣れた甘く掠れた声を聞いただけで、腰が疼きだす。 「なん、でっ……。もっ、ヒート、終わった、の、にっ……」 男は耳を甘噛みしながら、囁く。 「僕は知ってるよ。あのガキに触らせただろ? 浮気はダメだよ、飛鳥……」 3ヶ月に一度のヒートにしか会うことができないはずの、俺の運命の番。 昨日まで俺を抱き潰していた男の声だった。

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