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第三章 揺れる心(5)

「息を吐け」 「んんっ……はぁぁ……」     月城はまだ誰の侵入も許したことのない隘路を小刻みに揺らし、決して最奥へと急ぐことはない。それどころか上条を背後から抱き締めて、軽く頭髪を掴み頸に濃厚な愛撫を仕掛けた。幾分規格外の昂ぶりを受け入れた内壁は少しずつ押し拡げられていくが、上条の苦悶した表情が崩れることはなかった。灼熱の痛みに耐えていた体は汗がじっとりと浮き上がり、浅い息を繰り返す。 「……いた……ぃ……もぅ……」 「痛いのは今だけだ、そのうち癖になる……ほら、もう濡れてきている」  上条の弱音に応えるかのように月城の愛撫が濃厚になっていく。白い肌にいくつもの鬱血痕と愛咬の痕が刻まれ、巧みに弄られていた前からも雫が滴った。合間にどこまでも甘く艶めいた月城の囁きが、上条を狂わせる。ジュブジュブと淫らな水音を立てて月城を受け入れていった。痛みに混じって感じる痺れと熱い疼きに自然と声が零れ落ちた。 「……っ…ああ……はぁ……」    疼きが濃厚になるにつれて、襞がうねるように月城を迎え入れる。強張りが薄らいだのを見計らい最も弱い箇所を的確に抉られて、堪らず上条は歔欷の声をあげた。ローションだけではなく上条自身の欲望から排出された音なのだと自覚し、卑猥な水温に耳を塞ぎたい衝動にかられた。 「他のことを考えるなど、余裕だな……」  いったん引いた腰を、最奥まで突き上げられて上条は仰け反った。 「ひゃっ……あっああーー」  腰の動きが激しくなるにつれて、熱い楔を受け入れた内壁は収斂し、襞が大きくうねり締めつける。月城が微かに呻いたが、余裕のない上条は熱に浮かされ気づく様子もない。ただ甘く淫蕩な痺れに眩暈を覚え、貪欲に月城を締めつけるばかりだった。 「もう少し、力を抜け……。それでは、おまえの望みが叶えられないだろ」  月城の掠れた声が嗜める。  いつの間にか萎えていた上条の下半身も頭を擡げ、月城が触れていないというのに屹立し鈴口からは蜜が溢れ落ちていた。上条の腰を鷲掴みにして引き寄せ、抽挿は猛獣の荒々しいものへと変化する。魂ごと揺さぶられ貪られる。指の比ではない雄の証がもたらす悦楽に上条は翻弄されていった。 「んぁ……ああ……んん………はぁ……達く……っ」 「堪え性がない……な」    意識が朦朧とし今や愉悦に呑まれ、なりふりかわまず腰を揺さぶり快楽だけを追う。普段の上条からは想像もできない壮絶な乱れようだった。        

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