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男たるもの

 道すがら、場野くんの家に行く本当の目的を聞かされた。言われて見れば、2人とも昂りを抑えきれていない。僕に拒否権など無いことを悟り、背筋を冷たい汗が伝った。  もう既に、行為に対しての嫌悪感など失っていた。それどころか、困惑と恥じらいと共に、あの快楽への期待で下半身が反応していた。  場野くんの家にお邪魔して数分、早々に僕の洗浄が始まった。 「待って、ヤダよぅ····。ねぇ、ホントにするの? ヤリ比べなんて····あんっ」  浴室に、僕の情けない声が反響する。慣れない刺激に、声を抑えることなんてできない。既にトロットロを通り越して、デロッデロになってしまった。  洗浄を終えると例の如く、場野くんにお姫様抱っこでベッドに運ばれ、そっと極甘のキスをされた。 「んっ····あっ、やだ、りっくんがいるのに····」  黙れと言わんばかりに、喉まで舌を這わせる。場野くんの舌は僕よりも長くて大きい。僕は口内を犯され始めると、呼吸ができなくなってしまう。 「そのりっくんとも今からヤんだろ。むしろ見せつけてやろうぜ。はぁーっ······殺してぇくらい嫌だけど。お前に選択肢を与えないのは、フェアじゃねぇって莉久が言うからよぉ。お前もマジでちゃんと選べよな」  なんて、苛つきながらも場野くんは、優しく丁寧にお尻をほぐし続ける。声を必死に抑えているけど、意地悪な場野くんはイイ所ばかり擦ってくる。  洗浄の時だって、何度イかされただろう。こんなの、我慢出来るわけないじゃないか。  それにしても、いつ間に莉久って呼ぶようになったんだろう。いがみ合っているのか、仲が良いのか分からない。 「俺も嫌だけどね。目の前でゆいぴが俺以外の男とヤんの見るとか、ホント地獄だよ。てゆーか、俺もゆいぴのナカ綺麗にしたかった!」 「っざけんな! 嫁を他所の男に任せる旦那がどこに居んだよ」  僕が、あんあん喘いでいる横で喧嘩している。ムードもへったくれもない。なのに、イキまくっている自分が信じられない。 「んっ、ふぇ····もう始まるのぉ? が、頑張ります」 (待てよ。て事は、僕は2人の相手をするって事だよね。これ、僕のお尻死ぬんじゃないの?) 「何も心配すんな。お前は気持ち良くなってりゃいいから」  僕に話しかける時だけ、おそらく無意識に声色が甘くなる。そういう“特別”に気づいてしまうと、胸の高鳴りが天井なしに跳ね上がる。  場野くんは、不安を掻き消すように、深いキスで僕を満たす。それだけで、脳が蕩けちゃうんじゃないかってくらい、ふわふわして腰が砕けてしまった。 「ゆいぴ、エロ過ぎない?」 「こいつ、こんなもんじゃねぇぞ」 「マジか。ヤバいな。俺の番まで待てないよ···」 「ふざけんな。指咥えて待ってろ。勝手に触んな」 「ひゃぁぁっ」 「おいコラ! てめっ、誰が結人の指咥えていいつったよ!?」 「あぁんっ! 場野くん、指っ····激しぃよ」 「ん。いいぞ。1回イッとけ」 「や····んんっ、ひあっ····あっ、やぁぁぁん」  僕は、言われるがまま達してしまった。それでも、場野くんの指は、僕を休ませてはくれない。 「やだぁ····イッたからぁ····んっ、ちょっと待って····」 「今日は休みなしだ。あんま時間もねぇだろ?」  そうだ。あんまり遅くなると、母さんが心配してしまう。少し正気を取り戻したところで、場野くんが何かをコリコリし始めた。 「やだっ、何!? それぇ····コリコリって、あぁぁっ」 「これかぁ? 気持ち良いだろ」 「うん、それ凄いよぉ····。んあぁっ、また出ちゃっ、ひぅぅん」 「あー····ゆいぴ、やっば。えっろ····」  りっくんが僕の指を舐めるのをやめない。  指と指の間を舐められて、くすぐったいのか気持ちいいのか分からないけど、嬌声をあげてしまった。 「やぁん! そんなとこ舐めちゃやぁっ」 「勝手してんじゃねぇぞ。コイツ余裕ねぇんだから余計な事すんな。大人しく待ってろ」 「心狭いなぁ。ほんっと彼氏ヅラ腹立つわ」 「彼氏だからな。よし、そろそろ良いか····。結人、しっかり息しろよ」 「んぇ? 息ぃ····? ふぅっ····んっ、やぁぁぁっ」  四つ這いにさせた僕のお尻に、ガッチガチのモノをぐりぐりと押しつけて馴染ませると、この間よりも一気にずぷっと押し込まれた。  息をしろと言われたが、挿れられただけでいっぱいいっぱいなのに、できるワケないじゃないか。こんな状態で、どうやって息をしろと言うんだ。 「ねぇゆいぴ、キスしてていい?」 「おい、キスはすんな。それは俺だけだ」 「ケチくさいこと言うなよ」  僕に拒否権など無く、場野くんの制止も無視して、りっくんは僕の口を蹂躙し始めた。 「ゆいぴ、キス慣れてないんだよね。いっぱいいっぱいな感じが可愛い。萌え死ぬ」 「てめぇ、そのままマジで悶え死ねや。いや、後で俺が殺す」  場野くんの、僕のお尻を鷲掴みにする指に力が入る。 「やっ、場野くん····お尻掴んじゃやだぁっ」 「悪ぃ、痛かったか?」 「ううん、気持ち良ぃ····のかな? んっ····わかんないよぉ」 「はんっ、痛いのもイイんかよ。ドMだな」 「ちがっ、違うもんっ! ドMなんかじゃ····ああぁん、ないのにぃっ」 「ぉーし、もうちょい頑張れよ。奥まで挿れんぞ····んっ」 「ん゙ぁ゙あぁぁっ····もっ、無理····そんなに奥まで、ダメだよぉ」  場野くんのが僕の奥深くに入った。奥のダメな所まできているような感覚で、少し怖くなる。 「やんっ、激しっ····あぁああ」  場野くんがラストスパートをかける。速いピストンの度、腰を打ち付けられる僕のお尻が波打つ。 「うーっわ、エロすぎでしょ····。」  りっくんは僕の口を犯すのも忘れ、眉間に皺を寄せて茹でダコみたいになっている。 (りっくんこそ、凄くえっちな顔してるんだけど····) 「んっ、ふぅっ····イクぞ、結人」 「あんっ、あっ····僕も、僕も····やぁっ、イクぅぅ」 「あー····ゆいぴ、もしかしてナカでイッた? 出てないよ。んあ〜〜〜っ····最高すぎんだろ······」 「ふぇ? うそ····僕····こんな····お尻でイッちゃうなんて····やだぁ」 「気にすんなよ。可愛かったぜ」  場野くんは、髪をかきあげながら言う。全然嬉しくないけど、カッコイイから動悸が治まらない。 「そうだよ、ゆいぴ。すっっっごく可愛かったよ」  僕から尊厳をペリペリと削ぎ取っていく、鬼畜2人の所為で正気に戻った。 「可愛くなくていいの! 僕は逞しくて男らしくて、カッコよくなりたいの!」 「男らしく······ねぇ」  場野くんが憐れむような目で見てくる。 「やだ····ゆいぴが可愛くなくなるなんて耐えられない······」  りっくんは本気で嫌がっている。  僕だって男なんだから、カッコいいって言われてみたい。毎朝、鏡を見る度ゲンナリしている。  小柄で筋肉がつきにくくて、女顔だし髪は猫っ毛でふわふわだし。僕の理想の男像とは正反対だ。  僕が憧れる男のイメージは、まさに場野くんなんだけど、悔しいから絶対に教えないでおこう。 「つーかよぉ、お前の男の理想象って、俺じゃねぇの?」 「······っ!」  心を読まれていたのかと焦って、言葉が出ずに口をパクパクさせてしまった。 「お前それ、餌に集ってくる鯉みてぇ」  場野くんは腹を抱えて笑った。 「ゆいぴは鯉でも可愛いよ。むしろ可愛い」  りっくんの“可愛い僕メーター”は振り切ったままらしい。僕は鯉じゃねぇわ! 「さぁ····じゃ、次は俺とだね」  りっくんはそう言うと、いつの間にやらギンッギンにおっ勃てたモノを隠しもせず、座っていた僕を押し倒した。 「おい、ちゃんとゴムつけろよ」 「わかってるよ。当然だろ。ゆいぴを誰よりも大事にしてきたの、俺だからね。 ゆいぴ、今度は俺が悦くしてあげるからね。あ、顔隠さないでよ」  僕に覆いかぶさり、整った顔で見下ろされて、恥ずかしくて堪らず枕で顔を隠した。が、すぐに剥ぎ取られてしまった。 「ゆいぴ、挿れていい? あーごめん、待てないや。挿れるね」 「クソッ」  場野くんは、僕達に背を向けて煙草を吸い始めた。僕の為に、辞めたはずじゃなかったっけ? 「んっ、あっ、りっくん····はぁっ····いきなり、激し····んあぁっ」 「あぁ····ゆいぴ····んっ、ゆいぴと繋がってるなんて夢みたい。ホント可愛い····大好きだよ」 「そんなの、今言っちゃ····だめぇ····も、イッちゃう····」 「早くない? そんなに気持ち良いの? んはっ♡ 俺がいっぱいイかせてあげるね」  場野くんの、段階を踏んで攻め入って来るのとは違い、りっくんはぐりぐりと抉るように、一気に奥まで押し込んでくる。  場野くんのとかわらない大きさで、お腹まで苦しくて、イッてるのか何なのか自分の身体なのにわからない。それを怖いと思うのに、もっと限界を超えて気持ち良くなりたいと思う自分もいる。僕は我儘なんだろうか。 「んあっ、ひぅっ、イッちゃうよぉ····やぁぁぁん」 「俺もイクね。ゆいぴのナカでイクよ····んっあっ····んんっ」  僕の上に倒れこんできたりっくんの重みで、うまく息ができない。 「おい、結人が苦しいだろうが。早く退け。終わったんなら離れろ。秒で離れろ」 「余韻も何も無いじゃんか····」 「場野くん······僕、動けない······」 「結人はいいんだよ。無理すんな。俺が後始末してやるから、ちょい寝てろ」 「ふぇ~····うん、ありがと······」  僕はそこで事切れた。いや、眠りに落ちた。 ***  場野と莉久は、文句を言い合いながらも片付けを急いだ。 「ゆいぴ、20分で起こさないと」 「わーってるよ。帰らさねぇとだろ。結人は俺がやるから、お前ベッドやれよ」 「だーっ、偉っそうに····なんかムカつくけどわかったよ! 俺もゆいぴ綺麗にしたかった!」 「うるっせぇな。結人が起きんだろ。静かにちゃっちゃとやれよ」 「ほんっとムカつく····」  2人はテキパキと動き、ものの数分で完璧に片付け終えた。結人を起こすまで、あと十数分──。

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