20 / 350

夏休みの醍醐味って最終日の宿題だよね

 あと2日で夏休みが終わる。朝晩が過ごしやすくなってきた、そんな日の深夜の事。午前1時、僕のスマホが鳴り響いた。 「もひもひぃ····」  寝ぼけ眼で、相手も確認せず電話に出た。 「結人ぉぉぉぉ!! 助けてぇぇぇぇ!!!」  耳を劈くような、甲高い泣き言が聞こえた。反射的に、電話を耳から離した。 「え、誰······あっ、啓吾? どうしたの? 大丈夫!?」 「ヤバいんだよ。マジで····」 「何!? どうしたの!? 僕にできることあるかな····えっと、八千代呼ぶ?」 「場野も呼ぶ。や、莉久と朔も呼ぶ。じゃないと終わんねぇよ····」 「終わらないって、何が?」 「············宿題」 「は?」 「夏休みの宿題、終わんねぇんだよぉ~」 「······おやすみ」  僕の睡眠時間を返してほしい。スマホはマナーモードにして、朝までゆっくりと眠った。  時計の針が午前9時48分を示す。ゆっくり寝たなぁなんて思い、スマホを見て驚愕した。着信履歴が100件を超えていたんだもの。 「ぅわー····。こんな暇あったら、宿題進めればいいのに····」 「だよねぇ~。ホント啓吾ってバカだよね」 「だね~······? ひゃぁ!! りっくん!? なななな、なんで居るの!?」  枕元に置いていたスマホを、うつ伏せになって確認していると、背後から耳元へふわっとやって来た。りっくんの重みでベッドが軋む。何故だか、それだけの事にドキッとした。 「おばさんにあげてもらったんだけど、ゆいぴが気持ち良さそうに寝てたから起こせなかったんだよ」 「そ、そうなんだ。えっと····ごめんね?」 「ううん。可愛い寝顔眺めてたし、凄く幸せな時間だったよ。ゆいぴ、1回寝たらなっかなか起きないよねぇ」 「ん? そうなの?」 「だよ~。だってホラ、ここ。こんなに解されてても、全然起きないんだもん」  りっくんが、ズボン越しに僕の穴を指でフニフニする。そこで初めて、少し湿っていることに気づく。 「んひゃぁっ! えぇっ!? 何? 僕が寝てる間に何したの!?」 「悪戯しちゃった。寝てても可愛い声漏らしてたよ? おかげでここ、大変だぁ」  りっくんは僕の手を掴むと、自分のモノに触れさせた。ジーンズ越しにわかるほど、硬く大きくなっている。 「やだ、ちょっと····ダメだよ。下に母さんが居るのに」 「大丈夫だよ。おばさん、お友達に誘われたから買い物に行くって。ゆいぴに伝えといてって言われた。夕方には帰るからってさ」 「そうなんだ。····ってことは······」 「俺とゆいぴ、2人きりだね」 「あはは。だね······ダメだからね」  りっくんが言わんとする事なんて、手に取るようにわかる。 「大丈夫だって。俺も洗浄してみたかったんだ~。手順は場野がやってるの何回も見てたからバッチリだよ」  りっくんは意気揚々と親指を立てグッドサインを見せつけると、軽やかにウインクをした。ぐぅぅ、可愛いのにかっこいい。それと、知らなかったけど、ちゃっかり見ていたんだね。 「そういう問題じゃ──んんっ」  りっくんが、僕の頬を包み、無理矢理深いキスをしてくる。こんなに激しくされると、脳が蕩けたようにふわふわになってしまう。 「ふぅっ····んっ、あっ····待っへ、息····苦ひぃ····」 「んぅっ····フゥー······おいで」  ようやく顔を離してくれたりっくんは、僕の手を優しく引き浴室へ連れ立とうとする。しかし、りっくんの聞き慣れないとびきりのイケボを耳に流し込まれて、腰が砕けてしまった。 「た、立てないよぉ」 「ふはっ。仕方ないなぁ····ヨッと」  りっくんにまで、軽々とお姫様抱っこされてしまった。 「さぁ、姫。今から俺が、グズッグズにしてあげるからね」 「ふぁぁっ。耳元でそんな事言わないでぇ」 「やだよ。トロントロンのゆいぴ、可愛すぎるんだもん」  りっくんは嬉しそうに、僕を隅々まで綺麗に仕上げてくれた。終始息の荒いりっくんにつられ、僕まで息が上がってしまう。  いつも通り立てなくなってしまった僕を、りっくんがまた、お姫様抱っこでベッドへ運んでくれた。 「りっくん、りっくん····」  胸を掻きむしりたくなるような、ざわつきと高鳴りを抑えようとりっくんを求め手を伸ばす。既にトロけていることは自覚している。こうなってしまうと、誰かに触れていないと気が狂いそうなんだ。 「ん、大丈夫だよ。ちゃんと居るよ」 「うん。あのね、お尻のね、穴がね、きゅうきゅうするの。どうしよぉ····」 「あぁ····それはねぇ、俺のを欲しがってるんだよ」 「ふぇ? そうなの? じゃぁ、早く挿れてぇ」 「いいよぉ····ちょっと立てる? お尻、俺に向けて、そう。わぁ····トロットロ。いい? 挿れるよ····」 「あっ····んんっ····おっきいよぉ。押し拡げて、入ってくるの····すご······もっとぉ···ひぁぁんっ、深いよぉ······やぁん」 「ゆいぴ、もっと奥、良い?」 「いいよぉ。僕の一番奥のね、ダメなとこ入ってきてぇ····。お願い、莉久ぅ」  自らお尻を左右に引っ張って開き、りっくんが奥まで挿れ易いように、お手伝いをしてみた。 「くっ····煽るの上手だねぇ。そんなだから、みんな結人に挿れたくなるんだよ」  りっくんのモノが、僕のナカでさらに大きくなった。 「やぁ、急に結人って呼ばないでよぉ····」 「なんで? 恥ずかしい? 結人も俺の事、莉久って呼んでくれたじゃん。ははっ。ここ、きゅうって締まるんだけど」  りっくんは、結合部を指でなぞりながら言う。後ろから突かれているから顔は見えないけど、きっと意地悪な顔をしているに違いない。 「やだぁ····撫でないでっ、んんっ、イクイクイクッ! イッちゃうよぉ! 待って激しすぎぃっ、んあ゙ぁっ」  僕の制止などお構い無しに、強く腰を打ち付け続ける。その音が部屋に響き、妙な恥ずかしさが込み上げる。  りっくんは、僕がどれだけイッてへばっていようが、自分がイクまで容赦なく奥を抉ってくる。 「ゆいぴの余裕のない声、すっごい好き。ねぇ、莉久って呼んで。俺の名前呼びながらイッて」 「あっ、あんっ、イッ····り、莉久、莉久ぅ····イクよぉ、イッちゃうよぉ。キスして、莉久。ちゅぅ──」  振り向いて、夢中でキスを強請る。りっくんは赤らんだ顔で無表情のまま、僕の両腕を引っ張って上体を起こさせた。片手で顎を掴み、激しく口を吸われる。抱きしめられているようで、安心感が湧き上がった。  親指で頬を押され、さらに後ろを向かされる。少し首が痛いが、それどころではない。絡ませてくる舌が激しさを増す。  グイッと顎を持ち上げると首筋を舐め、ちゅぅっと吸われた。そこでようやく、りっくんに笑顔が戻った。 「──んっ····ヤバいね。涙目のゆいぴ、エロすぎだよ。んっぁー····俺も、イクよ。結人、イクッ····んんっ」  僕のナカに全てぶちまけたりっくんは、満足気に僕に覆い被さる。 「お、重い····」  僕は、必死にりっくんを転がし下ろした。ふと目が合うと、りっくんがだらしない顔で笑った。 「んへへ~····初めてだね。2人きりでヤんの」 「そ、そうだね····りっくんのバカァ······」  改めて言われると、途端に恥ずかしくなる。真っ直ぐ見つめてくるキラキラした瞳に耐えきれず、目を逸らしてしまった。 「目、逸らさないで。ゆいぴの目、大きくてキラキラしてて好き。目尻がシュッとしてるのに、ちょっとタレ目気味なのも、なんかえっちなんだよねぇ」 「そ、なっ、なんでそんな事言うの!? りっくんの方がえっちでしょ!」 「えー? ゆいぴのがえっちだよ~」  なんて、頭の悪そうな会話が暫く続いた。そして、お昼前に漸く、啓吾の事を思い出したのだった。  慌ててスマホを見ると、今度は八千代からの鬼電で凄く怖かった。勇気を出してかけ直すと、声だけで鬼の形相だとわかった。  りっくんの自転車の後ろに乗せられて、八千代の家へと急ぐ。まだ残暑厳しい8月後半。りっくんは汗だくで自転車を漕ぎ続ける。  首筋を滴る汗が妙に色っぽくて、濡れて透けたTシャツがまた、僕を無駄に火照らせた。  八千代の家に着くと、とても機嫌の悪い八千代が出迎えてくれた。中では、啓吾が朔に嫌味を垂れられている。 「大畠、お前······こんなギリギリで焦るとか、小学生かよ」 「わー、朔ったら辛辣····。何とでも言ってくれていいから、宿題進めてよ~」 「啓吾····全然やってないじゃん。今まで何してたんだよ」 りっくんが、啓吾の後ろからノートを覗き込んで言った。 「あぁっ!! 莉久! 結人も! やっと来たか! マジで遅せぇよ。コイツら厳しすぎんの〜! 助けてぇ結人ぉ」 「わー····ホントだ。各教科、数ページしかやってないね」 「どうせ、やり始めたらすぐに飽きたんでしょ。啓吾だし」 「「「あ~····」」」 「なんでそんな納得すんの? え、みんな俺の事なんだと思ってんの?」 「計画性のないバカだね」  りっくんがにっこりと即答した。 「とにかく、さっさとやっちまおうぜ。ほいで、結人以外はよ帰れ」 「あー! 場野、絶対この後ヤる気だ。俺もヤりたーい」 「お前はさっさと宿題終わらせろよ」 「朔ったら、ホントに辛辣····。わかったよ、本気出すもんね~」  こんな無駄なやり取りをしていないで、早く進めればいいのに。と、心の中で毒づいた。この日は結局、終えることができなかったので、翌日に持ち越される事となった。  来たる夏休み最終日。  朝からみんなで啓吾の宿題を進めている。と言っても、それぞれが得意な教科を教えるだけで、やるのは啓吾だから思うようには進まない。  夕方近くになって、漸く終えることが出来た。因みに補足だが、朔も成績はかなり良い方なのだ。 「お、終わったーーー!!! みんなマジでありがとう! 俺、無事に新学期迎えられるわ」 「良かったな。ところで、化学の自由課題はやったのか?」 「え····何それ」 「沢っち言ってたじゃん」  そう、我らがC組の担任である沢先生は化学の先生なのだが、思いつきで課題を出してくる事が多い。これも、夏休みの宿題に自由課題を出すと、学期末の授業で突然言い出したのだ。  テーマは『夏の暑さと心の熱さの化学反応』だとか。クラス全員の絶句した顔を見て、面白がってそれに決めたわけだ。本当に迷惑な話だ。 「待って待って。みんな、それマジでやったん?」 「あんなアホみてぇな課題、真面目にやるわけねぇだろ」 「俺は、それらしい事をノートに並べ立てただけだ」 「僕もテキトーに、それっぽい事書いただけだよ」 「俺、めっちゃ真面目にやったよ。面白いじゃん」 「あ、でもこれ、提出期限まだ先じゃん! 期日までにはやるわ」 「まぁ、いいんじゃねぇの? 大畠のだしな。流石に疲れたわ」 「ホンット、みんなありがとな! お礼にアイス買ってくるわ」  そう言って、啓吾は近所のコンビニにアイスを買いに走った。  数分で戻ってきた啓吾は、みんなに改めて感謝を伝えながらアイスを配った。選挙の挨拶みたいだなと思い、クスッと笑いがこぼれてしまった。  アイスを食べながら、今年の夏休みは過去最高に楽しかっただとか、来年してみたい事や行ってみたい所の話で盛り上がった。  来年は受験とかで忙しくなる事を、みんな今はまだ気づかないフリを通した。 「本当にね、今年の夏休みは、僕史上最高に満喫できたよ。初めての事、いっぱい経験できたし。皆のおかげだよ。ホントにありがと」  夏祭りに海、宿題の手伝いなんかを、こんなに楽しく幸せいっぱいで経験できるなんて、夢にも思っていなかった。  なんだか、とてもホカホカした気持ちになって、素直に気持ちを伝える事ができた。  この直後、邪な気持ちを募らせた狼たちが、夏休み最後の愛の交歓会に走るとは露ほどにも思わずに──。

ともだちにシェアしよう!