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夏休みの醍醐味って最終日の宿題だよね
あと2日で夏休みが終わる。朝晩が過ごしやすくなってきた、そんな日の深夜の事。午前1時、僕のスマホが鳴り響いた。
「もひもひぃ····」
寝ぼけ眼で、相手も確認せず電話に出た。
「結人ぉぉぉぉ!! 助けてぇぇぇぇ!!!」
耳を劈くような、甲高い泣き言が聞こえた。反射的に、電話を耳から離した。
「え、誰······あっ、啓吾? どうしたの? 大丈夫!?」
「ヤバいんだよ。マジで····」
「何!? どうしたの!? 僕にできることあるかな····えっと、八千代呼ぶ?」
「場野も呼ぶ。や、莉久と朔も呼ぶ。じゃないと終わんねぇよ····」
「終わらないって、何が?」
「············宿題」
「は?」
「夏休みの宿題、終わんねぇんだよぉ~」
「······おやすみ」
僕の睡眠時間を返してほしい。スマホはマナーモードにして、朝までゆっくりと眠った。
時計の針が午前9時48分を示す。ゆっくり寝たなぁなんて思い、スマホを見て驚愕した。着信履歴が100件を超えていたんだもの。
「ぅわー····。こんな暇あったら、宿題進めればいいのに····」
「だよねぇ~。ホント啓吾ってバカだよね」
「だね~······? ひゃぁ!! りっくん!? なななな、なんで居るの!?」
枕元に置いていたスマホを、うつ伏せになって確認していると、背後から耳元へふわっとやって来た。りっくんの重みでベッドが軋む。何故だか、それだけの事にドキッとした。
「おばさんにあげてもらったんだけど、ゆいぴが気持ち良さそうに寝てたから起こせなかったんだよ」
「そ、そうなんだ。えっと····ごめんね?」
「ううん。可愛い寝顔眺めてたし、凄く幸せな時間だったよ。ゆいぴ、1回寝たらなっかなか起きないよねぇ」
「ん? そうなの?」
「だよ~。だってホラ、ここ。こんなに解されてても、全然起きないんだもん」
りっくんが、ズボン越しに僕の穴を指でフニフニする。そこで初めて、少し湿っていることに気づく。
「んひゃぁっ! えぇっ!? 何? 僕が寝てる間に何したの!?」
「悪戯しちゃった。寝てても可愛い声漏らしてたよ? おかげでここ、大変だぁ」
りっくんは僕の手を掴むと、自分のモノに触れさせた。ジーンズ越しにわかるほど、硬く大きくなっている。
「やだ、ちょっと····ダメだよ。下に母さんが居るのに」
「大丈夫だよ。おばさん、お友達に誘われたから買い物に行くって。ゆいぴに伝えといてって言われた。夕方には帰るからってさ」
「そうなんだ。····ってことは······」
「俺とゆいぴ、2人きりだね」
「あはは。だね······ダメだからね」
りっくんが言わんとする事なんて、手に取るようにわかる。
「大丈夫だって。俺も洗浄してみたかったんだ~。手順は場野がやってるの何回も見てたからバッチリだよ」
りっくんは意気揚々と親指を立てグッドサインを見せつけると、軽やかにウインクをした。ぐぅぅ、可愛いのにかっこいい。それと、知らなかったけど、ちゃっかり見ていたんだね。
「そういう問題じゃ──んんっ」
りっくんが、僕の頬を包み、無理矢理深いキスをしてくる。こんなに激しくされると、脳が蕩けたようにふわふわになってしまう。
「ふぅっ····んっ、あっ····待っへ、息····苦ひぃ····」
「んぅっ····フゥー······おいで」
ようやく顔を離してくれたりっくんは、僕の手を優しく引き浴室へ連れ立とうとする。しかし、りっくんの聞き慣れないとびきりのイケボを耳に流し込まれて、腰が砕けてしまった。
「た、立てないよぉ」
「ふはっ。仕方ないなぁ····ヨッと」
りっくんにまで、軽々とお姫様抱っこされてしまった。
「さぁ、姫。今から俺が、グズッグズにしてあげるからね」
「ふぁぁっ。耳元でそんな事言わないでぇ」
「やだよ。トロントロンのゆいぴ、可愛すぎるんだもん」
りっくんは嬉しそうに、僕を隅々まで綺麗に仕上げてくれた。終始息の荒いりっくんにつられ、僕まで息が上がってしまう。
いつも通り立てなくなってしまった僕を、りっくんがまた、お姫様抱っこでベッドへ運んでくれた。
「りっくん、りっくん····」
胸を掻きむしりたくなるような、ざわつきと高鳴りを抑えようとりっくんを求め手を伸ばす。既にトロけていることは自覚している。こうなってしまうと、誰かに触れていないと気が狂いそうなんだ。
「ん、大丈夫だよ。ちゃんと居るよ」
「うん。あのね、お尻のね、穴がね、きゅうきゅうするの。どうしよぉ····」
「あぁ····それはねぇ、俺のを欲しがってるんだよ」
「ふぇ? そうなの? じゃぁ、早く挿れてぇ」
「いいよぉ····ちょっと立てる? お尻、俺に向けて、そう。わぁ····トロットロ。いい? 挿れるよ····」
「あっ····んんっ····おっきいよぉ。押し拡げて、入ってくるの····すご······もっとぉ···ひぁぁんっ、深いよぉ······やぁん」
「ゆいぴ、もっと奥、良い?」
「いいよぉ。僕の一番奥のね、ダメなとこ入ってきてぇ····。お願い、莉久ぅ」
自らお尻を左右に引っ張って開き、りっくんが奥まで挿れ易いように、お手伝いをしてみた。
「くっ····煽るの上手だねぇ。そんなだから、みんな結人に挿れたくなるんだよ」
りっくんのモノが、僕のナカでさらに大きくなった。
「やぁ、急に結人って呼ばないでよぉ····」
「なんで? 恥ずかしい? 結人も俺の事、莉久って呼んでくれたじゃん。ははっ。ここ、きゅうって締まるんだけど」
りっくんは、結合部を指でなぞりながら言う。後ろから突かれているから顔は見えないけど、きっと意地悪な顔をしているに違いない。
「やだぁ····撫でないでっ、んんっ、イクイクイクッ! イッちゃうよぉ! 待って激しすぎぃっ、んあ゙ぁっ」
僕の制止などお構い無しに、強く腰を打ち付け続ける。その音が部屋に響き、妙な恥ずかしさが込み上げる。
りっくんは、僕がどれだけイッてへばっていようが、自分がイクまで容赦なく奥を抉ってくる。
「ゆいぴの余裕のない声、すっごい好き。ねぇ、莉久って呼んで。俺の名前呼びながらイッて」
「あっ、あんっ、イッ····り、莉久、莉久ぅ····イクよぉ、イッちゃうよぉ。キスして、莉久。ちゅぅ──」
振り向いて、夢中でキスを強請る。りっくんは赤らんだ顔で無表情のまま、僕の両腕を引っ張って上体を起こさせた。片手で顎を掴み、激しく口を吸われる。抱きしめられているようで、安心感が湧き上がった。
親指で頬を押され、さらに後ろを向かされる。少し首が痛いが、それどころではない。絡ませてくる舌が激しさを増す。
グイッと顎を持ち上げると首筋を舐め、ちゅぅっと吸われた。そこでようやく、りっくんに笑顔が戻った。
「──んっ····ヤバいね。涙目のゆいぴ、エロすぎだよ。んっぁー····俺も、イクよ。結人、イクッ····んんっ」
僕のナカに全てぶちまけたりっくんは、満足気に僕に覆い被さる。
「お、重い····」
僕は、必死にりっくんを転がし下ろした。ふと目が合うと、りっくんがだらしない顔で笑った。
「んへへ~····初めてだね。2人きりでヤんの」
「そ、そうだね····りっくんのバカァ······」
改めて言われると、途端に恥ずかしくなる。真っ直ぐ見つめてくるキラキラした瞳に耐えきれず、目を逸らしてしまった。
「目、逸らさないで。ゆいぴの目、大きくてキラキラしてて好き。目尻がシュッとしてるのに、ちょっとタレ目気味なのも、なんかえっちなんだよねぇ」
「そ、なっ、なんでそんな事言うの!? りっくんの方がえっちでしょ!」
「えー? ゆいぴのがえっちだよ~」
なんて、頭の悪そうな会話が暫く続いた。そして、お昼前に漸く、啓吾の事を思い出したのだった。
慌ててスマホを見ると、今度は八千代からの鬼電で凄く怖かった。勇気を出してかけ直すと、声だけで鬼の形相だとわかった。
りっくんの自転車の後ろに乗せられて、八千代の家へと急ぐ。まだ残暑厳しい8月後半。りっくんは汗だくで自転車を漕ぎ続ける。
首筋を滴る汗が妙に色っぽくて、濡れて透けたTシャツがまた、僕を無駄に火照らせた。
八千代の家に着くと、とても機嫌の悪い八千代が出迎えてくれた。中では、啓吾が朔に嫌味を垂れられている。
「大畠、お前······こんなギリギリで焦るとか、小学生かよ」
「わー、朔ったら辛辣····。何とでも言ってくれていいから、宿題進めてよ~」
「啓吾····全然やってないじゃん。今まで何してたんだよ」
りっくんが、啓吾の後ろからノートを覗き込んで言った。
「あぁっ!! 莉久! 結人も! やっと来たか! マジで遅せぇよ。コイツら厳しすぎんの〜! 助けてぇ結人ぉ」
「わー····ホントだ。各教科、数ページしかやってないね」
「どうせ、やり始めたらすぐに飽きたんでしょ。啓吾だし」
「「「あ~····」」」
「なんでそんな納得すんの? え、みんな俺の事なんだと思ってんの?」
「計画性のないバカだね」
りっくんがにっこりと即答した。
「とにかく、さっさとやっちまおうぜ。ほいで、結人以外はよ帰れ」
「あー! 場野、絶対この後ヤる気だ。俺もヤりたーい」
「お前はさっさと宿題終わらせろよ」
「朔ったら、ホントに辛辣····。わかったよ、本気出すもんね~」
こんな無駄なやり取りをしていないで、早く進めればいいのに。と、心の中で毒づいた。この日は結局、終えることができなかったので、翌日に持ち越される事となった。
来たる夏休み最終日。
朝からみんなで啓吾の宿題を進めている。と言っても、それぞれが得意な教科を教えるだけで、やるのは啓吾だから思うようには進まない。
夕方近くになって、漸く終えることが出来た。因みに補足だが、朔も成績はかなり良い方なのだ。
「お、終わったーーー!!! みんなマジでありがとう! 俺、無事に新学期迎えられるわ」
「良かったな。ところで、化学の自由課題はやったのか?」
「え····何それ」
「沢っち言ってたじゃん」
そう、我らがC組の担任である沢先生は化学の先生なのだが、思いつきで課題を出してくる事が多い。これも、夏休みの宿題に自由課題を出すと、学期末の授業で突然言い出したのだ。
テーマは『夏の暑さと心の熱さの化学反応』だとか。クラス全員の絶句した顔を見て、面白がってそれに決めたわけだ。本当に迷惑な話だ。
「待って待って。みんな、それマジでやったん?」
「あんなアホみてぇな課題、真面目にやるわけねぇだろ」
「俺は、それらしい事をノートに並べ立てただけだ」
「僕もテキトーに、それっぽい事書いただけだよ」
「俺、めっちゃ真面目にやったよ。面白いじゃん」
「あ、でもこれ、提出期限まだ先じゃん! 期日までにはやるわ」
「まぁ、いいんじゃねぇの? 大畠のだしな。流石に疲れたわ」
「ホンット、みんなありがとな! お礼にアイス買ってくるわ」
そう言って、啓吾は近所のコンビニにアイスを買いに走った。
数分で戻ってきた啓吾は、みんなに改めて感謝を伝えながらアイスを配った。選挙の挨拶みたいだなと思い、クスッと笑いがこぼれてしまった。
アイスを食べながら、今年の夏休みは過去最高に楽しかっただとか、来年してみたい事や行ってみたい所の話で盛り上がった。
来年は受験とかで忙しくなる事を、みんな今はまだ気づかないフリを通した。
「本当にね、今年の夏休みは、僕史上最高に満喫できたよ。初めての事、いっぱい経験できたし。皆のおかげだよ。ホントにありがと」
夏祭りに海、宿題の手伝いなんかを、こんなに楽しく幸せいっぱいで経験できるなんて、夢にも思っていなかった。
なんだか、とてもホカホカした気持ちになって、素直に気持ちを伝える事ができた。
この直後、邪な気持ちを募らせた狼たちが、夏休み最後の愛の交歓会に走るとは露ほどにも思わずに──。
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