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千鶴さん、死す!?

 千鶴さんは鍵をかけると、僕をベッドに押し倒した。そして、猿轡とやらを着ける。なんという手際の良さだろう。絶対に初犯ではない手つきで、スルッと下を脱がされた。  慣れた手つきでお尻を弄る。朝までシていたから、ほどほどに緩んだままだ。 「へぇ。男の子でもこんなトロトロになるんだぁ。朝、すっごい気持ち良さそうだったよね。オレ、男は相手したことないんだけどね、結人くんには突っ込みたくなっちゃってさぁ~。1人になってくれてラッキーって思ってたんだぁ」 「ふぅっ····ひぁ······やぁ」  僕が怯えていようが、そんなのお構い無しで弄ってくる。怖くて声が出ない。いや、上手く出せないのだが。  八千代に似た顔でヘラヘラしている。細いのに、力では全く敵わない。後ろ手にネクタイの様な物で縛られ、お尻を突き上げたまま弄られる。八千代よりも指が長くて、コリコリを奥から引っ掻くように潰す。 「んっ、ヒィ゙ッ······ふぅ····」 「八千代たちが来たらヤバいからね、もう挿れるよ」  そう言って、千鶴さんが僕のナカに入ってしまった。 「う、ぁー····男の子のナカも気持ち良いねぇ。結人くんだからかな? すっごいトロットロで絡みついてくんね。どっこまで入るっかな~」  千鶴さんはどんどん奥まで入ってくる。遠慮も容赦もなく、まるでオモチャで遊んでいるかのように。  ふとした仕草や声が、八千代を思わせるからだろうか。震えてしまうほど怖いのに、僕の身体は快感を拾ってしまう。   「ふっ····ぅ····ひゃひほぉ····」 「ん? あぁ····八千代はねぇ、桜華が離さないよ。桜華は八千代が大好きだからねぇ。過保護なんだよ。小さい時からベッタリでさ。だからかなぁ····、八千代ってさ、桜華には結構甘いんだよね」  飄々と話す千鶴さんだが、目が全然笑っていない。滾っている時の皆と同じ目をしている。そして、腰の振り方が上手い。緩急をつけ、勢いだけでイかせるのとは違う、大人な感じだ。 「奥も柔らかいね。抜けるかな? 朝、八千代に抜かれてたよね?」 「ふっ····んーんっ······」  僕は首を横に振った。 「そっかぁ。嘘だよね〜。初めてじゃないならいっか。いいよね。奥、挿れるよ」  千鶴さんは、朔のと変わらない長さのそれで、僕の奥をぶち抜いた。嫌がる僕を恍惚な表情で見下ろし、奥の引っ掛かりで遊んでいるようだ。 「ゔぅっ····ふぅ、ん゙ん゙ん゙っ······」 「結人くんイキやすいねぇ。相当仕込まれてんだねぇ。可愛いなぁ····無理矢理犯されてんのにイッちゃうんだぁ。あははっ。悪い子だなぁ」  僕は必死に猿轡をどうにかしようとしたが、キツく留められていてズラせない。その間にも、奥をガンガン突き上げられ、イキっぱなしになってしまった。 「すんごいイクね。あ~っはは、噴けるんだぁ」  千鶴さんは楽しそうにイイ所を擦り、無慈悲にも噴かせ続ける。 「すーんごい締まるね。めっちゃ名器。ねぇ、ナカで出していい? あー·····ナカが嫌だったら、飲む?」  千鶴さんは猿轡を外し、出される場所を僕に選ばせる。外に出すという選択肢は貰えない。ナカよりはマシと思い、飲むと言った。 「やっぱナカは嫌だよねぇ。仕方ないなぁ····。飲むほうでもいいや。オレがイクまで突くから待っててね」  千鶴さんはそう言うと、全く加減などせず好き勝手に、奥をぐぽぐぽし始めた。 「壊れないかな? 大丈夫? あぁ〜、イキっぱ可愛いねぇ。もうちょいだからね。そのまま声我慢しててよ。んぁっ、奥すげぇな····。あは~。乳首抓ったらめっちゃ締まる〜。あーっ、イクよ。イクイクッ! 飲んでっ」  声を我慢って、手で口を塞がれているのだから出しようがない。  千鶴さんは勢いよく引き抜くと、僕の髪を鷲掴んで喉の奥にねじ込む。涙でぐしゃぐしゃな僕を見て、微笑みながら流し込んだ。  八千代が絶対にしないような妖艶な笑み方に、僕は得体の知れないゾクゾクを感じてしまった。  これまで未遂で済んでいた事が、奇跡のように思える。ついに、恋人以外の人と最後までシてしまった。僕のこのふしだらな身体は、罪深くも何度となくイッてしまった。汚されてしまった罪悪感に押しつぶされそうだ。 「あぁ~、ごめんね。もう泣かないで」 「やっ! 触らないでっ」  僕の頬に添えようとした手を、強く振り払った。手が痛い。すると、千鶴さんは困った顔でこう言った。 「バレたらオレ、八千代にマジで殺されちゃうから黙っててね?」  そんな事を言われたら言えないじゃないか。千鶴さんが死んじゃうのも嫌だけど、八千代に人を殺めさせてしまうのはもっと嫌だ。  千鶴さんが、泣き崩れている僕を綺麗に拭いてくれた。そして、いそいそとベッドを片している間に、僕は震える手で着衣を整えた。  片し終えた千鶴さんが突然、キスをしようとしてきたので思わず突き飛ばしてしまった。が、力負けしてベッドに倒れたのは僕の方だった。 「やだっ、それはダメッ!」  慌てて、両手で口を覆い隠す。 「純情だね~。耳は? 絶対耳も弱いでしょ」  千鶴さんは僕に跨り、耳に舌を挿れ、吐息混じりに喋る。 「はぁ····ちっちゃい耳ぃ····かぁわい〜」 「ひあぁぁっ····やらっ、いやっ、耳やだ、嫌いっ!!」  僕が咄嗟に『嫌い』と叫んだ瞬間、ドアがダァァンッと殴られた様な打撃音がした。僕と千鶴さんは驚き、ドアを凝視して一瞬固まる。 「八千代ぉっ!!」  八千代だと確信した僕は叫んだ。次の瞬間、八千代が扉を蹴破った。八千代が扉を蹴破るのは何度目だろうか。  扉はベッドの横に飛んできて、あわや千鶴さんに直撃するところだった。 「や、八千代ぉ····」  八千代を見て安心した僕は、涙が止まらなくなった。そんな僕を見るや否や、八千代は千鶴さんの胸ぐらを掴み、鬼の形相で壁に叩きつけた。千鶴さんは衝撃で咳込む。 「部屋覗いたら居ねぇから探してみりゃ、テメェ····結人に何しやがった」  八千代が本気でキレている。止めなくちゃいけないのに、恐怖で腰が抜けてしまい声も出ない。 「や〜、何も? ちょーっとだけ遊ぼうと思って部屋まで連れ込んだんだけどぉ、耳だけで拒否られちゃったぁ」 「結人に触んなつったよな。死ぬ覚悟できてんだな?」  なんとか八千代の腰に抱きついて、今にも殴りそうなところを止める。 「八千代、殴っちゃダメ····」 「あ゙ぁ!? お前もノコノコついてきてんじゃねぇぞ!!」 「ご、ごめんなさい······」  初めて八千代に怒鳴られ、身が強ばってしまう。 「······おい、お前どこまで触られた? 耳だけじゃねぇだろ。おい、ケツ出せ」  早速疑われている。僕をまじまじと見て、八千代は違和感が確信に変わったように問い詰めてくる。  今お尻を調べられる訳にはいかない。何とか隠さなくては····。 「や、やだよぉ」  抵抗する間もなく、八千代は僕を押し倒すとパンツまでひっぺがした。 「やぁっ、ダメ、触んないでっ」  八千代は僕のお尻を少し弄り、何かを確信したようだった。そして、千鶴さんの顔も見ずに話しかける。 「おい千鶴、テメェどこまでヤった。正直に言ったら病院送りにしといてやる。嘘ついた瞬間、殺すからな」  静かに言い終えると、八千代は瞳孔が開いたような瞳で千鶴さんを睨んだ。おバカな千鶴さんは、命惜しさに洗いざらい話した。    八千代は朔を呼び、簡単に状況を説明した。そして、身内の不祥事に頭を下げて詫びた。  僕は部屋から出され、千鶴さんの断末魔の叫びを背に聞きながら、みんなの居る客間へ戻った。  朔は皆に、詳しい内容はぼかして僕が襲われたとだけ説明した。お父さんとお母さんは、額を畳に擦りつけて謝ってくれた。桜華さんはひとしきり謝ったあと、急ぎ早に千鶴さんの部屋に向かった。 「あのっ、お父さんもお母さんも、顔を上げてください。僕なら大丈夫ですから。それより、八千代を止めてください! 八千代が千鶴さんを殺しちゃいそうな勢いで······」 「それは桜華が行ったから大丈夫よ。八千代も、桜華より酷いことはしないわ」 「······え!? 千鶴さん、桜華さんに殺されませんか?」 「八千代が病院送りで済ませるって言ったんなら大丈夫だ。それより結人くん、愚息が本当に申し訳ない事をした。謝って済むことじゃねぇが、どうにか償わせてほしい」 「えっと····、八千代が怒ってくれたし、僕はもういいです。それに、千鶴さんを許せないのは、僕より皆だと思うので····」 「だね。部屋1つ貸してもらえたら、千鶴さん縛りつけて目の前でお清めするんだけど」 「りっくん!? 何言ってんの!? ご両親の前で何言ってんのぉ!?」 「冗談だよ。千鶴さん、今頃フルボッコなんでしょ? 見れないじゃん」 「そういう事じゃないよぉ····」 「まぁ、千鶴さんを痛めつけてもしょうがねぇし、どんっだけ謝ってもらっても結人がされた事はなくなんねぇじゃん。起きた事はどうしようもねぇし。償うどうこうってんなら、千鶴さんが一生結人の下僕やったらよくね?」 「それいいな。俺も賛成だ。そん時は、千鶴くんに貞操帯が必須だな」 「みんな過激じゃない? 僕、下僕なんて要らないよ。それに千鶴さんだって、朝の見て抑えられなかったって言ってたし····」  って、ご両親の前で言うのはマズかったのでは? と思ったが、言ってしまったものは仕方ない。  それよりも、皆が静かに憤怒している方が問題だ。普段、優しくて甘い面しか見ないから、このギャップには慣れなくて怖い。  それに、僕よりも僕の事で怒ってくれると、僕自身はそれほど怒れなくなってしまう。僕はいつもこうだ。 「だからって、人のモノに手ぇ出していい事にはなんねぇだろ。ましてや、強姦なんて論外だ。お前、自分がされた事わかってんのか?」  朔が言う事はもっともだ。怒れなくなってしまう僕がおかしい事は、重々承知している。 「わかってるよぉ····。でも皆が僕より怒ってくれるから、僕が怒れなくなるの」 「なんだそれ。キレていいとこだぞ」  と、朔の方が怒っていてやっぱり怖い。きっと、皆が怒っているのを見るのが、僕は一番嫌なんだ。 「僕がノコノコついて行ったから····こんな事になっちゃってごめんなさい。でもね、皆が怒ってるの見るのやだ。いつもの優しい皆がいいよぉ····」  自分で思っていたよりも、精神的にギリギリだったらしい。いつもの、皆の優しい雰囲気に包まれたい。今は全力で甘やかされたい。  勿論、襲われた事が主な原因なのだが、それに加え皆の怒った雰囲気に耐えられなくて、恐怖とは違う涙が溢れてしまった。  新年早々こんな事になってしまったが、幸せ一色だった皺寄せが来たのかと、妙に納得している自分もいた。どこか他人事な感じがするのは何故だろう。 「僕、皆に甘やかされて幸せ過ぎたんだと思う。髪染めたりお泊まりしたり、初めての事ばっかりで浮かれ過ぎてたんだよ。でね、危機感がいつも以上に無かったんだと思うの。千鶴さんが悪いのはわかってるけどね、それでもね、やっぱり千鶴さんは根っから悪い人じゃないとも思うから······」  千鶴さんが話してくれた想いは、きっと嘘じゃないと思う。そう思いたい。 「千鶴さん、八千代の為に戻ったって言ってた。八千代が好きに生きていけるように、自分が頑張るんだって。あれは嘘じゃないと思うんだ。····僕、千鶴さんが死んじゃうのやだぁぁ」  もう何を言っているのか、自分でも分からなくなっていた。とりあえず、やっぱり桜華さんが千鶴さんを殺めてしまのではないかと思い、それは嫌だと訴えた。だって、千鶴さんの叫び声が途切れ始めたんだもの。  皆は呆れた顔をして、それぞれに大きな溜め息を吐いた。 「結人がそう言うなら、俺らは何もしねぇけどさ。結人と千鶴さんを2人にした俺らも悪かったしな」 「まさかってのがあったね。ここで、このタイミングでやらかすとか、千鶴さんて相当馬鹿でしょ」 「あの子は昔から、本能に従って生きてきたような子でね。だから、快楽主義者だって八千代が嫌ってるのよ。本当にごめんなさい」 「でも、千鶴さんは八千代の事嫌いじゃないって、可愛い弟だって言ってましたよ」 「······嘘ぉ」 「アイツは欲と精神が分裂したような奴だからな。なくはねぇが、信用はできねぇな····」 (千鶴さん、ご両親からの信用ゼロだなぁ····) 「千鶴さんにされた事は許せないけど、でも僕は、千鶴さんが嫌いじゃないです。戻ってきてくれた事も感謝してます。それに、大事(おおごと)にして僕の両親にこういう形で知られたくないですし······。今回は八千代と桜華さんからのお仕置で終わりでいいです」 「え····、私達が言える立場じゃないけど、本っ当にいいの? 結人くん、お人好しだって言われるでしょ。大丈夫?」  お母さんの、僕への心配が別方向へと切り替わった。 「よく言われます。だから、皆が心配性になっちゃって、凄く過保護なんです」  僕は、八千代のお母さんに彼氏の自慢をしてしまった。言ってから気づいて顔が熱くなった。 「結人くんは根っからの良い子なのねぇ。私達が言えた事じゃないけど、安心して八千代を任せられるわ。こんな事になっちゃったけど、今日は臆せずに挨拶に来てくれてありがとう。千鶴の事は、二度とさせないようこちらで処理するから、また来てね」  お父さんとお母さんが、改まって頭を下げてくれた。僕も、慌てて頭を下げる。 「僕こそ、八千代の子供を見せてあげられなかったり、お父さんの期待を裏切らせるような道に進ませたり、メリットが何も無くてごめんなさい。それなのに、受け入れてくれて、本当にありがとうございます」  遠い将来の事は分からないけど、これから僕たちが歩もうとしている未来に生産性はない。  けれどそれよりも、皆と一緒に生きてゆく未来が眩しく見えるのだから、僕たちに後ろめたさはない。それが、僕と皆の家族に伝わるまで、僕は“僕たちの幸せ”を諦めずに伝え続けたい。  なんて、気張っているのが報われたかのような、そんな瞬間が訪れた。 「結人くん、メリットは八千代の幸せだ。人を傷つけるような事しかしてこなかった子が······。心から結人くんを想っている八千代を見られたんだ。俺たちは、それだけで充分だよ」  お父さんのその一言に、僕はまた大粒の涙を落としてしまった。  事件なんてそっちのけで、僕が幸せな気持ちに包まれている所へ地獄絵図がやってきた。  八千代が、傷と青アザだらけの千鶴さんを引き摺ってきた。そして、僕の前に投げ捨てた。   「なに寝っ転がってんだよ。土下座。チッ····遅せぇ。さっさと額がすり切れるまで擦りつけろ」  八千代の指示に従い、千鶴さんがザリザリと額を畳に擦りつけながら謝る。余程酷い目にあったのだろう。滅茶苦茶泣いている。これがこの家の跡継ぎ······。  いくらなんでも可哀想になった。なので、こっちでは話が纏まった事を、千鶴さんの額が血塗れになる前に説明した。   「はぁ゙!? 許すってお前、正気か」 「ゆいぴが許すつってんだから、それ以上責めんなよな」 「そうだぞ~。俺らだって納得はしてねぇけど、結人が許すつってんだからしょうがねぇだろ」 「それに、俺らが怒ってると結人がまた泣くぞ。お前がキレてんのが1番結人を泣かすんだ。だから、一旦落ち着け」  皆の説得のおかげで、八千代は何とか怒りを収めてくれた。僕たちのそんなやり取りを見て、八千代の家族が安心したように笑っている。  しかし、腹の虫が収まらないのは皆も同じで、ゴミを見る目で千鶴さんを見下ろす。  それをなんとか宥め、残念だけど早めにお暇しようと言った。 「桜華、千鶴のトドメ任したからな。今日は帰るわ」 「任せなさい。二度と結人くんに手ぇ出せなくしておくわ。結人くんも皆も、本当にうちのゴミクズがごめんなさい。懲りずに八千代と居てやってね」 「はいっ! 勿論です。····千鶴さんのトドメ、程々にしてあげてくださいね」  僕は、小さな声で桜華さんにお願いした。桜華さんは、ニコッと微笑んでくれた。その優しい笑顔を信じたい。 「おい、行くぞ。何コソコソ喋ってんだよ」 「んー? 内緒」  そうして、僕たちは八千代の家に戻った。  僕は皆の愛情に包まれて、完全に気が抜けていた。この後、僕が帰るまでの数時間、お清めのえっちが敢行される事になるなんて、予測できたはずなのに······。

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