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籠城

 僕の口から飛び出した“嫌い”に、皆は固まってしまった。その隙に僕は、りっくんのおちんちんを抜いてベッドから転がり落ちる。  よたよたと部屋を出た僕は、一応与えられていた個室に向かう。当然、皆追いかけてきたけど『来ないで!』と言って拒否した。僕の腕を掴んだりっくんの手を振り払い、困り顔のりっくんを背に置いて、僕は部屋に閉じこもった。  ベッドに潜り込み、ぐしゃぐしゃになった気持ちを吐き出すように泣いた。落ち着こうにも、涙がボロボロと勝手に溢れてくる。  扉の前ではりっくんがずっと謝っている。別に怒ってなどいない。気持ちの整理がつけられないだけだ。  やっぱり、皆の赤ちゃんを産めない。僕が男だから。そういう事実を重く受け止めているのは、僕だけなのだろうか。だって皆は、冗談にしてしまえるんだもんね。僕は、産めるなら産みたいと本気で思っているのに。   「結人、出てこい。1人で泣くな」  八千代が勝手な事を言っている。僕だって、1人で泣きたい時があるんだ。 「やらっ。ちゃんと、気持ちぐちゃぐちゃなのろうにかすぅから放っといて!」 「ふざけんな! お前が1人で泣くんは嫌だつっただろうが。出てこねんならドアブチ破んぞ!」 「うるひゃいなぁ! ぜーったい布団から出ないもん!」  僕が突っぱねると、八千代は本当に扉を蹴破った。八千代の十八番だ。  毛布に包まり、断固として意地を張り通す。それを見て、りっくんと啓吾が『可愛い』と笑った。朔も『ヤドカリみたいだな』って言った。絶対に許してあげないんだから。  そう誓って、毛布を掴む拳に力をこめる。しかし、抵抗虚しく毛布ごと八千代に抱き上げられた。 「お前なぁ、アホすぎんだよ。普通あんなんで騙されねぇだろ」 「らって、らってぇ····。僕でも、皆の赤ひゃん、ひっく··産めぅのかにゃって、ちょっと期待しちゃったんらもん」 「ゆいぴ、ホントにごめん。マジで騙されると思わなくて、ちょっとフザけただけのつもりだったんだ····」 「俺も悪ノリしてごめんな? まさか信じるとは思わなかったからさ····」 「結人は純粋過ぎるな。そんなんじゃ、悪いヤツに騙されちまうぞ」  これまで散々騙されてきたけどね。何も学習していない僕が悪いんだ。  できるはずのない事をバカみたいに信じて、期待して勝手に傷ついて怒って拗ねている。啓吾の誕生日だというのに、僕は何をしているのだろう。 「僕ね、皆にたっくさん愛してもらってるれしょ。皆の赤たん産んららね、お返しれきると思ったの」 「ゆいぴ····」 「らからね、ムリらってわかってるけろね、もひかひたらって思ったの」 「お前なぁ、何回言わせんだよ。ガキなんか要らねぇつってんだろ。もしデキたとしても、俺らの1番はお前だからな」 「そうだぞ。そもそも子供産んでお返しって何だ? 結人が傍に居てくれるだけで充分だって、何回説明したらわかってくれるんだ?」 「居るらけれお返ひれきてるのがわかんないの! そんなの、僕らって同じらよ? れも、皆は僕に色々してくぇぅれしょ? 僕もね、皆に何か返したいのぉ。ふぇぇっ····」 「なんでそこで泣くんだよ。お前の涙腺わっけわかんねぇな。ほら、泣くなって」  八千代が毛布で僕の顔を拭いてくれる。そして、僕をベッドに降ろして優しいキスをしてくれた。  僕の隣に腰を下ろし、りっくんが困り眉で耳元に唇を寄せる。熱がかかる距離。そっと声を絞り出す。 「ゆいぴ·····その、ね、えっと····触っていい?」 「······いいよ。さっきの続き、する?」 「いいの? もう怒ってない?」 「怒ってないよ。ちょっと気持ちがバグってたらけらもん。けろ、あんな嘘もうヤらよ?」 「うん、ごめんね。もう言わない。でも、孕めとかは言っちゃうかも····。あっ、けど、騙したりはしないから······ダメ?」 「はぅ··そ、それはダメじゃない····。僕も、そういう気分になっちゃう事あるから····気持ちは分かるから····えっと、たぶん大丈夫(らいじょーぶ)」  顔が熱い。えっちしていない時にこういう話をするのは、やっぱり苦手だ。凄く恥ずかしい。  グイグイ迫ってくるりっくんを、僕は手で押し返しながら啓吾に謝る。 「立て篭もったりしてごめんね? 啓吾、誕生日なのに····怒っちゃってごめんね?」 「俺の誕生日、とっくに終わってるから大丈夫だよ」  啓吾に言われて時計を見る。もう1時間も前に終わっているじゃないか。 「そんなん気にしなくていいからさ、俺ら一緒に相手してよ。抱き潰すの、そろそろ本気だすよ?」 「ひぇ····。わ、わかった。·····あ、あのね、誕生日過ぎちゃったけろ、もう1個プレゼントあげぅねぇ」 「え、マジで? やった〜。何くれんの?」  僕はもじもじしながら、声と勇気を絞り出す。 「り、凜人さん? 聞こえてますか?」 「あ? おい、お前何するつも──」 ──ザザザッ、ザザ、····はい。聞こえております。何かご入用ですか? 何なりとお申し付けください。ブヅッ──  きっと、僕の魂胆なんてお見通しなのだろう。何がご入用かって、わかっているくせに言わせるんだ。凜人さんも意地悪だなぁ。 「い、いちごミルクのおかわりくらしゃい!」  凜人さんが『かしこまりました』と言った数十秒後、インターホンが鳴った。皆がぽかんとしている中、啓吾が『俺が行く』と言って、受け取りに行ってくれた。 「お前さ、何考えてんの? アレが何かわかってんだろ?」 「身体に害がないように調節してくれるれしょ。どうせ、全部(じぇんぶ)見てるんだよね? 僕ね、皆に満足(まんじょく)してほしいの。れも、(ぁに)かに頼らないとすぐダメ(らめ)になっちゃうから······ね? 今日だけらから····」  僕は、縋るように八千代を見つめた。後ろ髪を掻き乱しながら大きな溜息をつき、ドカッとベッドに座った。 「俺らが満足するまでシたら、お前のケツも腹もマジで壊れんぞ? つぅか壊すぞ?」 「それでもいいよ。言ったでしょ? 『もう出ねぇ』って言わせたいの」 「バカかよ······。お前のその急に根性座んの(なん)なんだよ。怖ぇわ」  八千代は項垂れて、僕のお腹に顔を埋めた。 「結人〜? これ全部飲んでも大丈夫だって。ちょーっとだけ薄めてるって」 「啓吾!? そのまま行ったの!?」 「あぁ、玄関開けて気づいてさ。凜人さんにめっちゃ笑われた」 「お前、流石にそれはないぞ。なんか羽織って行けよ」  朔が呆れた顔で言った。そう、全裸で受け取りに行ったのだ。いくらなんでもバカ過ぎないだろうか。 「んでさ、これ全部飲む? 体に害はねぇけど、マジでぶっトぶくらいキマるらしいよ」 「の、飲むよ! 飲んで、絶対みんなに『もう出ねぇ、結人すげぇ』って言わせるんだもん!」 「ふ〜ん。そんじゃ、全部コースね」  啓吾は、いちごミルクを沢山口に含むと、僕に口移しで飲ませた。これって、啓吾も多少飲んでるんじゃないの?  数回に分けて口移しで飲ませ終えると、啓吾が僕の乳首で遊び始める。八千代が僕の脇腹を噛んで、それだけで何度かイッてしまった。  朔が僕の耳責めを始め、りっくんがお尻を指でこねくり回す。どうして、いきなりいっぺんにするのだろう。クスリが効いてくるまで待ってもらわないと、こんなの失神しちゃうよ。 「ゆいぴ、挿れるよ」 「んぇ? ん、あぃ。莉久のおちんちんくらしゃい。奥まれ、ズンッてしてくらしゃい」 「んぁ、キツ······なんかすげぇキツイんだけど」 「んにゃぁぁっ♡ ふぁっ、入ったらけなのに、イクの止まんにゃいぃっ」 「お〜····効いてきてんのかな。つぅか、結人に飲ませながら俺もちょっと飲んじゃった」 「口移しだとそうなるわな。まぁ、お前バカだからやるとは思ったけどな」 「ひーっど。これさぁ、朝まで解放してやれるかわかんねぇな」 「俺ァ疲れたら寝っから、勝手にヤッてろよ。お前くらいだったら莉久でも止めれんだろ」 「え。俺寝れないじゃん」 「寝てねぇで朝まで大畠見張ってろ」 「りっくん、僕だけ見ててぇ····。啓吾、あしゃまれ、いーっぱいシようね。僕がね、じぇーんぶ搾り取ってあげぅ♡ りっくんもね、僕のこと、いっぱい犯してね?」  啓吾に教えてもらったフレーズを、ここぞとばかりに使ってみる。りっくんのがナカで大きくなった。えっちにお願い作戦は、ひとまず成功しているようだ。  けど、少しやり過ぎてしまったのかもしれない。りっくんが、こめかみに青筋を浮かべて雄の顔になっている。息を荒らげ、思い切り奥をこじ開けた。 「イ゙ッ··あ゙ぁ゙ぁっ!!?」 「結人、マジで黙んないと今すぐぶっ壊すよ。それ以上煽んないで」  歯を食いしばって、呼吸を整えようと尽力するりっくん。ちょっと怖い。 「り、りっくん怖い····。壊しゃないれ?」 「壊すよ。て言うか俺が怖いの? あはっ。俺で怖いとか、場野なんかどうなんの?」  恐る恐る八千代を見る。僕の言葉で興奮したのか、ヤキモチを発動しているのかはわからない。けれど、おちんちんがとんでもなく滾っているのは分かる。  そして、僕の左手の薬指を指輪ごと噛んでいる。痛そうなほどいきり勃ったおちんちんを扱きながら、だ。きっと、僕の指を喰い千切らないように指輪を挟んでいるのだろう。  めちゃくちゃ怖い。それはもう、りっくんの比ではない。あまりの怖さに、お尻がキュッと締まる。すると、りっくんがググッと押し挿れた。

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