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言わんこっちゃない
洗浄では何とか声を抑える事ができた。けれど、本番はこれからだ。
啓吾と八千代が、ローターで遊んで満足するとは思えない。だが、部屋には冬真と猪瀬くんが居るのだ。今日は何としても流されず、断固としてえっちだけは阻まなくてはならない。
僕に課せられたミッションにしては、いささか難易度が高すぎる気がするのだが······。
部屋に戻ると、啓吾が手早く僕のナカにローターを仕込む。そして、人差し指を口に当て、やらしい笑みを浮かべながら『しー』と僕を黙らせる。
「スイッチ入れるよ」
「待って····ねぇ、やっぱり無理だよぉ」
僕が弱音を吐くと、八千代が僕を膝に乗せて甘くて蕩けるようなキスをしてくれた。流石に激しくするつもりはないのだろう。
なんて思ったのも束の間。キスだけで何度かイかされると、啓吾が振動の強さをMAXにした。小刻みで激しい刺激が前立腺を襲う。
僕のおちんちんに幾重にも当てられたタオルは、精液と潮で既にぐしょぐしょになっている。もうダメだ。ローターだけではお尻が寂しくて堪らない。
「やちぉ、おち····おちんちん····欲しぃ」
僕は、八千代の胸にしがみついて言った。
「ふはっ、必死かよ。声我慢できんのか?」
頬に手を添え、耳元で優しく問いかけてくる。
「が、頑張りゅ」
「俺が口塞ぐから、ゆっくりヤッてあげれば? あ、奥は抜くなよ。あと当て堀りはマジでやめろよ。絶対声殺しきれねぇだろうから」
どうやら結腸責めはされないらしい。啓吾が厳重に注意した“あてぼり”というのは分からないが、とにかく優しくしてくれるのだろう。
「わーっとるわ。ローター抜いたら挿れっから、しっかり口塞いどけよ」
「りょーか〜い」
啓吾が振動を止めると、八千代がゆっくりとローターを引き抜く。抜ける瞬間、俯き唇を噛み締めて声を抑えた。
「結人、唇噛んだら切れるよ。ほら、こっちおいで」
「ん····ふ··ンぁっ····んんっ」
啓吾が僕を膝に乗せキスで口を塞ぐと、八千代が慎重に穴を押し拡げながら入ってきた。浅く前立腺を撫でながら、静かに奥へと突き進む。
「馴染んだか? ゆっくり動くぞ」
「へぁぃ····」
八千代は、奥の扉を開いてしまわないように気をつけながら、少しずつピストンを速めてゆく。背後から時々聴こえる、八千代の苦しそうな声がえっち過ぎる。きっと、やりすぎないように衝動を抑えてくれているのだろう。
「結人、イクぞ。奥、ちょっとだけ開けっから、ここで飲めよ」
八千代が僕のおへその下を揉みながら耳元で言う。流石にこれは我慢できない。
「ふぅ··ん゙ん゙ん゙っ!!」
唇が痺れてしまうくらい、啓吾とずっとキスをしているが、八千代はこれが最後だと言わんばかりに激しさを増す。おかげで、声にならない声が漏れただけだった。
「最後危なかったな。結人、絶叫するかと思った」
「癖で奥挿れそうになって焦ったわ」
「僕、酸欠で死にゅかと思った····」
「まだできる? 俺も挿れたい」
啓吾が耳元で囁く。こんなの、断れるわけがない。
「んゃぁ····啓吾のおちんちんも欲ちぃ。挿ぇてくらしゃい」
今度は八千代が僕の口を塞ぐ。明日、唇が腫れてないといいんだけど。
啓吾は、焦らすように入り口をこねくり回す。僕が焦れったくなって腰を押しつけると、啓吾は嬉しそうに奥を抉る。
「自分で腰振っちゃってさ、んなに気持ちイイ?」
「やっ、気持ちぃ····けろ違っ、こひ··腰、勝手に····動いちゃ····」
「んはっ♡ 勝手に動いちゃうんだ。なんかさぁ、ケツでちんこしゃぶってるみてぇ」
「んぁぁっ····♡ しょんなの、耳元れ言っちゃ··らめぇ」
「なんで? すげぇ可愛いよ。ほら、ゆっくり動くから合わせて腰振って」
僕が合わせているのか、腰が勝手に動きに合わせて振れているのか分からない。いや、僕ではなく啓吾が、僕の拙い動きに合わせてくれているのではないだろうか。
僕が悦ぶ所を優しく抉り、声を抑えられるように加減してくれている。けれど時々、指先で背筋を撫でて遊んだり、お尻を掴むように揉む。その度に、声を上げそうになるのを必死に堪えた。
そして、2人が僕に息をする間をくれる時、『あっつー』と言って啓吾の上体が揺れる。きっと、髪をかき上げているのだろう。もう夏が間近に迫っているのだ。無理もない。
きっと半端ない色気を醸し出しているであろう啓吾を、是非とも振り返って見たい。まぁ、そんな余裕なんてないのだけれど。
静かで甘いセックスをしている。なんて、なかなかレアな事なので、慣れのないペースだから啓吾のイキそうなタイミングが分からない。
「啓吾··まだイかない?」
「まだイかねぇ····」
いつもみたいに激しくできないからだろうか。僕はそろそろ、声を我慢するのもイキ続けるのも限界なのだが。
けれど、啓吾は容赦なく僕でおちんちんを扱き続ける。そんな中、八千代が何かに気づいたようだ。
「大畠。····ん」
八千代が目配せをしたようで、啓吾がそちらをチラリと見る。体ごと振り向かないでほしい。僕の斜め後ろなので見えないが、何があるのだろう。
八千代は小さな溜め息を吐き、再び僕の口を塞ぐ。まさか、朔が起きたのだろうか。しかし、怒られるどころか声すら掛けられない。どうやら、朔が起きたわけではないようだ。ならば、一体なんなのだろう。
「結人、片足上げるよ」
そう言って、啓吾は僕の左足を持ち上げ、これまでよりも少し深く押し挿れた。それと同時に、八千代の舌打ちが聞こえた。
「やちぉ? んっ··ふぅぅ····」
「結人、横。左見てみ」
啓吾に言われ、八千代にキスされながらも横目で左側を見る。そこには冬真が居て、思わず悲鳴を上げそうになった。
そうか。啓吾は冬真に見せる為に、わざわざ足を持ち上げたんだ。本当にイイ性格をしている。
「気持ち良さそうだね。俺も次、挿れていい?」
「いいわけねぇだろ。アホか、死ね」
「やちぉ、そんな事言っちゃらめれしょ····」
「そーそ。俺らが居んのにヤッてるお前らが悪いんだからな」
「冬真、寝てたんじゃねぇのかよ」
「結人の可愛い声で起きちゃった」
「ごめ····僕が、起こしちゃ····ひぅ」
啓吾が少し動いた所為で、小さな喘ぎ声を漏らしてしまった。
「んで、冬真はなんでわざわざこっちに来たんだよ。もう終わっからさ、布団に戻れば?」
「お前鬼なの? こんなん見て寝れるわけないじゃん。なぁ、俺にもヤラせろよ」
冬真の口調が変わった。なんだか怖い。
「ふざけんなよ。はいどーぞって差し出すとでも思ってんの?」
「あ〜っそ。いいの? 瀬古起こしちゃうよ? そろそろマジで殴られんじゃね?」
口調は戻ったが、雰囲気は依然として怖いまま。本格的に脅されているようだ。
「勝手にしろ。朔ぐらい俺が止めれっからよ」
「やら····八千代と朔が喧嘩すぅの、やらぁ」
「だってさ。起こしたら瀬古と喧嘩になんだろうね。そしたら先生にバレちゃうかもよ?」
「テメェ····つぅか結人は黙ってろ。ややこしくなんだろうが」
「なぁ冬真、お前マジで脅してんの? そんなに俺らに喧嘩売りてぇの?」
「喧嘩売ってるつもりはないんだけどさ、ただ結人を抱きたいだけ。つぅか結人が欲しいんだよ」
我慢できずにえっちをしていた僕たちが悪い。けれど、冬真の要求をのむわけにもいかない。どうすればいいのだろう。
「どうする? 問題起こすか、黙っとく代わりに俺にもヤラせるか」
「「ヤラせねぇ」」
2人は即答した。それが何を意味するのか、鈍い僕ですらわかる。
「んじゃ、問題になってもいいんだ」
おそらく、冬真は本気だ。本当に朔を起こされたら困る。寝起きの悪い朔の事だ。冬真だけでなく、もちろん八千代と啓吾にもキレるだろう。そうなれば、騒ぎになるのは必至だ。
けれど、僕は朔の止め方を知っている。
「だ、大丈夫だよ。朔は、僕が止めるから。僕なら、止めれるもん」
「ははっ、確かにな。お前だったら止めれんだろうな」
「だね。朔も結人にだけは敵わねぇもんな。····だってさ、冬真。うちの結人さんも逞しいんだぜ? やってみるか?」
「······ハァ。負〜けた。もういいや。頑張って寝るわ。けど、マジでもうやめて寝ろよ! 結人が明日しんどくなんだろ」
意外にも、アッサリと引き下がった。僕を困らせたいわけではないという事なのだろう。それに、僕の身体を気遣ってくれる辺り、やっぱり優しいんだよね。
「お前に心配されるまでもねぇわ。それになぁ、万が一にも結人がグダったら俺らが面倒みんだよ。お前に関係ねぇわ」
「え、そんなのやだよ。自分で動けるもん」
「そういうトコで負けん気出すのやめろよ。ったく····。お前は黙って、俺らが居ねぇとダメだっつぅとこ見せつけてやりゃぁいいだろ」
そういう事だったのか。冬真に情けない所を見せるわけにはいかないと思い、強気に出てしまった。
「お前らもういいからマジで寝ろよ」
冬真はこちらを見ずに、静かに布団に戻った。
流石に、もうやめて寝るのかと思ったが、えっちは啓吾がイクまで続いた。何度か冬真の舌打ちが聞こえた気がするが、八千代と啓吾は気にも留めなかった。
りっくんと朔を起こしては申し訳ないので、僕は八千代の布団で2人と手を繋いで眠る。啓吾は半分布団からはみ出ていたが、朝には僕に抱きついていたので寒くはなかっただろう。
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