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もう少しだけ

 寒さも和らいできた3月、もうすぐ高校生活を終える。僕たちは平和な日々を過ごしていた。そう、これといって問題は起きていない。  けれど、僕は八千代と啓吾に怒っていた。  昨日、皆でお菓子を作っている時の事。啓吾がいっぺんに家電のスイッチを入れるから、ブレーカーが落ちてしまった。その時手が空いていたのは僕だけで、椅子を持ってブレーカーを上げに行ったのだ。  ミッションは問題なくクリアできたのだが、椅子から降りる時に落ちかけた。そこへ、朔が来てくれて一命を取り留めた。  すると、啓吾が来て『ちっこいと椅子とか要んのは分かるけどさ、結人はその椅子が危ねぇよな』と言った。それに続いて、八千代が『どんくせぇからな。やっぱ、結人にそういうのはさせらんねぇな』だって。  確かに僕のドジで迷惑を掛け通しだけど、もう少し僕に任せてくれたっていいじゃないか。悔しいやら情けないやら、行き場のない拗ねた気持ちを、啓吾と八千代にぶつけてしまった。  今思えば、本当にカッコ悪い。『なんでそんなに意地悪ばっかり言うの!? 今は失敗しちゃったけど、ホントは1人でできるもん! ばぁかばぁぁか』と、小さな子供の様に喚き散らした。  2人して、強がりな僕が怒っているのをまた面白がる。だから、昨日の帰りも今朝も、2人にだけキスをしてあげなかった。 *** 「結人さ、めっちゃ機嫌悪い」 「まぁ、俺ら一応喧嘩してるからな」 「これって喧嘩なの? むくれてる結人が可愛いから放っといただけなんだけど」 「ゆいぴは喧嘩してるつもりなんじゃない? キスもしてもらえなかったじゃん。で、今更なこと言って何かあったの?」 「あぁ、うん。さっき莉久と朔が俺に結人預けてったじゃん? その間、俺日誌書いてたんだけどさ····」 「啓吾、今日日直だっけ? 神谷じゃなかった?」 「駿哉とデート行くからって、俺に日誌押し付けて行きやがったんだよ。明日絶対ジュース奢らせる! あぁ··んでさ、書いてる間|何《なん》にも言わないで、ずーっと机コツコツしてんの」 「へぇ〜、珍しいね。どんな?」 「え? どんな? なんかリズム良くコツコツ〜ってず〜っと。めっちゃしかめっ面でさ」 「それ、もしかしてモールス信号じゃねぇか? 双子への誘拐対策で教えただろ。全部思い出せ」 「啓吾、絶対文句言われたんだよ。ウケる〜」 「マジかよ。いやいや、結人はンな莉久みたいな事しねぇだろ。えーっと··待ってな。ずっと同じリズムだったから耳についてんだよね〜」  啓吾が紙に書き出す。結局、モールス信号を覚えきれなかった啓吾には、点で理解できないメッセージだった。 『|ーーーー・・《ご》|ー・・・ー《め》|・ー・ー・《ん》|ーー・ー《ね》  |・・《キス》|ーー・ー・《シ》|ー・《た》|・ー 《い》|・ー・《な》』  八千代は、勢いよく立ち上がり準備室を飛び出す。  八千代が職員室に着くと同時に、丁度出てきた結人と朔。2人は驚いて声を上げる。 *** 「うぉっ····。なんだお前。どんな勢いで廊下走ってんだ」 「びっくりしたぁ····。どうしたかしたの?」  息を切らせた八千代が、何も言わず僕の胸を指でつつく。 『|ー・ー《わ》|ー・ーー・《る》|・ー・・《か》|・ーー・《つ》|ー・《た》』  八千代がモールス信号で伝えてきた意味を理解した僕は、全力で駆け出そうとした。けど、そうは問屋が卸さず。1歩踏み出す前に、八千代に腕を掴まれた。  啓吾は“SOS”しか覚えなかったから、伝わるはずがないと思っていたのに。予想外な展開で、僕は軽くパニックに陥った。 「なっ、なんで!?」 「|大畠《バカ》が覚えてたんだよ。お前がずっと同じのコツコツやってたつってな」 「おい、何の話だ」 「モ、モールス信号··ハァッ、ハァ····これぇ」  八千代を追ってきた啓吾が、ヘロヘロになりながらも朔に紙を見せる。ダメだ。きっと詰んだ。全部バレてしまった。 「お前··これ····」 「もうやだぁ····。僕が悪かったから、もう色々と勘弁してよぉ····」  僕は、持っていたプリントで顔を隠した。それを八千代が下ろし、職員室の前なのにキスをした。 「なぁ、1ヶ所おかしいトコあっただろ。あれ、キスで合ってんのか?」 「も、ばかぁ····。大正解だよぉ」  僕は観念して、八千代に抱き締められた。職員室の前なのに。  八千代の家に行ってからは、皆がデロデロに甘く抱いてくれた。と言っても激しいんだけど。囁く言葉や、僕への触れ方が甘いんだ。  そういう日は、僕も少しだけ勇気を出しやすい。僕からキスをしたり、いつもよりは積極的にお強請りもできる。皆を誘惑するだなんて、啓吾の要望にはまだ応えられないけれど。  今日の最後は啓吾。僕を抱き起こして膝に乗せる。とっくにフラフラで、もたれかかるように抱きつく。  耳元で『なんか可愛い事言って』とお強請りされた。可愛い事ってなんだ。  ふわふわした頭でよく考えもせず、僕が『啓吾の好きにシて』と言うと、僕をそっと膝から下ろした。そして、またもや自室からから怪しげな物を持ってくる。  けど、それは見た事がある物だ。これより少し大きい物が、家電量販店にあったはず。しかし、啓吾が持っているそれは小ぶりで真っ黒だ。そんなもので、一体何をするつもりなのだろうか。  啓吾が、キョトンと固まる僕のおちんちんの付け根、タマとの間に“電マ”を当てる。これって確か、マッサージ器具だよね? 「これにだけ集中してろよ」 「う··うん。ねぇ、何するの? なんか怖いんだけど····」 「だ〜いじょ〜ぶ。気持ちぃコトだから♡」  カチッとスイッチを入れ、電マが振動し始める。なんだか変な感じだけど、軽い振動は少し気持ち良い気がする。  やはりこれは、思っていた通りマッサージ器具なのだろう。えっちはおしまいなのかな····。  僕が複雑な|表情《かお》をしていると、啓吾がニヤニヤしながら僕をじっと見つめてきた。 「気持ちぃ? もうちょい強めるよ」  そう言って、啓吾はまたカチカチッとダイヤルを回す。それに合わせて振動が強まる。途端に、強い刺激が下っ腹に走った。 「ひあぁっ!!? にゃっ!? やらっ、何これぇっ····怖いよぉ! んんっ、あ゙っ····イ゙··あぁっ!!」  僕は、初めて与えられる刺激に耐えられず、何度もイッた挙句お漏らしをしてしまった。  僕が泣き出すまでやめてくれない意地悪な啓吾。ぽろぽろと泣いて、必死に頼んで漸くやめてもらえた。 「どうだった? すっげぇ気持ち良さそうだったんだけど」 「イ、イキすぎて|怖《こぁ》かった····」  タマが少し痛い気がする。何度もやめてと言ったのにやめてくれないんだもの。  それどころか、そこを超えたらもっと良くなるとかテキトーな事を言っていた。まぁ、実際良くなっちゃったんだけど。  啓吾は僕を後ろから抱き抱え、下腹に電マを当てる。そんな所に当てたって── 「んあぁっ····えっ、なに? なんれ? おちんちんじゃないのに····」 「莉久、ローター」 「はいよ〜」  りっくんがローターを僕の乳首に軽く当てる。先端に触れるかどうか、際どい当て方だ。  身体中を、キンと劈くような衝撃が走る。下から這い上がってくるその衝撃は、脳をバカにして耳から抜けてゆく。  僕の性感帯は増える一方で、皆に触れられるだけで身体が跳ねてしまう。それなのに、|玩具《オモチャ》でさらに開発される。もういい加減にしてほしい。  啓吾とりっくんは、僕がグデグデになってしまったのを見てご満悦だ。そして、啓吾が僕を後ろから抱え、ゆっくりと入ってくる。勿論、りっくんがローターを乳首に当てたまま。  そろそろ帰らなければいけないのに····。 「ねぇゆいぴ、卒業旅行どこ行こっか」 「んッ、はぇ····|卒《そっ》··|旅《りょ》··こ?」 「あ、まずは免許取りに行かなきゃね。合宿、楽しみだねぇ」  そうだった。苦労して、父さんと母さんに許可を貰ったのだ。是が非でも免許をゲットしなければ。  けど、まずは啓吾がイッてくれないと、話が頭に入らない。 「りっく··んっ、待って····もぉ、わかんにゃ····んみゃぁっ」  僕がりっくんの話に必死で答えていると、妬いた啓吾が突き上げた。 「んはっ♡ かーわい。んじゃ、時間もないしそろそろ解放してあげよっかな。結人、奥潰すよ」  耳元で囁かれる凶悪な言葉。期待でお尻が締まる。そして、宣言通りに奥を潰すようにぐりゅっと抉る。 「ひにゃぁぁっ!!! んぉ゙っ、あ゙ぁ゙っ!! |啓吾《けぇご》、奥|強《ちゅぉ》いぃっ──んぉ゙っ!!?」  啓吾が僕を落とすから、自重で奥の奥を抉ってしまう。噴き上げた潮でりっくんの顔面を汚し、大惨事となってしまった。まぁ、りっくんは嬉々としてそれを舐めていたのだけれど。  もうすぐ終わる高校生活。だけど、僕たちの胸はわくわくで埋め尽くされている。免許の合宿に卒業旅行、楽しい予定が目白押しだ。  兎にも角にも、僕は数日後の卒業式であまり泣かないように頑張らなきゃ。寂しいだなんて言ってられないものね。 ──2章 完 3章へ続く── ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ これをもちまして、僕スト2章は幕を下ろします。 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます🍀*゜ 次話(明日)からは、僕スト~第3章 希う大学生編~が幕を開けます。 最後になる3章も、どうかお付き合いいただき、結人達を見守っていただけると幸いです(*•̀ᴗ•́*) また、感想など一言でも頂けると嬉しいです。とても励みになります🤗✨ 誤字脱字等、お気づきの事があればお知らせ頂けると助かります(‪ஐ‬*ᴗ͈ˬᴗ͈) よつば 綴 P.S. 次のキャラクター図鑑は完結祝いです✨

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