231 / 384

八千代の番だ

 大学生活が始まって1ヶ月。少しずつ生活リズムが安定してきて、勉強にも集中できるようになってきた。  八千代と朔は、学部が違うので講義が被ることはほとんどない。その分、同じ学部のりっくんと啓吾がぴったり張りついている。  大学構内では、八千代と朔に会うこともあまりない。その所為で、八千代の家に行くと構い倒される。  そんな中、啓吾とりっくんが順にお泊まりを終え、八千代の番がきた。真尋対策だったとはいえ、朔だけ泊まったのが狡いだなんだとゴネられ、本当に全員泊まることになったのだ。  父さんも母さんも、皆のヤキモチには呆れていたが歓迎してくれた。ということは、レアな大人しい八千代が見られるのだ。  親の前だと、借りてきた猫の様に静かで、無駄に大人っぽくなる八千代。凄くカッコイイから、ドキドキして心臓がもたない。 「すんません。風呂、お先にいただきました」 「あら場野くん、丁度良かったわぁ。ちょっとこっちにいらっしゃい」 「はい、なんスか」 「こーれ。結人の赤ちゃんの頃の写真。見る?」  テーブルいっぱいに広げられたアルバム。僕がトイレへ立った隙に、またやられた。そして、食い気味に返事をする八千代。 「見ます」 「えぇっ!? やだよ! そんなの見せないでってばぁ····」  朔と啓吾の時にもやられたのだ。だから、警戒して母さんに張りついていたのだが、また阻止できなかった。 「あらぁ、いいじゃない。場野くん、凄く嬉しそうよ。それに、場野くんにだけ見せないなんて不公平でしょ〜」  とても楽しそうな母さん。その通りなんだけどね。八千代にだけ見せなかったら、とんでもなく拗ねるだろうから。  そして、すっごくニマニマしながら席に着く八千代。早く僕の部屋でイチャつきたいと、さっき耳打ちしてきたくせに。 「ふはっ、すげ。あんま変わんねぇ」 「なっ··凄い成長してるでしょ!?」 「いや変わんねぇよ。すげぇ可愛い」 「なっ··やっ、八千代のばぁぁぁか!」  あまりにも緩んだ笑顔を見せられ、顔面が真っ赤になったのを自覚する。恥ずかしさを掻き消そうと、渾身の悪態をついた。 「こら結人。場野くんに失礼じゃないか」 「ははっ、大丈夫です。いつもの事なんで。それに、これ以外の悪口知らないみたいなんで」 「もう! 他にもいっぱい知ってるもん!」  皆して、僕を揶揄って笑う。恥ずかしくて、これ以上この輪に居られない。僕はキッチンで1人、ココアを啜って地獄の時間を乗り切った。  羞恥を耐えきり、漸く2人でベッドに入る。  壁側に追いやられ、少し火照った身体を寄せ合う。まだ4月だと言うのに暑くて、ブランケットすら掛けられやしない。  僕はモジモジしながら、八千代の誘導で腕に頭を乗せる。それぞれと、初めて過ごす2人きりの夜は緊張から始まった。今回も例外ではなく、慣れた腕枕ですら落ち着かない。   「ねぇ八千代····」 「ん?」 「狭いね」  毎度思っていたが、男2人で寝るベッドではない。いくら僕が小さいといってもだ。  朔と八千代は特に大きいから大変で、ベッドの半分以上を占めている気がする。八千代が少しでも広く寝られるように、僕はギリギリまで壁に寄った。 「だな。けど、離れんな」  そう言って、僕を抱き寄せる。せっかく寄ったのに。 「んへへっ」  仕方がないから八千代の胸に擦り寄って、鼻を胸に(うず)め、雄臭い八千代の匂いを吸い込む。これだけで、いつもお尻がきゅんきゅんしてしまう。  八千代は僕の髪に口付け、ゆっくりと僕を吸い込む。お互い、何をしているのかと思うけど、これが存外心地良い。 「ちょっとだけ触っていいか?」 「う····ぁ、だ、ダメだよ。絶対声我慢できないもん」 「どうせ、アイツらとヤッたんだろ? な、塞いでてやっから」 「ひぁ··んっ····」  八千代は、キスで僕の口を塞ぐ。熱い吐息が絡み合い、鼓動はどんどん加速してゆく。  本当に念の為、今日も一応洗浄はした。八千代の言う通り、啓吾とりっくんとも結局えっちシちゃったから、八千代も例外ではないと踏んだのだ。毎回、流されないように頑張ったんだけど、全然無駄だったよね。  それにしても、皆同じ口上でえっちに持ち込むのが面白い。それに、どれだけしっかり塞がれたって、出ちゃうものは出ちゃうんだよ。 「八千代(やひぉ)··待っ····んっ、ぁ····」 「こっち、使えんのか?」  八千代がアナルに指をかけた。お尻を鷲掴んで開き、中指と薬指の腹で穴の周りをクニクニと揉む。 「ひぅ····」 「なぁ、綺麗にした?」  耳元で囁くんだもの。素直になるほかない。 「し、したぁ····」 「俺だけの為に?」  これは非常に厄介な気がする。独占欲が爆発寸前だ。ただでさえ、八千代はそういうのが誰よりも強い。こんな状況で、僕が首を縦に振ったら····。  頭では分かっているのに、八千代の綻んだ表情(かお)が見たい。それだけの為に、僕はバカ正直に答えてしまった。 「うん。今日はね、八千代の為だけに準備したんだよ」  どれだけ口先でシないと言っても、僕だって八千代が欲しい。他の3人の時もそうだったけど、意思の弱さと我儘が理性を飛ばす。  僕の言葉を皮切りに、八千代は甘い仮面を脱ぎ捨て雄の本性を現した。滾ったそれを僕に押し当てる。そして、グッと腰を引き寄せると、再びキスで口を塞ぐ。  僕の熱くなったモノと擦り合わせ、ゆっくり小刻みに腰を振る。僕は(たま)らず、自分のものと八千代のおちんちんを取り出す。先走ったお汁で、ぐちゅぐちゅになっている。  それを合わせて握り、一生懸命に扱く。なんだっけ····何とか合わせってやつだ。 「俺がイクまで、イッても手ぇ止めんなよ」 「はぇ····そんなの、んっ····が、頑張りゅ」  お尻でイキすぎて、握る手に力が入らなくなってきている。それに、このガチガチの大きなモノを挿れて欲しくて堪らない。 「や、八千代(やちぉ)ぉ····まだ··イけにゃい?」 「もうちょい。頑張って、な?」  甘い声に耳が痺れる。もうヤケクソだ。渾身の力を込め握って扱く。僕のおちんちんが抜けてしまいそうだ。 「んぅっ····僕のおちんちん··取れちゃう····」 「ふっ····結人、愛してる?」 「んぁ、愛ちてるよっ····愛ちてぅ。八千代(やちぉ)大好(らいしゅ)きぃ」 「んっ、俺も。イクぞ····」  僕は、手で八千代の精液を受け止めた。沢山出たから、零しそうになって焦る。ティッシュも間に合いそうになかったので、慌てた結果、手から溢れそうな分を舐めとってしまった。  これに、興奮が最高潮を迎えた八千代。容赦なく朝まで犯された。僕の家だって忘れてるんじゃないかと思うくらい、激しくて深いえっち。声を抑える為に枕で顔を覆っていたから、酸欠でクラクラしていた。  意識を失ったのが5時くらいらしい。そこでえっちを終え、片付けをしてから僕を抱き枕にして、八千代も眠りについたのだそうだ。  苦しくて一瞬目が覚めた時、身動きが取れなくて驚いた。けど、八千代の温もりと圧迫感が心地よくて、そのままもう一度眠ってしまった。  9時頃、母さんに起こされ目を覚ました八千代。なかなか起きない僕を、指でイかせて起こす。不意に声をあげないよう、手でキツめに口を塞がれている。 「んんっ··!?」  目をバチッと開けて、八千代を探す。秒で見つけた。  僕の股ぐらに座り指を突っ込みながら、狩人(ハンター)の様な鋭い目で僕のお尻を凝視している。  バチッと目が合うと、雄から彼氏の目に和らげて言う。 「はよ。目ぇ覚めたか?」 「ん゙っ、ふ··ぅぅ····」  快感に支配され、“おはよう”も言えない。そして、八千代は再び雄に戻る。 「もっかいイッとけ」 「ん゙ん゙ん゙っ♡」  起きがけに2回もイかされ、酸欠も相まって身体に力が入らない。こんな起こされ方、家だとめちゃくちゃ困る。なのに、満足そうな八千代を見てしまっては怒れない。  りっくんの時は、口におちんちんをねじ込まれたっけ。文句は言ったけど、その時も怒れなかった。ホント、僕はダメだなぁ····。

ともだちにシェアしよう!