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意地悪なんだから
啓吾が車へ予備のタオルを取りに行き、ほんの短い間だろうけれど、八千代と2人きりの時間が始まった····。
「ゔ··ぁ····」
猿轡の所為で八千代を呼べない。気持ち良いと、沢山呼びたくなるのに。
少し振り向き、八千代の顔を盗み見ようとする。けれど、体制的に無理があった。
八千代は、きっと僕の気持ちを察したのだろう。首に掛かっていた手をそぅっと外し、向き合うように回転させた。ナカがゆっくりと捻れて、前立腺をごりごりっと潰す。
ぷしゃっと噴き出した潮を目で追う。八千代の浴衣が、僕の潮で濡れていた。この濡れ具合は、今回のだけではないだろう。けれど、そんなの気にも留めず、八千代はまた自分の首に手を掛けせさせた。
猿轡を外してくれないから、八千代を呼べないまま。だけど、僕の意思で抱き締めることができる。それだけでも、僕は心が満たされた。
それでもやっぱり寂しさが消えず、奥を抉る覚悟で八千代に抱きつく。挿れたままだと顔が遠い、こんな時こそ身長差が憎らしい。
「んぅ゙」
「おい無理すんな。キスか?」
伝わっていない。ただ、名前を呼びたいだけだなんて、伝わるはずがないよね。
僕は、ふるふると小さく首を振る。すると、僕を少し抱き上げおちんちんが抜けてしまった。
八千代の足の上で正座をして、ようやく顔が近づく。一体、何をする気なのだろう。
不安そうにしている僕を優しく抱き締め、小さく溜め息を吐いてから耳元で一息吸う。
「結人····」
吐息の様な甘い声で、静かに名前を呼ばれた。それだけで心臓が跳ねる。僕も、僕だって『八千代』と呼びたい。沢山呼びたい。
呼べないもどかしさで泣きそうになる。けれどまずは、耳に流された甘い声に蕩けてしまう。
「ふ··ぅ?」
「お前のそのトロットロの目、すげぇ好きだわ」
そんなに蕩けているのだろうか。自分では知る由もない。
僕の目を見て満足した八千代は、再び優しく抱き締めてくれる。なんだろう、この余裕のなさは。それこそ珍しい。
「結人、愛してる。····あんなぁ、朔ほどとは言わねぇけど、俺もテンション上がってんの。受け止めれっか?」
ガラにもなく、八千代が照れている様に口篭りながら言った。顔が見えないのが惜しい。
僕がゆっくり頷くと、八千代はテーブルにタオルを敷き、そこへ僕を乗せた。最後の1枚だ。
そして、見つめ合いながら静かに引き倒す。
「お前、ンな事して分かってんだろうな」
まっすぐ八千代を見つめて頷く。
「チッ····ブッ壊すかんな」
歯を食いしばって言うんだもの、怖いよ。
「ふ··んんっ····」
ぬぷっと亀頭を挿れ、ゆっくりと奥へ進んでゆく。大きくて、すごく硬い。こんなので、奥をイジメられたら····想像するだけで奥がキュンと締まる。
ナカの変化に気づき、早々に理性を手放した八千代は、そこから思いきり奥へとねじ込んだ。僕は制止する事もできず、ただひたすら奥の扉を叩き続ける八千代の衝動を、声を殺して受け入れるしかなかった。
八千代の事だからきっと、僕の為に甘い思い出を作ってやろうとか思っていたのだろう。いつもより静かで、ら し く な い えっちだったもの。
いつだって優しいけれど、今日みたいな遠慮や我慢を含んだ違和感はない。そんなの八千代じゃないや。こうして、欲望のままに僕を犯す八千代のほうが、八千代らしくて好きだ。
それにしたって、朔ほどじゃないと言っていたくせに、激しさは朔より酷いじゃないか。いくら口を塞いでいるからって、頭を抱え込んで奥をガン突きされちゃ、声が漏れるんだからね。
八千代は僕の声を聴きながら、ナカでグン、グン、と何度かサイズ感を増した。そして、耐えきれなくなったのだろう。急ぎ早に猿轡を外し、いつもの数倍激しく濃厚なキスで口を塞いだ。
息継ぎの為に少し顔が離れる。窓から差し込む朝陽が、八千代の汗をキラキラ光らせて、朔とはまた違う美しさを感じた。
「八千代 、キレー····」
思わず僕は、八千代の頬に手を添えて言う。まだまだ昂ってゆきそうな、そんな熱を孕んだジト目で僕を見下ろす八千代。
僕の漏らした言葉が気に入らなかったのか、何も言わず僕の首に手を掛けた。
「ん、ぐ····」
クッと力を込め首を絞める。僕はイッて、それはもう盛大に潮を噴き散らした。と思ったら、八千代が僕のおちんちんの根元を握る。
「こんな俺でもキレーかよ。お前の首絞めて、辛 ぇの知ってんのに噴かせねぇようにして、こっからもっとキツいのすんぞ?」
八千代が何を不満に思っているのかは分からない。けれど、辛そうな顔をしているのは八千代のほうだった。
傷つけてしまったのかも知れない。僕は謝ろうと、そして、何が八千代の胸を締めつけているのかを聞こうと思った。
しかし、それよりも先に八千代から命令が下される。
「声出したらちんこ抜くからな。声、ちょっとでも漏らすんじゃねぇぞ」
耳元で下された命令に、僕の身体は意思に反して従う。自ら手で口を塞ぎ、ずろろろと入り口まで腰を引きこれから攻め込んでくる八千代に備える。
僕が口を塞いだのを見て、八千代は容赦なく一息に奥を貫いた。おちんちんと声で快感を逃がせない僕は、激しく腰を痙攣させながらイキっぱなしになる。
ダメだ、頭がおかしくなっちゃう。それなのに、八千代は首を絞め、脳への酸素を断つ。何も考えられなくなり、意識がふわっと浮く。
ギリギリを見計らいふっと手を緩め、奥を強くぐぽぐぽして意識を戻させる。
「お前のトびかけてる顔すげぇ好きだわ。戻ってくる時も可愛いな」
なんて言って、何度も何度もそれを繰り返す。いつもの、少し乱暴な八千代に戻ったけれど、結局何が八千代の心を乱したのだろう。後で聞かなくちゃ。
そうこうしていると、戻った啓吾が惨状を見てゲンナリしていた。
「おっま··えー····タオルないの分かっててこれ? びっちょびちょじゃん」
「片づけりゃいーんだろうが。コイツ相手に止まっかよ」
「そりゃ分かるけどさぁ。で、なんで結人は号泣しながら自分で口塞いでんの? 流石に可哀想に見えんだけど」
八千代が状況を説明すると、啓吾は八千代を諌めるどころか便乗してしまった。
八千代は挿れたまま僕を抱き上げ、後ろから啓吾が入ってくる。これで声を我慢しろだなんて、あまりにも酷じゃないだろうか。
けれど、旦那様の命令絶対だ。それに、途中でおちんちんを抜かれるなんて耐えられない。僕は、必死で命令に従う。
興奮していつもより大きいのが、みっちりと2本。僕のナカで好き勝手に暴れる。八千代なんて、啓吾のも入っているのに奥を貫こうとするんだ。
負けじと、先に抜こうと啓吾も奥を目指す。
「これさ、一緒に奥抜いたらどうなんだろーね」
背後から聞こえる、ワクワクを隠しきれない声に背筋が凍る。まさか、本当にやるつもりなのだろうか。
けれど僕だって、ふわふわした頭では好奇心の方が勝ってしまう。少し怖いけれど、腰を落として受け入れるつもりだと伝える。
察した2人は、一緒に奥を目指す。あぁ、このままだと本当に2人で奥を抜いてしまう。そう思ったのに、奥を抜いたのは啓吾だけだった。
八千代は僕を啓吾に預け、前立腺を責め始める。奥と同時に責められるなんて、ローターを挿れられた時以来だ。しかも、それよりも強い刺激が僕を狂わせる。
声なんて、我慢できるわけがないじゃないか。
「んあ゙あ゙ぁ゙ぁっ!! やらっ、そぇらめっ! 壊れ ちゃ··ゔっ、あぁぁぁっ♡ しゅごっ、やぁっ、お漏らし止まんにゃ··はぁっ、イクゥゥっ♡♡」
一度だけ、とでも思ったのだろう。声を出せてスッキリした。その直後、啓吾のスマホが鳴る。
「あ、窪からだ。結人、出るからまた声我慢な」
そう言って、普通に出てしまった。
「はいはーい?」
(我慢····ふ··ぅ····声、我慢····も··できないよぉ。啓吾のばかぁ! 早く切ってよぉ····)
「────マジか。どうすっかな····」
「なんだよ」
「一緒に温泉入らねぇかって誘いに来たらしいんだけど、今の結人の声丸聞こえだったって。窪たちしか居なかったらしいけど····聞かれちった♡」
「で?」
「前で待ってていいかって。もう終わるんだったら一緒に行こうってさ」
「まぁ、結人洗わねぇとだしな。そろそろ飯だろ。うし、さっさと終わらせて行くか」
「だねぇ。もしもーし、すぐ行くから待ってて。──ほーい、んじゃ。····おっし結人、声、どっちでもいいよ」
(へ? どっちでもいいって··何、どういうこと!?)
電話を切った啓吾は、スマホを投げ捨て僕をしっかり持ち直す。僕は、とりあえず声を我慢する。だって今、部屋の前に窪くん達が居るんだよね? そんなの、聞かれたら恥ずかしいじゃないか。
と、僕が声を我慢するのは予想済みだったらしく、我慢できないほど激しく責められた。どれだけ抑えても抑えきれず、2人が射精する時にはいつも通りの嬌声をあげていた。
流石に起きたりっくんと朔。状況を説明し、啓吾と八千代はお説教されながら支度をする。
準備ができたら、何事も無かったかのように部屋を出る啓吾。僕の手を引いて出たのだが、僕の様相は酷いものだった。
だって、ろくに拭きもしないまま浴衣を羽織っただけなんだもん。僕は恥ずかしさで顔を上げらず、啓吾に手を引かれ温泉へ向かった。
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