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サプライズがいっぱい
夏季休暇に入る前日。本当に突然で驚いたんだけど、朝イチから何処かへ出掛けていた八千代が、大きなキャンピングカーに乗って帰ってきた。これが1つ目、とんだサプライズだ。
それに伴って、いつの間にか中型の免許もとっていたらしい。だって、凄く大きいキャンピングカーだもんね。普通免許じゃダメだったんだって。けど、5人で乗るには幾分大きすぎる気がする。
手狭じゃ困るんだとか言っていたけど、流石に大きすぎるんじゃないかな。
キャンピングカーから降りてきた八千代は、明日からキャンプに行くと言った。どうして、いつもこう急なんだ。前もって準備をさせてくれないのは意地が悪い。
まぁ、当日までソワソワして落ち着かない僕が、いつも以上にドジばかりするからなんだろうけどさ。それにしたって、いくらなんでも全部が急すぎる。
ワケが分からないまま、僕はキャンプに出掛ける準備をする。だけど、僕が用意する物なんて着替えと水着くらいで、あとは特に何も要らないと言われた。
皆はいつも通りの大荷物なのに、僕は小さなリュックで充分事足りてしまう。毎度の事ながら、遠出する時は申し訳なくなってくる。
「ねぇ、僕も何か荷物····」
せめて、荷物を車に積み込む手伝いをしたくて、啓吾に声を掛けてみる。すると、玄関に集められた荷物から軽い物を探してくれた。
「んじゃこれ持ってって」
いくつか渡された荷物の中に、なんだか見覚えのあるダンボールがあった。
「ん? これって····」
僕は、啓吾から手渡された物を見て、思わず顔を熱くしてしまった。だって、ゴムが50箱も入ったダンボールだったんだもの。
最近は使わなかったから、とても久しぶりに見た。前は、八千代の家のクローゼットに常備されていたのだ。実は今も、ヤリ部屋のクローゼットに仕舞われていたらしい。
流石に、新品のキャンピングカーを汚したくはないのだろう。それにしたって、だ。
「ちょ、皆何回するつもりなの?」
「何回っつぅか、限界まで?」
雄の顔でえっちな笑みを見せる啓吾。僕は、顔を伏せて逃げるように荷物を運ぶ。
車で待つ八千代にそれを渡すと、啓吾に向かって『もう1ケース積んどけ』と、照れる僕の耳を弄りながら声を張った。
「八千代のばかぁ! そんなにシたら僕のお尻壊れちゃうでしょ!?」
僕は、手伝いを放っぽってリビングに逃げ込んだ。リビングでは、りっくんと朔がまだ荷物を纏めている。
尋常じゃない量のタオル類がダンボールに詰められていた。
「それ、積みきれるの?」
「その為のデカい車なんでしょ?」
「大丈夫だぞ、結人。足りなくて困らないように、多めに持っていくだけだからな」
「そんなの心配してないもん!」
僕は、結局ロクに手伝わないまま、自室に駆け込んでベッドにダイブした。
「ゆいぴ、何拗ねてんの?」
執拗いノックと、心配そうなりっくんの声。僕は観念して、部屋の鍵を開けりっくんを招き入れる。
2人でベッドに座ると、再度りっくんに拗ねている理由を聞かれた。
「なんかさ、折角のキャンプなのに、え··えっちシに行くみたいなんだもん」
「隙あらばするけどね。あくまでも俺らの目的は、ゆいぴに初キャンプを楽しんでもらう事だよ。えっちはおまけ♡」
「そーそ。念の為に持ってくだけだから、流石に全部使うつもりはねぇよ」
荷物をあらかた積み終え、僕の様子を見に来てくれた啓吾が、玩具 の入った箱を持って言う。説得力なんて皆無だ。
「それにさ、サプライズはまだあるから楽しみにしててよ。ね? 一緒に最高の思い出つくろうね」
なんだか、皆が浮かれている。僕も、楽しみじゃないわけではない。けど、なんだか目的がズレているようでモヤモヤしていたのだ。
どうやら、僕の考え過ぎだったようで少し悪い気がした。気持ちを改めて、僕も準備に参加する。と言っても、もう殆ど終わっているのだけれど。
仕方がないので、買い出しへ行く啓吾と朔について行くことにした。
「何買うの?」
「んぇーっとねぇ····、バーベキュー用の食材と炭だろ。んでぇ、なんだっけ」
「積んでおくアメニティとかだろ」
「そうそう。あっ! あと、テントの底に敷くシートが思ったよか薄かったから分厚いの買い直してこいって、さっき場野に言われたんだわ」
「お前、ちゃんと必要な物メモしてきてんのか?」
「バッチリ、俺の頭ン中に」
「「はぁ····」」
僕と朔は溜め息を漏らした。そんなだから買い忘れが頻発しているのだと、朔にグチグチと怒られる啓吾。
運転中の朔に代わり、僕が八千代に電話して買う物を確認した。僕は、後ろで聞いている啓吾に伝え、啓吾が内容をメモする。
「記憶にないのチラホラあるわ。マジごめん」
「もう····、啓吾らしいけど気をつけてよね。こないだもそれでスーパーにトンボ帰りしたでしょ」
「あん時、結人腹減りすぎてクレープ3つも食ってたよな」
「あぁ。その後、晩飯もいつも通り食ってて相変わらずすげぇなって思った。バーベキューでも、結人が腹いっぱい食えるように沢山食材買っておこうな」
「んへへ♡ うん!」
ショッピングモールで買い物を始めると、いつもの如く寄り道をする啓吾と朔。決まって僕の服を見るのだが、今日も例外ではなく。
あれもこれも可愛いと言って、僕は着せ替え人形と化した。啓吾は派手めな可愛い系の服を選びがちだ。朔は、白ベースの清楚系。
何着も着せ替えられるのは大変だけど、皆の好みが顕著に出ていて面白い。
ちなみに、八千代も淡い清楚系が好きみたいだけど、幼く見えるような感じのが特に好きみたいだ。りっくんは、言わずもがな何でも来い。
それでも、大人しい感じが好きだったり、フェミニンな雰囲気が気になったりしているらしい。僕が男だって、時々本気で忘れているのは、りっくんのおバカなところだ。
僕は、ダボッとしていてシャカシャカしてるカッコイイ感じなのが良かったのに、結局可愛い感じに収まってしまった。
けど、啓吾がこっそりカッコイイのも買ってくれていて、家に帰ってからプレゼントしてくれた。僕が眺めていたマネキンのやつだ。
車に戻る前、トイレに行くと言ってなかなか戻らなかったんだけど、サイズを探すのに手間取っていたらしい。嬉しくて、思わず啓吾に抱きつき頬へキスをした。
だって、カッコイイのなんて滅多に買ってくれないんだもの。凄くレアなんだ。
皆、それぞれにソワソワして落ち着かない出発前夜。忘れ物がないか、最終チェックを何度もして就寝····するはずもなく、ヤリ部屋に連れ込まれた。
「明日、早くに出発するんでしょ? 寝なくていいの?」
「運転すっから俺と朔は先にヤッて寝んぞ。満足してからだけどな」
「満足つったら、朝までヤッちまいそうだぞ」
「え、朔もアレ運転できるの?」
朝まで云々なんてのは無視してやる。それよりも、朔も免許を取っていたなんて初耳だ。
「場野1人で運転すんの大変だろ。莉久はデカい車ムリだって言うし、啓吾はバイトで忙しそうだったからな」
そういう朔と八千代だって、凄く忙しそうだったじゃないか。本当に、めちゃくちゃなんだから。
普通車ですらまともに運転できない僕にとって、あんな大きな車を運転するなんて夢のまた夢だ。今回も、僕にできることはなさそうなので、迷惑だけは掛けないように気をつけようと思う。
朔と八千代は、日付が変わる頃まで僕を堪能し、りっくんと啓吾に引き渡して自室に戻ってしまった。力無く『おやすみ』と、キスをしたのはなんとなく覚えている。
何時間も待たされた2人は、早く起きなきゃいけないのに朝方まで元気だった。僕が日が昇る前に気絶するまで、2人がかりでたっぷり愛してくれた。
翌朝、まだ半分眠っているりっくんをキスで目覚めさせる。寝ぼけながらも舌を絡めてくるりっくんは本能のままの雄で、時間が無い時は襲われないように気をつけなくちゃいけない。
かく言う僕も、八千代の熱烈なキスで起こされたのだけど。寝起きに舌で口を犯され、本当に窒息するかと思った。
それぞれ支度を済ませ、いざキャンピングカーに乗り込む。中は、まるでリビングのような作りになっていて、とても車とは思えなかった。
キッチンにシャワー、トイレも完備されていて、奥には寝室がある。これじゃテントなんて要らないだろうに。
僕は、初めてちゃんと見る内装に驚いた。昨日は、八千代に荷物を渡すばかりで乗せてもらえなかったから。きっと、僕がとことん驚く顔を見たかったのだろう。
そう、ここで昨日言っていた最後のサプライズを畳み掛けてくるのだった。
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