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風邪っぴき

「げほっ、ごほっごほっ····」  ──コンコン 「ゆいぴ、大丈夫?」  ノックとともに顔を覗かせたのは、りっくんだ。お粥を持ってきてくれたらしい。 「起きれる? お水飲めてる? ご飯食べれそう? 熱測ろうね」  どれに答えたらいいのかわからず、コクッと頷く。そしたら、りっくんは僕の背中を支えてゆっくり起こしてくれた。 「まずはお水飲もうね。自分で飲める? 口移しがいい?」  そんなことしたら、風邪が移っちゃうじゃないか。  僕は、ふるふると顔を横に振る。 「んふ、冗談だよ。飲んでる間に熱測っちゃうから、手、入れるよ」  服の中に、りっくんのひんやりした手が入ってくる。冷たくて気持ちいい。  風邪をひいている僕に、べったりくっつくりっくん。移るからダメだよって、昨日から飽きるくらい言ったんだけど、効果はないみたいだ。 「りっくん、手、気持ちぃ」  服の上から、りっくんの手を抱き締める。 「ゆ、ゆいぴ、エロ、エロいよぉ····」  絞り出した言葉に、過剰な反応を見せるりっくん。なんで泣きそうになってるんだろう。  前に風邪をひいたのはいつだったか、かなり前な気がする。あの時はこんなに酷くなかったから、りっくんも取り乱してなかったと思うんだけどな。 (丈夫だけが取り柄なのに、皆に迷惑かけるのいやだなぁ······)  ピピピッと体温計が鳴って、正気に戻るりっくん。 「あ、熱····えっ!?」  体温計を見つめて、口を開けたままはわはわしてる。何度だったんだろう。  りっくんは何も言わないまま、優しく僕をベッドに寝かせた。そして、胡散臭い笑顔で『ちょっと待っててね』と言うと、部屋を飛び出していった。  廊下に出たりっくんは、扉を閉めて何か叫んでる。一体何事だろう。  しばらくして、りっくんが戻ってきた。けど、りっくんだけじゃない。全員集合した。  本当にどうしたんだろう。すごく不安になってくる。   「結人、気分はどうだ?」  朔がゆっくりベッドに腰かける。優しくて暖かい手で僕の頭を撫でてくれる。 「うん····身体はしんどいけど、なんか大丈夫そうなんだよね」  身体は思うように動かない。なのに、不思議と気分は悪くないんだ。庭中を駆け回れそうなくらい。 「食欲は?」  ベッドを揺らさないよう、静かに転がってきた啓吾。横にピタッとくっついて、ほっぺに手を添えた。 「んへへ、可愛い······食欲、は、あんまりないかも······ね、啓吾、移っちゃうよ?」 「俺バカだから移んないの~。なぁ?」  嫌味交じりで皆に同意を求める啓吾。日頃言われるのを根に持ってるんだ。 「そうだ。皆してどうしたの?」 「ゆいぴ、落ち着いて聞いてね」  神妙な面持ちで話し始めたりっくん。不安が加速する。 「さっき熱測ったでしょ。それでね、39度5分だったんだ。てことはだよ。いよいよ——」  だんだん息が荒くなって興奮し始めてるりっくん。怖いや。 「座薬挿れんぞ」  いいとこどりをされたりっくんは、般若のような形相で八千代を睨む。めちゃくちゃ怖い。  それを気にも留めず、八千代はさっさと座薬を取り出した。昨日、病院でもらってきたやつだ。 「やっ、やだ······要らない。大丈夫だもん」  思わずお断りしてしまった。だって、39度を超えているなんて、そんな感覚ないんだもん。  僕が拒絶すると、八千代は僕が逃げられないように跨がって、体温計を脇に突っ込んできた。30秒後、39度8分に上がっている体温計を見せつけられる。 「挿れんぞ」  僕を見下ろす八千代。ものすっごくえっちなんだけど、なんだか怒っているみたいだ。これじゃ逆らえない。 「ひゃ、ひゃい····」 「で、だ。目下の問題は誰が結人に座薬を突っ込むかってことでな、実は揉めてんだ」   静かに状況を教えてくれた朔。なるほど、それで全員揃って来たんだ。 「誰でもいいよぅ····」  僕は声を絞り出して言った。 「よくねぇんだよ。お前のナカに挿れんのに、抜け駆けなんかさせねぇっつの」 「って場野くんが言うからさ。俺らも引けねぇよなってことになったのよ」 「てか場野がハナっから当たり前に自分がやるみたいな感じだったのがおかしいんでしょ」 「そうだな。俺も、ああいうのはよくねぇと思うぞ。俺だって結人に挿れてぇんだ」  破廉恥なことを真剣な顔で言う朔。  本当に誰でもいいから、挿れるなら早く挿れてほしいんだけどなぁ······。

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