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狂愛《槞唯side》1

桜が咲き誇る4月。 風に吹かれて舞い散る桜の中に、白く美しい人影。 どうやら私の視線に気付いたようだ。 「綺麗な桜ですね」 私が声をかけると、彼は少し微笑んで桜の花びらを掴んで言った。 「何度見ても飽きない。この学校の桜は」 そう言う貴方は桜のように美しく、 次の言葉が何も出ないくらい見とれてしまった。 「愁弥!」 「綾」 「またここにいたのかよ。入学式始まるぜ」 彼の友人が近寄る。 制服を見る限り、彼らは私の1つ上の学年のようだ。 後ろ姿でさえ美しい。 「入学おめでとう」 彼は振り返って私に言った。 桜に包まれている愁弥さんが目に焼き付いて離れなかった。 高校からは地元を離れ、一人暮らしを始めた。 これといってやりたいことがあるわけではない。 何も目標などなかった。 だから生徒会に入った。 入学式の時に、在校生代表の挨拶を読んでいた愁弥さんを見て決めた。 面倒な事は嫌いだが、そんな感情を通り越すくらいに傍にいたいと思った。 「ルイ」 名前を呼ばれるだけで、たまらない。 愁弥さんと一緒に居られるだけで胸が高鳴る。 気高くて、清楚な愁弥さんに神威綾という友人がいる。 私からしてみても一つ年上で、この学校の先輩にあたる人物だが、 「愁弥!まーだ生徒会やってんの?」 「綾」 私はこの人が嫌いだ。 愁弥さんとは全く正反対の性格。 愁弥さんとは家が隣通しで幼なじみらしいが、釣り合っていない。 「真面目くんも仕事よくやるねぇ」 「真面目くん…」 「気にするなルイ。綾、もう少しで終わるから生徒会室には入ってくるな」 「はいはい、分かったよ」 釣り合っていない、相応しくないと思ってはいる。 ただ、 神威さんと話してる時の愁弥さんの顔は、一瞬優しくなる。 彼にだけ見せている表情。 気高い貴方には似合わない。 「綾が邪魔して悪いなルイ」 「いえ、大丈夫ですよ」 貴方が謝る必要はないのに。 神威綾という存在が私を苦しめる。 私の知らない愁弥さんを知っていて、愁弥さんが心を開いている相手。 消したいくらい、邪魔な存在。

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