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狂愛《槞唯side》5
ぐったりしている愁弥さんを見て、自分のしてしまった状況を今更ながら再確認した。
憧れの人を犯してしまった。
愁弥さんを縛っていたネクタイをほどいた。
愁弥さんは目を合わせてくれなかった。
当然だ。
感情のせいとはいえ、後輩に犯されたのだから。
愁弥さんは無言のまま、風呂へ向かった。
最低だ。
嫌われても仕方ない。
怒らせてしまった。
10分ぐらいして、風呂から上がってきた愁弥さんはベッドの上に倒れた。
無言のまま愁弥さんはチラリと私を見た。
「すみません…本当に」
謝っても謝りきれない。
愁弥さんは目をそらして天井を見つめながら言った。
「謝るなルイ。魔がさしただけだろう?今日あったことは忘れる。お前も俺を抱いたことは忘れろ」
怒るどころか、許してくれた。
『無かったことに』しようというのか。
嬉しいはずなのに。
でも私のした行動は、貴方にとって忘れることのできる程度のものなのですね。
傷にすらならない。
どうしたら貴方の心に私は刻まれるのですか?
いつものような先輩後輩に戻れることは嬉しいのに。
なぜこんなにも胸が苦しいのだろう。
どうすれば貴方を捕まえられるのだろう。
どうすれば私を刻み付けられるのだろう。
嬉しいはずなのに。
こんなにも苦しくてたまらないなんて。
どうすれば、
私は貴方に届きますか?
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