7 / 37

狂愛《愁弥side》1

綾と体の関係になったのは中2の夏だった。 女遊びの激しい綾に言った一言がキッカケになった。 「女遊びをもう少し控えた方がいいんじゃないか?」 「じゃあ愁弥、お前を抱かせろよ」 女に飽きたから男に興味が出たのか? 俺が相手なら孕ませる心配がないし、 それに何より、 綾の特別でいられると思った。 だから引き受けた。 条件を出して。 「分かった。ただし好きな人が出来た場合は、この関係を終わりにすることが条件だ」 「了解」 俺は綾が好きだから、この関係が終わることはない。 綾が誰かを好きにならない限り、それまで綾は俺を抱いてくれる。 お前は知らないだろう。 こんなにも近くで想っていることを。 綾が誰かを好きにならない限り、こうして一緒にいられるんだ。 不安なことは何も無かった。 ―…はずなのに、 「アヤちゃん!」 「雅鷹!資料持ってきたか?」 「バッチリ!」 高2になった頃から不安が増加した。 山田と哀沢と同じクラスになれた時、綾は嬉しがっていた。 1年の頃は二人とクラスが別だったから。 俺は山田とは幼い頃から父親が主催する懇親会で会っていたから、仲は良かった。 無邪気で素直で良い奴だ。 だから高校が同じで、クラスが同じで嬉しいはずなのに。 最近の綾は山田とばかり話していて、前に比べて俺との会話が減った気がする。 「愁ちゃん、どうかしたの?元気ないよ?大丈夫」 「大丈夫だ」 旅行のパンフレットを毎日のように広げて見ている二人。 もしかしたら綾は山田を好きなのかもしれない。 それなら俺は身をひくだけだ。 綾の『特別』でなくなるだけ。 ただ、それだけ。 「愁弥!」 綾が俺に紙を渡す。 「この映画の続編見たいっつってたろ?前売り券買ったから公開したら見に行こうぜ!」 「あぁ」 「まぁ公開は2ヵ月後だけどな。混むの嫌だから7月13日の金曜にしようぜ。レイトショーな。予定空けとけよ」 「わかった」 「俺が連絡するから、そしたら俺んち来て一緒に映画館まで行こうぜ」 こんな会話でさえ俺は嬉しかったんだ。

ともだちにシェアしよう!