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狂愛《愁弥side》1
綾と体の関係になったのは中2の夏だった。
女遊びの激しい綾に言った一言がキッカケになった。
「女遊びをもう少し控えた方がいいんじゃないか?」
「じゃあ愁弥、お前を抱かせろよ」
女に飽きたから男に興味が出たのか?
俺が相手なら孕ませる心配がないし、
それに何より、
綾の特別でいられると思った。
だから引き受けた。
条件を出して。
「分かった。ただし好きな人が出来た場合は、この関係を終わりにすることが条件だ」
「了解」
俺は綾が好きだから、この関係が終わることはない。
綾が誰かを好きにならない限り、それまで綾は俺を抱いてくれる。
お前は知らないだろう。
こんなにも近くで想っていることを。
綾が誰かを好きにならない限り、こうして一緒にいられるんだ。
不安なことは何も無かった。
―…はずなのに、
「アヤちゃん!」
「雅鷹!資料持ってきたか?」
「バッチリ!」
高2になった頃から不安が増加した。
山田と哀沢と同じクラスになれた時、綾は嬉しがっていた。
1年の頃は二人とクラスが別だったから。
俺は山田とは幼い頃から父親が主催する懇親会で会っていたから、仲は良かった。
無邪気で素直で良い奴だ。
だから高校が同じで、クラスが同じで嬉しいはずなのに。
最近の綾は山田とばかり話していて、前に比べて俺との会話が減った気がする。
「愁ちゃん、どうかしたの?元気ないよ?大丈夫」
「大丈夫だ」
旅行のパンフレットを毎日のように広げて見ている二人。
もしかしたら綾は山田を好きなのかもしれない。
それなら俺は身をひくだけだ。
綾の『特別』でなくなるだけ。
ただ、それだけ。
「愁弥!」
綾が俺に紙を渡す。
「この映画の続編見たいっつってたろ?前売り券買ったから公開したら見に行こうぜ!」
「あぁ」
「まぁ公開は2ヵ月後だけどな。混むの嫌だから7月13日の金曜にしようぜ。レイトショーな。予定空けとけよ」
「わかった」
「俺が連絡するから、そしたら俺んち来て一緒に映画館まで行こうぜ」
こんな会話でさえ俺は嬉しかったんだ。
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