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狂愛《愁弥side》2
あれから2ヵ月が過ぎた。
最近、更に綾は山田とばかり一緒にいるようになった。
俺は生徒会があるし、綾の相手をする時間はあまりないけど。
綾と山田は席も隣で、休み時間もずっと一緒に海外のパンフレットを見てる。
「愁弥?」
哀沢に呼ばれて振り返った。
「大丈夫か?気分悪そうだけど」
俺は今、どんな顔をしてた―…?
「最近あまり寝れてないだけだ」
山田に続いて哀沢にまで心配されるなんて。
何を考えてるんだ俺は。
綾が山田を好きならそれでいいじゃないか。
きっと、山田は哀沢が好きだから綾は山田に告白出来ないんだろう。
だから旅行で思い出を作るつもりなんだ。
「あの二人は旅行に行くのか?」
哀沢は俺の問いかけに少し黙って、口を開いた。
「あー…まぁ、行くような話してたな。詳しくは知らねぇけど」
「そうか」
綾が山田を好きになったのなら仕方ない。
俺はこの関係を辞めて、昔のようなただの幼なじみに戻るだけだ。
『特別』じゃなくなるだけ。
「愁弥さん?」
ハッと我に返った。
呼ばれた先にはルイがいた。
生徒会の仕事も満足に集中してできないのか俺は…
自分自身に呆れる。
「悪いな。もう一度言ってくれ」
「前期の繰り越しと来期の予算が…」
生徒会の仕事をしていれば、綾のことを考えなくてすむ。
だから俺はこの場所が好きだ。
物覚えのいい後輩もいるし、俺をサポートしてくれる。
集中しないと。
それでもやけに今日は綾の事を考えてしまうのは、今日が7月13日だから。
映画を見に行く日だ。
夜、綾から連絡が着たら綾の家に行って一緒に映画館に行くんだ。
2ヵ月前から楽しみにしていた。
綾と同じ空間に居られる。
『特別』じゃなくなるかもしれないけど、
今はまだ綾の『特別』だから。
まだ、傍に居たい。
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