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狂愛《愁弥side》4
「風呂ありがとう」
ルイに入浴を勧められた。
一人になると綾のことを考えてしまう。
山田と何してる?
俺との約束は?
考えれば考えるほど苦しい。
自分がこんなにも綾を求めているなんて。
「紅茶とコーヒーどちらがいいですか?」
ルイが俺に気を使っている。
「気を使わなくていい。勝手に押し掛けたんだから」
それでもルイはコーヒーを用意してくれた。
良い後輩をもったとつくづく思う。
「予習すると言ってたな。分からない問題があればアドバイスする」
「ありがとうございます」
学年トップのルイに分からない問題なんてないだろう。
ただ、それを分かっていても一人にはなりたくない。
今はせめて、何か気を紛らわしたいんだ。
「愁弥さん」
ルイに呼ばれて、我に返る。
また綾のこと考えてしまった。
集中しないと。
「愁弥さん、何かありました?」
「え?」
ルイの言葉に驚いた。
自分を見透かされているような気がして。
「何でそんなこと…」
「悲しい顔してたもので。どうしたんですか?話ぐらい聞きますよ」
約束を忘れられたこと、
山田とばかり絡んでいること、
そんなことが苦しいだなんて言えない。
綾は俺のものじゃないんだ。
体の関係だけ。
それがなくなったらただの幼なじみ。
綾は山田が好きなんだから―…
その瞬間、俺の目から涙が零れた。
慌てて手で拭って、顔を横に向けた。
「や…あの、違う。何でもないんだ」
気付いた時にはルイに押し倒されていた。
「ルイっ…」
ルイは無言のまま俺を見下ろした。
沈黙が続く。
その瞬間、俺の携帯が鳴った。
綾の着信音。
ルイが押さえていた手を放した。
「電話ですね」
今は話したくない。
どんな顔をして会えばいい?
嫉妬と不安に満ちている俺を、綾は面倒だと思うはずだ。
携帯の音楽が部屋に響き渡る。
今は何も考えたくない。
「嫌なことを忘れさせてあげますよ」
ルイが再び俺の手を押さえて言った。
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