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狂愛《愁弥side》6
行為が終わると、ルイは俺を縛っていたネクタイをほどいた。
ルイの目が見れない。
無言のまま、風呂へ向かった。
シャワーを浴びながら考えた。
今後のことを。
綾とは終わりにしよう。
ただの幼なじみに戻ろう。
そう割り切れば辛くない。
10分ぐらいして、風呂から上がった俺はベッドの上に倒れた。
天井を見上げ、深呼吸してからルイを見た。
「すみません…本当に」
後悔している顔だ。
そもそも俺がこんな状態だから、ルイは気を使ってくれたんだ。
少しやりすぎだとは思うけれど。
原因は俺だ。
俺は目をそらして天井を見つめながら言った。
「謝るなルイ。魔がさしただけだろう?今日あったことは忘れる。お前も俺を抱いたことは忘れろ」
忘れよう。
綾との思い出も全て。
そうすれば楽になれるんだから。
だからもう、綾とは終わりにするんだ。
ルイの家を昼間に出て、自宅へ戻った。
部屋に行き、自分のベッドに倒れ込んだ。
昨日は色々ありすぎた。
少し眠ろう。
そう思って目を瞑った瞬間、俺の部屋のドアが開いた。
「よぉ愁弥。早い帰りだな」
「綾…」
綾が部屋に入ってきた。
今はどんな顔をして綾を見ればいいか分からない。
「昨日お前どこにいた?何で連絡返してこねぇんだよ」
綾は穏やかとは言えない口振りだった。
確かに何度も綾からの着信が残っていた。
無視をしたのは事実。
「どこにいたって関係ないだろう」
「映画を忘れてたことなら謝る。けどな、聞いて欲しいことがあるんだ」
聞きたくない。
何も聞きたくない。
言い訳か?
それとも山田を好きだと言うのか?
それなら―…
「話は俺が先だ」
俺が好きなお前の口からそんな言葉聞きたくない。
最近相手にされてない。
俺との約束よりも山田を選んだ。
ルイに抱かれてしまった。
だからもう、俺はお前の「特別』ではいられない。
綾の口から山田が好きだと言われるくらいなら、
せめて俺が―…
「この関係を終わりにしよう」
せめて俺から離れさせて。
もうこれ以上、傷つきたくないんだ。
この関係が終われば割り切れる。
綾は俺のものじゃない。
誰を好きになろうと自由。
「なんだよ…急に…。どうしてだよ?愁弥!」
突然の俺の発言に綾は驚いたようだ。
俺の肩を掴んで問いかける。
ルイに抱かれて汚れた俺を受け入れてくれるはずがない。
嫌われたくない。
だから戻ろう。
ただの幼なじみに。
俺はひとつ嘘をついた。
「好きな人が出来たんだ」
「え?」
綾が俺の肩を掴んでいた手を放した。
この関係を辞めるには、その嘘を使うしかなかった。
「好きな人が出来たらこの関係を辞めるのがルールだろう」
お前が俺から離れるくらいなら、
俺から離れるよ。
もう失うものは何もない。
「…分かったよ」
綾はそう言って俺の部屋から出ていった。
静まり返った部屋にただひとり。
もう終わったんだ、俺たちは。
綾の残像を見ながら、今更ながら涙が零れた。
「綾…」
今でもお前が好きだよ。
好きすぎて、
辛いから、
もう、傍にはいられない。
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