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狂愛Ⅱ《綾side》1
昔から愁弥が好きだった。
だから愁弥と体だけの関係になれた時は嬉しかったんだ。
冗談まじりの発言を愁弥は受け入れてくれた。
女形の研究のためとはいえ、女と遊んでばかりいる俺が告白したところで、信用されないのは分かってたから。
だから夏休みに真剣に告白しようとしたんだ。
夜景の綺麗な海外の高級ホテルで。
「海外の夜景なら、世界三大夜景とかお勧めだよ」
雅鷹は財閥の御曹司で海外慣れしてるから、協力してもらうにはもってこいの人物だった。
俺が愁弥に告白する計画を話すと、快く協力してくれた。
時間もねぇし、力を貸してもらうしかねぇ。
毎日のようにパンフレットを見て、行きたい場所を決める。
俺も海外は初めてだし、なるべく日本語の通じる場所がいい。
「綾、今日の夜部屋に行ってもいいか?」
「悪ぃな愁弥。しばらく夜は会えそうにない」
「そうか。分かった」
海外旅行に行くんだ、大金が必要になる。
きちんと舞台の稽古すれば親が金をくれると約束してくれた。
だから夜に愁弥に会うのを抑え、稽古に集中することにしたんだ。
絶対に成功させて、愁弥にとって忘れられない思い出を作ってやるんだ。
「お前、少しは周りを見ろよ」
ある日、炯に言われた。
「は?どういう意味だよ」
「自分優先して大切なもの無くすなよって意味だ」
何を言うかと思えば。
俺はその大切な人の為に頑張ってるんだ。
やりたくない稽古も、計画を決めたりらしくないことして。
愁弥を優先してんだろうが。
「え!アヤちゃんパスポート持ってないの?」
「純日本人だぜ俺。んなもんあるわけねぇよ。つか、当日空港とかで作れんだろ?」
「バッカじゃないの?旅行先にコピー提出するんだよ。早く作りに行こ!今日!すぐ行くよ!」
知識の無さにもほどがある、と雅鷹に怒られた。
国内旅行なら俺は得意なんだ。
ただ、海外は本当に苦手で。
だから雅鷹がいて助かった。
パスポートを作りに行って、雅鷹はそのまま俺の家に来てプランを絞っていた。
あと一ヶ月をきった。
場所は香港にしようと思っている。
100万ドルの夜景を見ながら告白…考えただけで自分は完璧だと思った。
夜の12時ぐらいに、綜兄が部屋に入ってきた。
「何だよ」
「そういえばさっき愁弥っちがうちにきて、綾にこれ渡してくれって」
「愁弥が…?」
綜兄に渡されたものを見てカレンダーを確認して俺は焦った。
愁弥と映画に行く約束した日じゃねぇか。
慌てて愁弥に電話をしても出ない。
愁弥の家にかけたら洸弍が出た。
「兄貴なら綾くんちに行くって言ってたよ。荷物持って」
最悪だ。
どこにいる。
俺に謝らせろ。
逃げんな。
なぁ、愁弥―…
いくら待っても愁弥からの連絡はなかった。
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