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狂愛Ⅱ《綾side》2

次の日の昼。 愁弥が家に帰ってきたという連絡を洸弍からうけて、俺は急いで愁弥の部屋に向かった。 愁弥は仰向けになってベッドに横になっていた。 「よぉ愁弥。早い帰りだな」 「綾…」 一瞬俺を見て目をそらす。 だから近付いてやった。 「昨日お前どこにいた?何で連絡返してこねぇんだよ」 「どこにいたって関係ないだろう」 目を合わせて言った言葉がこれだ。 愁弥は少し怒っているように見えた。 怒って当然なんだけどな。 「映画を忘れてたことなら謝る。けどな、聞いて欲しいことがあるんだ」 だからもう、全て話そうと思った。 お前を夏休みに海外旅行に連れてくつもりなんだって。 昨日はパスポートを作ってたって。 全て話そうと思った。 瞬間、 「話は俺が先だ」 愁弥がベッドから起き上がった。 真剣な眼差しで俺を見る。 数秒の沈黙。 「この関係を終わりにしよう」 言ってる意味が分からなかった。 この関係を辞める? 俺と終わりにしたいってことか? 「なんだよ…急に…。どうしてだよ?愁弥!」 俺は驚き、愁弥の肩を掴んで問いかけた。 目を背けて黙り込んだ愁弥が、そのまま俺の顔を見ずに言う。 「好きな人が出来たんだ」 「え?」 思わず腕の力が抜けた。 言葉と同時に愁弥の首筋に、キスマークがついていたから。 俺は愁弥を抱いても体にしかキスマークをつけない。 あぁ、 「好きな人が出来たらこの関係を辞めるのがルールだろう」 そいつに抱かれたのか―… 優しいお前は、幼なじみの俺の為に嫌な顔見せず抱かれてくれてたのか? 少しでも、俺のことを好きだから抱かれてたのかと思ってた。 そうか。 そうだよな。 真面目なお前に遊び人の俺。 お前が俺を好きになる可能性なんてなかったんだな。 一人で浮かれてバカみてぇ。 「…分かったよ」 俺はそう言って愁弥の部屋から出ていった。 炯に言われた言葉が頭を駆け巡った。 『自分優先して大切なもの無くすなよ』 もう大切なものは無くなった。 どうあがいても、俺には愁弥は手に入らない。

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