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狂愛Ⅱ《綾side》3
「旅行中止!?何で!」
週明け、朝一に机に座って言った俺の言葉に驚きを隠せない雅鷹。
驚きたいのは俺の方だ。
愁弥の口からあんな言葉を聞くとは…
そもそもいつも俺らとしか一緒にいねぇじゃねぇか。
一体、誰を好きになったっつーんだよ。
俺の存在は何だったんだ…
「え!愁ちゃんに好きな人!?」
昼休みの屋上で、雅鷹が驚いていた。
朝からどんよりしてるオーラを放っていた俺を見た炯が続けて言う。
若干、呆れながら。
「だから機嫌悪いのか」
「そうだ。悪いかよ」
「愁弥が今日風邪で休みでよかったな」
そう、愁弥は今日珍しく風邪で休み。
こんな弱い俺を、今愁弥に見られなくて良かったと思ってる。
こんなにも、
愁弥ひとつで俺は崩れる。
何がショックだったか。
愁弥に好きな人がいるだけならまだしも、あのキスマーク。
もう両想いなのか?
いつから抱き合ってる?
聞きたいことはたくさんある。
でも聞けない。
聞きたくない。
「諦めちゃうの?」
雅鷹が心配そうに俺の顔を見る。
諦めるとか、諦めないとかそれ以前の問題だ。
「もともと、好きな人が出来たら終わりにするって決めたのは愁弥だ。諦めなくても結果は見えてる」
だから手を出さない。
手を出せない。
このまま告白したところで、俺に勝ち目はない。
もう愁弥は誰かのものなんだ。
「らしくないな」
炯が呟いた。
「何がだよ」
「お前らしくないって言ったんだ」
炯の言葉にムカついた。
だから胸ぐらを掴んで言ってやった。
「らしくねぇだと?てめぇに俺の気持ちが分かんのかよ!」
「アヤちゃんっ…」
雅鷹は焦っていた。
昼休みに屋上で親友を怒鳴り散らして。
こんなの俺じゃない。
そんなことは分かってる。
分かってるけど、どうしたらいいか分からない。
炯は冷静に言った。
「もし俺がお前だったら、奪ってでも愁弥を自分のものにする。俺の知ってる神威綾はそういう奴だ」
「…え?」
「つぅか、そもそもお前にルールなんて無いだろ?」
そうだ。
誰であろうと、愁弥を知っているのは俺。
俺以外に勝てる奴なんているわけない。
この気持ちだって、誰にも負けねぇ。
「そうか…そうだよな」
何で気付かなかったんだろう。
昔から愁弥と俺は一心同体。
あいつの考えてることは誰よりも理解してる。
「上等だ。奪ってやろうじゃねぇか」
これでこそ俺。
誰よりも愁弥を想ってる。
炯の言葉でいつものポジティブな俺が現れた。
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