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狂愛Ⅱ《綾side》4
学校が終わってすぐに愁弥のもとに向かった。
途中で、あいつが病人だということを思い出してスーパーで桃を買った。
家に帰る途中、こっちに向かって歩いて来る人物に見覚えがあった。
生徒会の真面目くんで、愁弥が『ルイ』と呼んで慕ってる後輩だ。
「こんにちは、神威さん」
どうもこいつは掴めない。
「よぉ。こんなとこで会うなんて珍しいな」
「愁弥さんのお見舞いに行ってきたので」
ルイが愁弥に想いを寄せているのは俺には分かる。
俺が生徒会室で愁弥に絡むのを嫌がってるしな。
「へぇ。愁弥どうだった?」
「明日には学校に行けそうだと言っていたので安心しました」
ただ、気になることがひとつ。
「お前、風邪引いてんのか?」
ルイの声が鼻声だってことが引っ掛かった。
「ええ。最近引いていたのですが、もう治りかけています」
こいつの鼻声。
愁弥の風邪。
―…まさかな。
「お大事にな」
「ありがとうございます」
そう言ってルイは帰った。
もしルイが愁弥の好きな人だとしたら、
俺は勝つ自信しかない。
愁弥の家に行くと、洸弍が迎えてくれた。
「洸弍。台所借りるぞ」
「いいよ」
俺は洸弍の頭を撫でながら台所に向かった。
果物ナイフを取り出し、桃を食べやすいように切ってそれを愁弥の部屋に持っていった。
ドアをノックして入った。
愁弥はベッドで寝ていた。
「綾…」
「起きれるか?お前が風邪なんて珍しいな」
愁弥は少しふらつきながらテーブルに座った。
「大丈夫か?熱は何度ある?」
「今は37.5度…」
愁弥は平熱が低いから、それぐらいの体温でも体はだるくなる。
俺はそういったことも知ってるんだ。
愁弥のことは俺が一番よく知ってる。
「少し辛いだろ?」
「あぁ。でも昨日寝ていたから大分よくなった」
「そうか」
沈黙が走る。
一昨日この場所で、
終わりにしようと言われたんだ。
2日しか経ってないのに、昔のことのように感じる。
「風邪引いた時は桃だろ?ほら」
昔から愁弥は風邪を引くと桃を欲しがる。
だからフォークに刺した桃を愁弥の口に運んでやった。
「ありがとう」と言って遠慮なく俺の差し出した桃を食べる。
「俺は誰よりもお前のこと知ってるつもりだ」
だから、
その愛しい唇を奪ってやった。
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