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狂愛Ⅱ《愁弥side》1
「愁弥が風邪なんて珍しいわね」
綾が帰宅してから体調が優れなくて、熱を計ったら38.1度あった。
薬を飲んでしばらく安静にしていた。
熱は日曜日の夜になっても平熱にならなかった。
明日は学校休むか。
綾に会いたくない。
『風邪で明日は学校休む』
『大丈夫か?了解。お大事に』
綾からの返事は普通で少し安心した。
そういえば、月曜日はルイと各委員会から提出された報告書の確認をする予定が入っていた。
さすがに明日は行けないと思い、ルイに報告をした。
『風邪を引いて明日は学校に行けない。報告書の確認の期日を延ばすよう先生に頼めるか?』
『分かりました。ゆっくり休んでください』
ルイからの返事も普通で安心した。
もう色々悩むことに疲れた。
今日は何も考えずに休もう。
翌日、熱は少し下がりだるさも無くなってきた。
さすがに明日は学校に行かないといけないな。
『愁弥さん、先生に報告して期日を明後日まで延ばしてもらいました。』
夕方、ルイから連絡が入ってきた。
『ありがとう。助かる』
『実は近くまで来ているのですが、お邪魔したらまずいですか?』
ルイとの出来事を忘れるとは言ったものの、ほんの数日前のことだ。
今はルイに会うのも気まずい…。
『悪い、まだ少し体調が優れなくて。明日には学校に行けると思うから。わざわざ近くまで来てくれたのに申し訳ない』
『そうですか。こちらこそすみません。お大事に。』
ルイとのやり取りが終わって、深く深呼吸をして天井を見つめた。
明日から綾にどんな顔をして接すればいいんだろう。
本当は―…
好きな人が出来たと言って、それでも引き留めて欲しかったのかもしれない。
でも綾は俺との関係を終わりにすることを受け入れた。
俺とはやっぱり、遊びだったのかな。
もともと体だけの関係だったんだ。
深く考えてはいけない…
その時、ドアをノックして誰かが部屋に入ってきた。
洸弍か…?
「綾…」
「起きれるか?お前が風邪なんて珍しいな」
俺は少しふらつきながらテーブルに座った。
「大丈夫か?熱は何度ある?」
「今は37.5度…」
「少し辛いだろ?」
綾は俺の平熱が低いことを知っている。
たぶん、誰よりも俺のことを理解している。
「あぁ。でも昨日寝ていたから大分よくなった」
「そうか」
会いたくなかったのに、会えて嬉しい。
こんなにも綾への想いが強いなんて。
沈黙が走る。
「風邪引いた時は桃だろ?ほら」
「ありがとう」
俺が風邪を引くと桃を欲しがることも、綾は知っている。
わざわざフォークに刺した桃を俺の口に運んでくれた。
「俺は誰よりもお前のこと知ってるつもりだ」
そんなの知ってると思う間もなく、綾が俺の唇を奪った。
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