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狂愛Ⅱ《愁弥side》3

綾が俺を好きだった? それは考えたことが無かった。 だって綾は、欲しいものなら自分のものにする。 俺のことが好きなら、もう既にそうしてるはずだと思ったから。 俺が顔をあげようとすると、頭が上がらないように胸の中に俺を埋めた。 「今は俺の顔を見るなよ…」 俺は綾の胸の中で頷いた。 「俺は遊び人だろ?だから愁弥に告白しても、本気に受け止めてもらえないと思ったんだ」 確かに中学の頃は遊びすぎだと思っていたが、俺はそれでも綾が好きだった。 「だから夏休みに、海外の綺麗な夜景が見えるホテルでお前に告白しようとしたんだ」 綾、海外旅行は苦手なのに。 綾がいれば国内でも構わないし、この部屋だって構わない。 大事なのは場所じゃないのに。 「お前をエスコートして、イイとこ見せたかったんだよ俺は。だから雅鷹と打ち合わせしてたんだ」 「俺はてっきり…綾は山田が好きなんだと…」 俺は今までのことを打ち明けた。 「最近山田とばかり一緒にいるから、綾が俺から離れてしまいそうで… 」 ずっと不安だったことを話した。 俺を相手にしてくれなくなったこと。 山田と旅行に行くのかもしれないという不安。 映画を凄く楽しみにしてたこと。 ルイの家に行って、犯されたことも全部話した。 「綾から離れようって言われるくらいなら、俺から離れようと思ったんだ…だから…」 だからあの日、「好きな人が出来た」と嘘をついた。 気付くと涙が溢れていた。 「ルイに抱かれた俺を綾が受け入れてくれるはずないと思ったんだ…」 真実を言って、綾は俺を嫌いにならないだろうか。 沈黙のあと、綾が抱き締める力を強くして言った。 「お前をそこまで追い詰めたのは俺なんだよなぁ…」 俺の頭を撫でて、さらに優しく抱き締めてくれた。 抱き締められるだけで、こんなにも心が温かくなるのか。 「そういえば、こうして愁弥を抱きしめるのなんて何ヵ月ぶりだろうな」 綾はここ最近、山田との打ち合わせや、舞台の稽古に集中していて俺との時間は作れなかった。 だから俺もこの状況が嬉しくて綾の背中に両手を回した。 「愁弥、俺が好きか?」 そんなこと、答えは決まっている。 俺は頷いた。

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