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狂愛Ⅲ《綾side》5

「終わ…りましたか?」 さすがにルイの体力が無くなり、息を切らしながら俺を見上げた。 俺はまだ出来るけどな。 でも壊しても意味ねぇし。 「これくらいにしといてやる」 「はっ。4時間もヤッといて…どれだけ絶倫なんですかあなたは」 ルイが起き上がって眼鏡をかけてから俺を睨み付ける。 「舞台役者なめんなよ」 愁弥との旅行のために、舞台の稽古死ぬほど努力した。 しかも普段は真面目に稽古しない俺が自ら頑張ると誓いだしたから、親父も気合い入れて稽古するもんだからマジで疲れた。 そのおかげで、親は俺の出来に喜んで旅費を出してくれた。 結果、めっちゃ体力がついた。 人生最高肉体美の自信がある。 「1ヶ月舞台の遠征で誰も抱いてなくて今日公演終わってそのままここに来たからな。1ヶ月禁欲。そりゃーたくさんヤれますわ」 そんな俺を見て、ルイは笑いながら話し始めた。 「でもこれで神威さんの弱みが握れましたね」 「弱み?」 「神威さんが私を抱いたと愁弥さんに言ったらどうなるでしょうねぇ?」 何を言い出すのかと思えば。 そんな脅しが俺に通用すると思ってるとは思えないんだけどな。 「お前それ本気で言ってる?」 「ええ」 呆れた奴め。 俺はため息をついてルイを見た。 「俺がお前を抱いたことを愁弥に言ったところで、愁弥はお前に|靡《なび》かない。むしろ俺がお前を抱いた事実を知って愁弥が傷つくだけだ」 俺の発言にルイは眉毛をしかめた。 「自信過剰ですね。あなたが嫌われて別れる可能性だってあるのに」 嫌われる?俺が愁弥に? それは無いと言い切れる。 だって俺だもん。 「それだけはねぇんだよ。どれだけお前が足掻いても、愁弥は俺から離れられない。俺も放さない」 体の関係の時はそういう考えもあったかもしれない。 でも今は違う。 「だからお前がこのことを愁弥に言ったら、ただ愁弥を傷つけるだけになるって本当は分かってるんだろ?」 ルイは黙って俺の話を聞いていた。 たぶん、図星だと思ったんだろう。 「愁弥が傷つくことなんてしたくないよな。ましてや、お前も共犯なら自分が軽蔑されるかもしれない。お前のことも信頼してる愁弥だから、お前を軽蔑しようとする自分を責めちまうだろうな。あいつ優しいから」 「…」 「なら尚更このことを愁弥に言う価値は無い。違うか?愁弥のことが好きなお前がそんなこと言うはずないって俺は思ってるけど」 俺と愁弥の間には誰も入れない。入らせない。 そんなのもう分かりきってる。 お互いをガキの頃から知り尽くしてる俺たちだから。 「別に言ってもいいぜ。でも愁弥はお前のものにはならない。お前だってこの前愁弥を抱いて感じただろ。愁弥は手に入らないって」 ルイは俺の余裕な発言をずっと黙って聞いていた。 俺には勝てない、愁弥も奪えない、そんな表情に見えた。 「だとしたら、弱みを握られたのは俺じゃねぇよな?分かるだろ?お前頭いいもんな」 「…」 沈黙が続いた。 なにこの空気。  重たっ。 ここまで重たくするつもりは無かったんだけどな。 俺に勝てないと分かった絶望か。 「てかシャワー浴びてくるわー。着替えも貸して」 「図々しい」 「一緒に入る?」 「入るわけないでしょう」 優越感に浸りながら軽くシャワーを浴びて、脱衣所にあったルイの服を勝手に借りた。 バスルームから出ると、ルイはさっきと変わらない体勢のまま座って考え事でもしているようだった。 「もう3時かー…寝てっていい?」 「帰ってください」 さっきまでの可愛いルイとは真逆だった。 まぁ俺に懐いたらそれはそれで変な感じだけど。 「お前も後半もうノリノリだったじゃん。俺も楽しかったぜ」 「黙ってください」 「つーかお前もシャワー浴びてこいよ。ぐっちゃぐちゃだから」 ルイは俺を睨み付けて、無言でバスルームへ向かった。 追いかけてバスルームでもヤッてやろうか悩んだけど、さすがにもういいか。 あいつの中で俺を刻めただろうし。 俺はルイがシャワーを浴びてる間、近所のコンビニに買い出しに出掛けた。 買い出しして戻って玄関のドアを開けて部屋に入ろうとすると、丁度玄関にルイがいた。 「帰ったと思った?残念」 「何か忘れ物ですか?鍵をかけようと思ったのですが…」 「ゆず蜂蜜のホット買ってきた。あと、のど飴」 買ってきたものをルイに渡した。 「お前、声枯れてるから飲めよ。喉にいいぜ。めっちゃ叫んでたもんな。お疲れ様」 「…っ!!改めて嫌いですあなたのこと」 「おう。嫌いで上等。でも俺は愁弥のこと無ければ嫌いじゃないぜお前のこと」 ルイは俺を外に押し出して言った。 「もう二度とこないでください」 「ヤリたくなったらまた躾してやるから」 余裕の笑みで返してみせた。 「さようなら」 ルイは俺の目を見ることなくドアを閉めた。

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