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狂愛Ⅲ《槞唯side》6

数日後の放課後。 生徒会室で会議の準備をしていると、嫌な気配を背後に感じた。 「おっ、いたいた。ルイ」 「神威さん…」 もう気配ですらこの人を嫌だと思うほどになっていた。 「借りた服洗濯してきた」 神威さんは貸した服を入れた紙袋を渡してきた。 やたらとニヤけながらこちらを見るので、目線を合わせずに言った。 「何ニヤニヤしてるんですか。早く帰ってください」 「ムラムラしたらこれ着て俺のこと思い出して一人でするといいぜ」 「ふざけてますね。わざわざ生徒会室にまで来て。愁弥さんだっているのに」 本当なら、こんな服捨ててやりたい。 でも捨てたくないのは、この服は愁弥さんが旅行先で買ってきてくださった服なのだ。 よりにもよって、この服を選んで着て帰るとは… 知っててなのか、たまたまなのか。 つくづくこの人の手の上で転がされている感じがして嫌だ。 「綾…どうした?」 「愁弥さんっ」 奥のデスクに座っていた愁弥さんが私たちに気付いて近付いてきた。 しまった。 とっとと神威さんを帰すべきだった。 「ルイに服借りたから返しに来た」 「服を…?」 「愁弥さん気にしないでください。服を貸せと脅されたので貸した、それだけです」 私は神威さんが余計なことを言う前に愁弥さんに言った。 「脅してねぇだろ」 もうあの日のことを思い出しただけで自己嫌悪なのに。 そんな私に追い討ちをかけるように神威さんが耳元で囁く。 「気持ちイイ、神威さん…だっけ?手錠外したら俺に抱きついてキスしてくるお前最高だったな」 「!!」 私はあの日のことを忘れようとしているのに、この男… 「脅してるじゃないですか!」 楽しんでいる。 なぜ愁弥さんはこんな人を好きなのか理解できない。 「二人共、仲良いんだな。知らなかった」 「仲良くなどありません」 「まぁ、懐かないペットほど懐いたらご主人に服従するから今は仲良くなくてもいいや」 貴様はもうしゃべるな。 「ペット?ルイはペットなのか?」 愁弥さんも話を広げないで… 「さっ、愁弥さん行きましょう。そろそろ打ち合わせです」 これ以上神威さんと関わりたくないので、愁弥さんの肩を押してデスクへと戻ることにした。 「愁弥!今日は先に帰るな。あとで暇だったらうちに来てもいいぜ。俺は最近寝不足だから帰って寝る」 「分かった」 寝不足なのはこちらもだ。 あの日から私のペースは狂ってしまった。 「大丈夫か、ルイ?」 「何でもありませんよ。最近寝不足なだけです」 「今日は早く帰ってもいいぞ」 愁弥さんはこんなにも優しいのに。 なぜ恋人があの人なのか。 ただ分かっているのは、愁弥さんは何をしても私の物にはならない。 何をしても手に入らない。 今まで欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れていたのに。 あの男には敵わない。 それを改めて実感させられた。 こうして愁弥さんを見ていられるだけで幸せだと思わなくては。 愁弥さんに出会ってたったの半年で、私の狂った愛は実らず終わりを告げた。 【END】

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