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第4話

 その夜如月は、何やらボソボソという話し声で目を覚ました。一緒に寝ていたはずの真島は、ベッドから忽然と姿を消している。そっと起き出し、寝室のドアを開ければ、真島はリビングで誰かと電話をしていた。 「あー、治美さん。ご無沙汰してます」  治美というのは、如月の妹だ。以前紹介して以来、すっかり親しくなった二人は、ちょくちょく連絡を取り合っている。良い関係を築いているなら何よりと、安心していたが。しかしこんな夜遅くに、コソコソと何の電話だ。如月は、様子を窺った。 「急にすみません。どうしても気になっちゃったことがあって」  一体何だ、と如月はますます耳を澄ませた。 「ほら、修一さんの高校時代の彼女のことなんですけど。その人、修一さんのこと何て呼んでました?」  治美が、何やら答える気配がする。とたんに真島は、ガッツポーズを作った。 「名字呼びですか! 了解です。ありがとうございました!」  一体何の電話だ、と如月はきょとんとした。一方真島は、電話を切った後、メモ帳に何やら書き込んでいる。 「浅野って人は、修一さんのこと、修って呼んでたもんな。で、元カノは名字呼び、と。よし、『修一さん』て呼び方は俺だけだ。ラッキー!」  如月は、ドアをそっと閉めた。 (大人気ない? 気にしません?)  一体どこがだ、と言いたくなる。肩をすくめると、如月はさっさとベッドへ戻った。そんな所もやっぱり可愛い、そう思いながら。 そこが可愛い・了

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