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第6話
その翌日、如月は社長室へ呼びつけられた。蓮見が、何やらいそいそと書類を出して来る。
「今度実施予定の施策だ。是非如月君に、一番に見て欲しくてね」
そう言って蓮見が見せた書類には、『LGBTフレンドリー企業に向けての取り組み案』とあった。『LGBTの社員に配慮した制度整備を行う』という内容で、具体的項目としては、相談窓口の設置や福利厚生面での配慮が挙げられている。
「特に導入したいのが、結婚祝金と結婚休暇。実施時期は、君らに合わせよう」
「昨日の今日で、お作りに?」
申し訳なさと同時に、如月は度肝を抜かれた。
「いや、実は以前から作っていたんだ」
蓮見が、けろりと答える。
「ところがタイミング悪く、僕と翔馬のことが週刊誌で報道されてしまったものだから。ゲイではないと否定はしたけれど、さすがにその直後に実行するわけにもいかなくてね。そのままずるずる来てしまったが、良い機会かと思って。他にも、そういう社員はいるだろうし」
「さようでございますか」
如月は、どう答えるべきか逡巡した。
「施策の導入は素晴らしいことかと思いますが、実施時期は社長にお任せしたく存じます。是非利用させていただきたかったですが、何分、相手に逃げられまして」
蓮見は目を見張ると、如月の顔と左手を見比べた。今日、如月は指輪を外していたのだ。「いや……、それは知らずに申し訳なかった。指輪、外していることには気付いていたんだが、てっきり作戦の一つかと思ってね」
「いえ。こちらこそ、早くご報告すべきでした。まさか社長が、このようなご配慮をしてくださっていたとはつゆ知らず」
「だからそれは、気にしなくていいから。前から作っていたものなんだし。……しかし」
蓮見は、気遣わしげに如月を見つめた。
「本当に、終わりにしてしまうのかい? いつもの、猫の気まぐれではないの?」
「残念ながら、これが現実ですね」
蓮見は深いため息をつくと、立ち上がった。
「こちらへ来てくれ。少し、話そうか」
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