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忠実な犬

中瀬 彰(なかせ あきら)は、旭狼会に身を置く二十代の男だ。 顔は某アイドルに似ていると言われるが、自分では分からない。 背の高さも普通だし、頭の出来も普通だと思っている。 中瀬は子どもの頃見たマンガの影響で、探偵になりたくて仕方なかった。 大学卒業後に念願叶ってその道へと進んだものの、結局紆余曲折あって、このヤクザな世界へと足を踏み入れた。 それには色々と事情があってのことだが…。 そのとある事情から、眞山と知り合い、彼の男らしい態度と広い心の持ち方に胸をうたれて、世間からは外れたこの同じ道へと身を投じることとなった。 そんな憧れの眞山からの連絡を中瀬は、毎日心待ちにしている。 しかし、会長である九条の秘書として多忙な眞山が旭狼会事務所に顔を出すことは殆どなく、また連絡も一週間に一回あれば良い方だ。 事務所で下っ端として雑用をこなしたりしつつ、電話が鳴るのを待ちに待っていた。 そんな中瀬に眞山からの電話があったのだ。 しかもご指名とあれば喜び勇んで、運転手専属の組員に車を出して貰った。 中瀬は急いで指定された病院に向かい、そこで二週間ぶりに眞山の顔を見て喜んだのも束の間。 辿り着いた先の病室のベッドには見たこともない少年が横になっていた。 どうやらボスである九条の指示で、ここへ運んだらしい。 簡単な経緯を聞いた後、中瀬は少年の事を簡単に調べた。 自宅へ虚偽の電話を入れて、家族へ心配の無いように配慮も行う。 眞山の言うように、九条が気にかけるこの少年。 何か特別な訳でもあるのだろうか? 九条が気にするということは、部下の眞山も無条件で気にかけることになり、すると自動的に中瀬も気になる。 そうこうしているうちに、小一時間もすると少年・祐羽が目覚めた。

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