54 / 1012
考察
九条という男。
圧倒的な支配者然とした雰囲気を持っている、大人の男だ。
まだ会って間もないというのに、こうも関わる事になろうとは祐羽は思ってもみなかった。
それが今こうして、男の家に連れてこられて風呂を借りている。
人生はどう転んで行くのか、分からないものだ。
「ふうっ~気持ちいい。ちょうどいい感じ」
体を洗い終わった祐羽は、溜めてあった湯加減を確かめて湯舟へと浸かった。
広い浴室なだけに、湯舟も大きく足をしっかりと伸ばせた。
うっかり湯の中に沈んで溺れないよう気をつけながら、しっかりと浸かる。
「色々あったけど、何とか助かったな」
それもこれも、偶然にもやってきた九条のお陰だ。
九条が来なければ自分は一体どうなっていたか。
男の慰みものにされて、親に内緒で体を売り、まともな生活は遅れなくなっていただろう。
「本当に感謝しなくちゃだよね」
それにしても…と思う。
九条とは、何か縁があるのだろうか。
九条もヤクザという商売をしている男だ。
どんな悪どい行いをしているかは、自分には分からない。
けれど、こうして何度か助けてくれ風呂まで貸してくれるのだから、そこまで悪い人間ではないのかもしれない。
「よし。お風呂上がったらお礼を言って、それからもう帰る事を伝えよう」
ヤクザという肩書きと、大人という自分とは違う立場。
そして整いすぎた美形の迫力に、正直怖さも感じている。
けれど話せば分かってくれるはずだという思いが、祐羽の心に余裕を持たせていた。
「それにしても、遅くなっちゃったなぁ…。お父さんとお母さん心配してるよね」
電話して近くまで迎えに来て貰おう。
ここに来て、呑気にも両親の心配を始めた祐羽だった。
ともだちにシェアしよう!