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葛藤
ゆっくりと湯舟で温まった祐羽は、風呂から上がると、遠慮なく棚からバスタオルを取り出し体を拭いた。
「なんかこのタオル、メチャクチャふかふかしてる!」
ちょっと感激して声をあげてしまった。
それからドライヤーで髪を乾かすと、今度は着替えようと脱いだ服を求めてボックスを開けたが、そこに祐羽の服は無かった。
「えっ⁉何で?どうなってるのコレ⁉」
何も考えずにボックスに入れたので確認していなかったが、どうやら筒状になっていて何処かへ繋がっているらしい。
服といってもキャミソールとパンツと心もとないが、何も着ないよりはいいだろう。
「…どうしよう」
そこで目についた置いてあるバスローブに体を包んだ。
初めて着るバスローブは、祐羽にはとても大きく肩はずれ落ち、胸元ははだけ、足元はロングスカートの様になっている。
ついでに脱衣場のドアを開けるのさえ不便な程に、袖口が長い。
男の体格に合わせて作られた物なのだろう。
捲り上げても大きすぎてズレ落ちてくるので諦めて、指先だけを出してノブを捻った。
「九条さんに服のこと、訊いてみよう」
廊下に出ると、玄関とは別方向へと足を向けた。
ペタペタと歩いて、明かりのある部屋へと向かった。
マンションといえ、ここは広すぎる。
自分の一軒家よりも広い間取りだろう。
「…ここ、かな?」
息を止める。
ドアノブへ伸ばした手が、急に僅かだが震えてきた。
なかなかノブを握れない。
このドアを開けても、本当にいいのだろうか?
ここへ来て、改めて九条への疑問が浮かんできた。
祐羽の心は開けというが、頭では警鐘が鳴り響いていた。
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