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いただきます

お腹の音を盛大に響かせてしまった祐羽は、恥ずかしさに赤くなった顔を両手でパタパタと扇いだ。 けれど、恥ずかしくて慌てていた自分など九条が全く興味無さそうな姿を見て、逆に恥ずかしくなる。 そこで漸く落ち着く事が出来た。 さて、本当に食べてもいいのかな? 食えと言われても手を出すのに勇気がいる。 本当に九条は食べないのだろうか? 「く、九条さん。九条さんは、食べないんですか…?」 祐羽が恐る恐る訊ねると、九条が「俺は朝は食べない。お前のだ」 林檎ジュースは九条の物では無かった様で、勘違いに苦笑いを浮かべてしまった。 祐羽の為だと思えば違和感は無いが、まさかその為に朝から買い出しに出掛けたとは思えないので、やっぱり九条が好きなんだろう。 自分が一緒だから遠慮して? いや。早くに起きていたみたいだし、もう食べ終わったのかも。 勝手に結論付けたタイミングで、九条がなかなかパンを食べない祐羽を促す。 「食え」 命令口調で言われて戸惑いつつも、せっかくのお誘いを無視するのは良くないだろう。 お腹が空いていたこともあって、祐羽はくるみの美味しそうなパンを手に取った。 口に入った瞬間にホワッと広がる風味と温かさに、出来て間もない物だと気づく。 「美味し、…」 出来立てのパン。 そして祐羽が感動を覚える程に、好みにピッタリの物だった。 「も…、もうひとつ、食べてもいいですか?」 祐羽が遠慮がちに訊ねると、九条は視線だけ向けて特に何も言わずコーヒーを飲んだ。 それを了承と受け取った祐羽は、他のパンに手を伸ばす。 今度はメロンパン。 外がカリカリ中はふんわりで、これも出来立て。 と、いうことはやはり出来立てを朝から購入してくれたのだろうと確信した。 「あのー…。美味しいです。ありがとうございます…」 段々と小さくなる声だったが、九条には聞こえていたらしい。 「あぁ」 短いが返事をもらえて、ホッとして胸が暖かくなるのを感じた。

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